勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

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【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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 俺たちは到着した村で、道中に採取した薬草を売って、一食分の食費を手に入れた。
 そして村の食堂で一食を四人で分け合っている。
 ひもじい。

「早くクエストを受注してお金を稼がないといけませんね」

「そうね。小さな村だから一攫千金を狙えるクエストは無いでしょうけど、せめて食事は人数分頼みたいわね」

「ショーンは一人前以上食べるぞ」

「ショーンくんって大食いだったんですか? その細い身体のどこに入るんです?」

「よく分かりませんが、無限に食べられますよ。胃袋が宇宙のようです」

「それじゃあ、お金がいくらあっても足りないわね」

「そういえば、あれだけ食べるということはショーンの便は……」

「ちょっと。食事中に便の話はご法度よ、リディア」

 俺たちが雑談をしながら食事をしていると、食堂内に大声が響いた。

「許してくれ! 許してくれえーーーっ!」

 声の主は、客の一人である老人だった。
 何も無い空間に向かって許しを請うている。

「パーカーさん、落ち着いてください。ここは教会ではありませんよ」

 すぐに別の客が老人の背中をさすった。

「教会……そうだ、教会へ行かなくては! 私は、懺悔しないといけない!」

「では一緒に行きましょう。教会はこっちですよ……ごめん、お代は後で払うから待ってて」

「はいよー」

 客の女に頼まれた店主は、あっさりとツケを了承した。
 そして俺たちに向き直る。

「ビックリさせてすまないねえ」

「あの人は誰ですか?」

「彼はパーカーさんといって、村の外れで暮らしているとても善良な人なんだけど……時々ああやって発作を起こすんだ」

「発作……彼は誰かに謝罪するようなことをしたんですかね」

「あり得ないよ。パーカーさんほど善良な人は、どこを探したっていないだろうさ」

 店主が言い切った。
 きっと店主はパーカーのことをよく知っているのだろう。

「パーカーさんってどんな方なんですか?」

「パーカーさんは、誰に頼まれたわけでもないのに村の掃除をしてくれるし、便利な魔法道具をタダ同然で貸してくれる。それに、そうやって得た少しの金を寄付もしている。その金でもっといい暮らしをすればいいのにねえ」

「欲の無い方なのでしょうか」

「それにしたって限度があるわ」

 首を傾げるドロシーとヴァネッサの様子に、店主が微笑みかけた。

「そんな人だから、パーカーさんは村のみんなに愛されているんだ。だからさっきのように発作を起こすと、ああやって誰かが教会に連れて行ってくれるのさ。最近はボケが進んじゃって、教会の場所が分からないことも多いからねえ」

「この村がいい村なことは分かりましたが……発作は治らないのでしょうか?」

「手術で治るようなものじゃないからねえ。パーカーさんは毎週教会に行って懺悔をしているけど、まだ足りないのかねえ」

「……パーカーさんにご家族はいらっしゃるんですか?」

 ドロシーがおずおずと聞くと、店主は困ったように首を振った。

「いないよ。私も一度、結婚しないのか尋ねたことがあるんだけど、パーカーさんに『自分には結婚する資格が無い』と言われてねえ。結婚に資格なんか必要無いと伝えたんだけど、駄目だったよ」

 店主は深い溜息をついた後、身を屈めつつ声を潜めて告げた。

「ここだけの話、パーカーさんは過去にどこかの町で奴隷にされていたと思ってるんだ。この村にはいないけど、遠い町には奴隷がいるんだろう?」

「奴隷……」

「パーカーさんはある日突然、この村にやってきたのさ。身なりは綺麗だったけど……逃げ出した奴隷だと考えると納得できることも多いんだ」

 店主は言い終えてから、我に返ったように背筋を伸ばした。

「あら、私ったら。勝手に個人情報を喋るのは良くないね。ついいつものクセで喋っちまったよ。ここではお喋りくらいしかすることがなくてねえ」

 店主は俺たちから離れると、店の奥へと消えて行った。

「はあ。人間はまだ奴隷なんぞをやっておるのか。何百年経っても変わらんのう」

「奴隷制度は早く無くなった方が良いものの一つね」

「世間知らずな私でも、奴隷制度は知ってます。パーカーさんは奴隷だったのでしょうか」

「その可能性は高いわね。必死で許しを請うたり、自分には結婚する資格が無いと思っていたり。店主の言う通り、奴隷だったと考えると納得できる部分は多いわ」

「でも村に来たときの身なりが綺麗だったり、便利な魔法道具を持っていたりと、奴隷にしては奇妙な点もありますよね」

 俺はそう言いつつ皿に残っていたニンジンを口に放り込んだ。
 するとリディアがとんでもないものを見るような目を俺に向けてきた。

「最後の一個は妾が食べようと思ってたのに!」

「もう食べちゃいました」

 俺に掴みかかろうとするリディアをヴァネッサがなだめた。

「いっぱい食べるために、まず私たちは稼がないとね」

「冒険者ギルドですね! これで私はヴァネッサちゃんとひとつになれるんですね!」

「一緒のパーティーで登録するだけだからね!?」



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