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【第八章】 美少女と、研究施設で罪を知る
●148 side リディア
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いつから、どの時点から、この未来を引き寄せた?
ショーンは研究所の場所を盗賊団のアジトで知った。
妾が心を読んだとき、ショーンはそう考えていた。
偶然入った盗賊団のアジトに研究所の所在地の書かれた日記があり、偶然出会った人物が研究所の研究員であった、などということが、果たして起こり得るだろうか。
……偶然が重なりすぎている気がする。遡って考えてみた方が良さそうだ。
盗賊団のアジトへ行って盗賊を倒そうと言い出したのはヴァネッサだ。
では、ヴァネッサと再会したことも、この未来に繋がる因果だったのか?
そもそもあのタイミングで山を登っていなければ、ヴァネッサとドロシーとは再会はせず、一緒に村へ行くこともなかったはずだ。
ということは、ケイティとレイチェルの住処で一晩過ごしたこともこの未来に繋がる因果だったのか?
ケイティとレイチェルの元へ行ったのは、『鋼鉄の筋肉』とともにショーンがダンジョンに潜っている間、暇を持て余した妾が魔物と雑談をしたからだ。
その際に魔物にケイティとレイチェルが呪いのアイテムを持っていると聞き、次の行き先を決めた。
ただの偶然か、それとも……。
ショーンの欲しい未来に繋がる因果を掴み取る能力が、そこまで進化したと考えるべきだろうか。
ヴァネッサとドロシーに合図玉を渡した頃には、すでにショーンは因果の世界とやらに潜らずとも欲しい未来へ繋がる因果を掴み取ることが出来ていた。
ならば、数十手先の未来を引き寄せるまでに能力が進化していたとしても不思議ではない。
「あの二人、いい感じだと思いませんか?」
突如かけられた声で我に返った。
横を見ると、妾の隣を歩いているドロシーが、前を歩くショーンとヴァネッサを指差していた。
「上手くいくと良いですよね」
「ドロシーはショーンのことが好きなのだと思っておったのじゃ」
だからドロシーのこの反応は意外だった。
ドロシーはニコニコと楽しそうに二人を応援している。
「はい。私、ショーンくんのことが好きですよ」
「ならば、ショーンがヴァネッサとくっつくのは、嫌なのではないか?」
妾の質問に、ドロシーは首を傾げた。
「私、ヴァネッサちゃんのことも大好きなんです。好きな人と好きな人がくっついたら、最高だとは思いませんか?」
なるほど。恋愛面に関して、ドロシーはまるっきり子どものようだ。
好きな二人が自分を差し置いてくっついたら、普通は嫉妬や疎外感を感じるものだろうに。
「……早く気付かんと、ドロシーはきっと後悔すると思うのじゃ」
実際に二人がくっついてから後悔しても遅い。
その時点で自分の気持ちに気付いたら、二人を引き裂かなければショーンを手に入れることは出来ない。
「後悔ですか? リディアちゃん、好きな物が合わさったら最高だって前に言ってましたよね。好きなハンバーグと好きなカレーが合わさってハンバーグカレーになったら幸せが倍になるって」
「ショーンとヴァネッサは、ハンバーグカレーとは違うのじゃ」
「同じですよ。私はショーンくんといると幸せ。ヴァネッサちゃんといると幸せ。だから仲良しな二人と一緒にいたら、もっと幸せになるはずです」
これは駄目だ。同年代の子のいない小さな村で育ったせいか、ドロシーには恋愛経験が欠けている。
実際にそのときになってみないと、二人がくっついた場合の嫉妬や疎外感は理解できないのだろう。
……理解したときにはすべてが遅いのだが。
「失恋もまた人生における勉強じゃ。強く生きるのじゃぞ」
ショーンとヴァネッサとドロシーが三角関係になったら、ちょっぴり面白そうだと思っていたのだが、ドロシーが恋愛経験を積むまではその光景は見ることが叶わなそうだ。
しかしこのまま順調にショーンとヴァネッサくっつくのは面白くないから、妾が引っ掻き回すのもいいかもしれない。
「ショーンは大人の姿の妾が好みのようじゃから、こっそり布団に潜り込んで色仕掛けで……」
「あれ。リディアちゃんもショーンくんのことが好きだったんですか? それなら第二夫人の座はリディアちゃんに譲りますね。私は第三夫人でいいので」
ああ、ドロシーは恋愛経験が足りないのではなく、一夫多妻制の村で育っていたのか。
それにしたって自分を後ろに置き過ぎな気はするが。
……というか。
「ショーンが何人も妻を持とうなんて生意気なのじゃ。童貞坊やのくせに!」
この先ショーンが何人もの女を侍らせるようなことがあったら、妾がドロップキックをお見舞いしてやろう。
――――――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます。
フォローでの応援も、とっても嬉しいです!
ブックマークが進んでいくのも見ていて嬉しいです。
応援を貰えたおかげで、定期的に更新を続け、ここまで走ってくることが出来ました。
物語全体としてはまだ続く予定ですが、この章で一旦の区切りを付けさせて頂く予定です。
ショーンの見つける真実をお楽しみください^^
ストックが少ない状態ですが、第一部終了まで毎日更新したいと思っています。
更新頻度が下がる場合はまたお知らせしますね。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
ショーンは研究所の場所を盗賊団のアジトで知った。
妾が心を読んだとき、ショーンはそう考えていた。
偶然入った盗賊団のアジトに研究所の所在地の書かれた日記があり、偶然出会った人物が研究所の研究員であった、などということが、果たして起こり得るだろうか。
……偶然が重なりすぎている気がする。遡って考えてみた方が良さそうだ。
盗賊団のアジトへ行って盗賊を倒そうと言い出したのはヴァネッサだ。
では、ヴァネッサと再会したことも、この未来に繋がる因果だったのか?
そもそもあのタイミングで山を登っていなければ、ヴァネッサとドロシーとは再会はせず、一緒に村へ行くこともなかったはずだ。
ということは、ケイティとレイチェルの住処で一晩過ごしたこともこの未来に繋がる因果だったのか?
ケイティとレイチェルの元へ行ったのは、『鋼鉄の筋肉』とともにショーンがダンジョンに潜っている間、暇を持て余した妾が魔物と雑談をしたからだ。
その際に魔物にケイティとレイチェルが呪いのアイテムを持っていると聞き、次の行き先を決めた。
ただの偶然か、それとも……。
ショーンの欲しい未来に繋がる因果を掴み取る能力が、そこまで進化したと考えるべきだろうか。
ヴァネッサとドロシーに合図玉を渡した頃には、すでにショーンは因果の世界とやらに潜らずとも欲しい未来へ繋がる因果を掴み取ることが出来ていた。
ならば、数十手先の未来を引き寄せるまでに能力が進化していたとしても不思議ではない。
「あの二人、いい感じだと思いませんか?」
突如かけられた声で我に返った。
横を見ると、妾の隣を歩いているドロシーが、前を歩くショーンとヴァネッサを指差していた。
「上手くいくと良いですよね」
「ドロシーはショーンのことが好きなのだと思っておったのじゃ」
だからドロシーのこの反応は意外だった。
ドロシーはニコニコと楽しそうに二人を応援している。
「はい。私、ショーンくんのことが好きですよ」
「ならば、ショーンがヴァネッサとくっつくのは、嫌なのではないか?」
妾の質問に、ドロシーは首を傾げた。
「私、ヴァネッサちゃんのことも大好きなんです。好きな人と好きな人がくっついたら、最高だとは思いませんか?」
なるほど。恋愛面に関して、ドロシーはまるっきり子どものようだ。
好きな二人が自分を差し置いてくっついたら、普通は嫉妬や疎外感を感じるものだろうに。
「……早く気付かんと、ドロシーはきっと後悔すると思うのじゃ」
実際に二人がくっついてから後悔しても遅い。
その時点で自分の気持ちに気付いたら、二人を引き裂かなければショーンを手に入れることは出来ない。
「後悔ですか? リディアちゃん、好きな物が合わさったら最高だって前に言ってましたよね。好きなハンバーグと好きなカレーが合わさってハンバーグカレーになったら幸せが倍になるって」
「ショーンとヴァネッサは、ハンバーグカレーとは違うのじゃ」
「同じですよ。私はショーンくんといると幸せ。ヴァネッサちゃんといると幸せ。だから仲良しな二人と一緒にいたら、もっと幸せになるはずです」
これは駄目だ。同年代の子のいない小さな村で育ったせいか、ドロシーには恋愛経験が欠けている。
実際にそのときになってみないと、二人がくっついた場合の嫉妬や疎外感は理解できないのだろう。
……理解したときにはすべてが遅いのだが。
「失恋もまた人生における勉強じゃ。強く生きるのじゃぞ」
ショーンとヴァネッサとドロシーが三角関係になったら、ちょっぴり面白そうだと思っていたのだが、ドロシーが恋愛経験を積むまではその光景は見ることが叶わなそうだ。
しかしこのまま順調にショーンとヴァネッサくっつくのは面白くないから、妾が引っ掻き回すのもいいかもしれない。
「ショーンは大人の姿の妾が好みのようじゃから、こっそり布団に潜り込んで色仕掛けで……」
「あれ。リディアちゃんもショーンくんのことが好きだったんですか? それなら第二夫人の座はリディアちゃんに譲りますね。私は第三夫人でいいので」
ああ、ドロシーは恋愛経験が足りないのではなく、一夫多妻制の村で育っていたのか。
それにしたって自分を後ろに置き過ぎな気はするが。
……というか。
「ショーンが何人も妻を持とうなんて生意気なのじゃ。童貞坊やのくせに!」
この先ショーンが何人もの女を侍らせるようなことがあったら、妾がドロップキックをお見舞いしてやろう。
――――――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます。
フォローでの応援も、とっても嬉しいです!
ブックマークが進んでいくのも見ていて嬉しいです。
応援を貰えたおかげで、定期的に更新を続け、ここまで走ってくることが出来ました。
物語全体としてはまだ続く予定ですが、この章で一旦の区切りを付けさせて頂く予定です。
ショーンの見つける真実をお楽しみください^^
ストックが少ない状態ですが、第一部終了まで毎日更新したいと思っています。
更新頻度が下がる場合はまたお知らせしますね。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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