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【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた
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しおりを挟む引き受けたクエストをこなすべく、ヴァネッサがひとつ目イタチに長剣を振り下ろした。
「とりゃあああーーー!!」
「キキーッ…………キキィ……」
ヴァネッサの攻撃により、致命傷を負ったひとつ目イタチが地面に倒れた。
見事ひとつ目イタチを倒したヴァネッサは、持っていた網にひとつ目イタチを入れた。
「ヴァネッサちゃん、カッコよかったです!」
「ひとつ目イタチを倒した上に、ヴァネッサさんは無傷ですね。すごいです」
「ヴァネッサもやれば出来るではないか」
ヴァネッサがひとつ目イタチを倒す様子を見ていた俺たちは、口々に賞賛の言葉を述べた。
「ありがと。ひとつ目イタチくらいなら、あたしでも倒せるのよ」
照れるヴァネッサに、俺とリディアとドロシーの三人で拍手を送る。
「……拍手を貰えるのは嬉しいんだけど、ひとつ目イタチを倒しただけでここまで褒められると、冒険者として何だか複雑かも」
ひとつ目イタチの討伐で拍手を送られたヴァネッサは、言葉通り複雑そうな顔をしている。
きっとひとつ目イタチの討伐が、初心者向けのランクの低いクエストだからだろう。
しかし、ヴァネッサにとっては快挙と言える。
なぜなら。
「俺はてっきりひとつ目イタチに近付く途中で転ぶと思ってました」
「妾は、勢い余って木にぶつかると思っておったのじゃ」
「転ばなくてすごいです! ぶつからなくてすごいです! ヴァネッサちゃんは天才です!」
「……褒められてる気がしないわ」
ヴァネッサは、より複雑そうな表情になった。
* * *
クエスト達成で得たお金を手に宿屋へ向かっていると、教会帰りらしいパーカーが道を歩いていた。
「あ、パーカーさんがいるわ」
「おや。君たちは私の知り合いかな? 最近物忘れが酷くてね」
名前を呼ばれたパーカーが振り返って俺たちを眺めた。
「いいえ、俺たちは旅の者です」
「ほう。旅のお方ですか。この村に旅人がやってくるのは珍しい……のだったかな?」
パーカーはややボケているようだが、普通に受け答えが出来ている。
先程の発作は収まっているようだ。
「あの、お家に帰るまで私たちがご一緒しましょうか? いいですよね、みなさん?」
ドロシーはパーカーのことを心配しているようだ。
これにヴァネッサが同意した。
「そうね。家に帰るまで見守ってないと危なそうよね」
「じゃあパーカーさんの家まで一緒に行きましょうか」
パーカーを家まで送り届けることには、俺も異論は無かった。
すでにこの村のアイテムショップに呪いのアイテムが置かれていないことは確かめている。
旅の備蓄も買い終わり、今日の予定は、あとはご飯を食べて寝るだけだ。
「みんなは私の家に来たいのかな。愉快な旅人たちだね。ではお茶をご馳走しよう」
「妾、お茶をご馳走になりたいのじゃ! お茶菓子もあるんじゃろう!?」
パーカーの発言にリディアが飛び跳ねて喜んだ。
少しの食事しか摂っていなかったため、腹が減っているのだろう。
「残念ながら、うちに大したものはない……ああ、確かこの前貰った干し柿があったような気がする。誰かにあげようと思っていたから、ちょうどよかった」
「干し柿!? 楽しみなのじゃ!」
喜ぶリディアを見たパーカーは、とても嬉しそうにしている。
「かえって気を遣わせてしまったみたいで、すみません」
「いいんだよ。誰かをもてなす機会をもらえたことは、私にとってもありがたいことだからね」
俺たちはパーカーと一緒に家までの道を歩いた。
その間パーカーと雑談を交わしたが、パーカーはとても穏やかで善良な人のようだった。
「食堂の店主が言っていた通り、ものすごく良い人みたいね」
「はい。少し会話をしただけでも親切な人だと分かりますね」
そうして到着したパーカーの家は、村の中心からやや離れた小さな建物だった。
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