勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

文字の大きさ
上 下
142 / 172
【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

●142

しおりを挟む

「さーて、ダンジョンよ!」

 翌日、俺たちは村から少し離れた位置にあるダンジョンへと向かっていた。
 ダンジョンに憧れがあったらしいヴァネッサは、朝からずっとテンションが高い。

「ヴァネッサちゃん、ご機嫌ですね」

「そりゃあそうよ。冒険者にとってダンジョンは夢の詰まった場所なんだから! その分、死と隣り合わせでもあるんだけどね!」

「そんなに危険な場所なんですか?」

「実際に潜ったことはないけど……でもきっと、死と隣り合わせなの。話に聞くところによると、ダンジョンの中には強いモンスターがうじゃうじゃいるんだから!」

 ヴァネッサの言葉を聞いたドロシーが嬉しそうな声を上げた。

「強いモンスターがうじゃうじゃ!? ということは、新しい仲間を作り放題ということですね!? 大きなモンスターはいるでしょうか!?」

「ドロシー……もしかしてモンスターを連れ歩くつもりなの?」

 どうやらドロシーは、ダンジョンで倒したモンスターをネクロマンサーの力で味方にしたいらしい。
 ダンジョンで死んだものはダンジョン消滅と一緒に消えるが、ネクロマンサーと契約した場合は外に出ることが出来るかもしれない。
 ネクロマンサーを公表している冒険者自体が珍しいから、実際のところがどうなのかは不明だが。

「あっ。モンスターは村に入れませんよね。姿を消せるモンスターがいたらいいのですが……出来れば大きい子で」

「やっぱりドロシーは大きな生き物が好きなのね」


 二人の楽しそうなやりとりが、何だか遠くに感じられる。
 俺の頭の中は、昨日視た凄惨な光景で占められていたからだ。

 あれは俺が過去に受けた仕打ち……なのだろう。
 あまりにも残虐な行ないだった。

 走馬灯の中で、俺は死んでも生き返るとクシューが言っていた。
 それに白衣の男たちもクシューと同じことを言っていた。
 だからこそ俺の身体を弄りまわして……死んでも生き返る俺は、何度も何度も苦痛を受けていた。

 白衣の男たちは、パーカーと同じ研究所に所属する研究員なのだろう。
 パーカーはあの実験を行なうことが嫌で研究所を逃げ出した。

 それにしても…………俺は一体、何者だ?
 死んでも生き返る人間は、この世のどこにもいないはずだ。
 それなのに、俺は死んでも生き返る身体らしい。

 パーカーによると、非人道的な行ないに我慢の出来なくなった俺は、研究所を焼いたらしい。
 しかし……どうやって?
 拘束されて動くことの出来ない俺は、どうやって研究所を焼いたのだろう。


「ダンジョンに到着したのじゃ」

「すごーい! これがダンジョンなのね!?」

「洞窟みたいになってるんですね」

「さっそくダンジョンに潜るとするかのう。良いか、ショーン?」

「……え? あ、はい」

 ぼーっと歩いているうちにダンジョンに到着していたらしい。
 さすがにダンジョンでは気を引き締めないと。
 難しいことを考えるのは、ダンジョンをクリアしてからにしよう。


   *   *   *


「ダンジョンでは味方作り放題だと思っていたのに、誰もいませんね」

 ダンジョン内を歩いたドロシーが不満そうに呟いた。
 圧倒的強者であるリディアと一緒にダンジョンに潜ると、どこのダンジョンでもこうなってしまうのだ。

「弱いモンスターは、妾の強さを恐れて隠れるんじゃよ」

「リディアが強いのは知ってたけど、強いとこんなことになるのね……」

 ヴァネッサも、話に聞いていたダンジョンとの差に困惑している。
 普通はダンジョンに潜ると、次から次へとモンスターを倒すことになる。
 しかし今の俺たちは、ダンジョン内を散歩でもしているような有様だ。

「ワッハッハ。妾はものすごく強いからのう。ボスモンスターだって一秒で倒せるぞ」

「一秒はさすがに言い過ぎでは……」

「ううん、リディアなら出来るかもしれないわ」

 リディアが巨大グモを瞬殺するところを実際に見ているヴァネッサが、ドロシーの言葉を否定した。

「出来るかも、ではなく、確実に出来るのじゃ。しかし、それではつまらんであろう?」

 リディアがニヤリと嫌な笑い方をした。

「つまらないとかつまらなくないとか、ダンジョンってそういうものじゃないと思うけど……」

「そういうものじゃ。それならこの誰も寄ってこないダンジョンが、ヴァネッサの求めていたダンジョンなのか?」

「それは……違うわね。ダンジョンはもっと心踊るもののはず」

 ヴァネッサにはダンジョンに対する憧れがあった。
 その憧れがこのような散歩で終わるのは、ヴァネッサとしても本意ではないのだろう。

「ということで、ボスモンスターは三人で倒すがいい」

 にっこり笑ったリディアが指し示す先では……。

「ボスモンスターだわ!?!?」

 巨大なキツネが、俺たちのことを品定めするように見つめていた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! 主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく! ~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...