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【第六章】 美女が風呂に入ったら覗くのがお約束、と相棒が言っていた
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しおりを挟むアイテムショップの店内は、がらんとしていた。
俺たちの他に客もいなければ、店主が出てくる様子もない。
「……どうやら呪いのアイテムは売ってないみたいですね」
「というか、アイテム自体が全然並んでないのじゃ」
店内は客がいないだけではなく、商品棚に品物が並んでいない。
まるで空き家のようだ。
「小さな村ですからこういうこともあるんでしょう」
「よし。アイテムショップを確認したことだし、次はご当地飯を食べに行くのじゃ!」
切り替えの早い魔王リディアが、元気な声を出した。
「ご当地飯?」
「ショーンは呪いのアイテムを探して旅をしており、妾はご当地飯を食べるために旅をしておる」
「ショーンくんとリディアちゃんの目的は違うんですね」
「そうじゃ。しかし旅は道連れと言うじゃろ?」
「はい。一人旅よりも、好きな人と一緒に旅をする方が楽しいですよね」
「好きな人って、あたし? もうっ、ドロシーは可愛いんだから!」
女三人がきゃいきゃいとした会話を始めると、店の奥から店主らしき男が出てきた。
店内に商品は並んでいないが、一応店主はいたらしい。
「……いらっしゃいませ」
店主が生気の無い声で接客を始めた。
とはいえ、買うべき品物が店のどこにも置かれていないのだが。
「店主よ。一つ聞きたいのじゃが、この村のご当地飯は何じゃ?」
「……今は、どこへ行っても大したものは食べられませんよ」
店主はひどく痩せており、とても栄養が足りているとは思えない。
「この村は食糧難なんですか?」
「……村の近くに盗賊団のアジトがあるのです。彼らはことあるごとに村にやってきては、食料や金品を強奪して行きます。そのせいで村人は、生きていくのが精一杯の状態です」
今にも倒れそうな店主に、椅子に座ることを勧めた。
可哀想なことに目が虚ろだ。
「アジトの場所が分かっているのに、盗賊団を壊滅させられないんですか?」
「盗賊団はとても強く、ただの村人である我々では手も足も出ません」
俺たちは顔を見合わせてから、もう一度店主を見た。
「あの……」
「……旅のお方はお強いですか?」
店主が今にも消えそうな声で呟いた。
「彼女は強いですよ。ものすごく」
「えっへん」
魔王リディアが腰に手を当てて踏ん反り返ったが、店主は笑うようなことはしなかった。
きっと藁にもすがりたい気分なのだろう。
「……不躾なお願いですが、村を救ってはくれませんか?」
店主の言葉に、最初に反応したのはヴァネッサだった。
「ねえみんな。村から物を盗む盗賊団って、許せないと思わない!? こんなに苦しんでいる人たちから物を盗むなんて最低だわ! 倒しに行きましょうよ!」
怒りの混じった声で、俺たちに向かって提案をした。
「その話、乗った! 盗賊団から食料を取り返せばご当地飯を食べられるかもしれんからのう」
「俺も賛成です! 盗まれた金品の中に、探している呪いのアイテムがあるかもしれませんから」
「盗賊団はどうでもいいですが、ヴァネッサちゃんが行くところにはどこへでもついて行きます!」
俺たちは三者三様の理由で、ヴァネッサの提案に乗った。
「なんだか理由が不純で正義感の足りないパーティーね……」
一方で提案した側のヴァネッサは、やや不安そうな顔をしていた。
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