勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

文字の大きさ
上 下
126 / 172
【第六章】 美女が風呂に入ったら覗くのがお約束、と相棒が言っていた

●126

しおりを挟む

 温泉から上がると、魔王リディアとヴァネッサとドロシーは出発の準備を済ませていた。

「準備が出来たら出発するわよ、ショーン」

「これからよろしくお願いします」

 ヴァネッサとドロシーの口振りからするに、ここからしばらくは一緒に行動をするつもりのようだ。

「お二人はどちらへ行かれるんですか?」

「どこって、ショーンたちと同じ場所へよ」

「さっきリディアちゃんとお話をして、一緒に旅をしようという話になりまして……もしかして私たちが同行するのはご迷惑でしたか?」

 どうやら三人で長風呂をしている間に、そういう話に決まったらしい。
 俺に相談はしないんだ……とも思ったが、相談されたところで特に反対する理由もない。

「一緒に旅をすること自体は構いませんが、俺たちはダンジョンに潜ったりもします。その……平気ですか?」

 主にヴァネッサに向けて質問をした。
 ドロシーはモンスターから自分の身を守ることが出来そうだが、ヴァネッサに関してはそうは思えない。
 防御をしようとして転んで敵に突っ込む姿が目に浮かぶようだ。

「じゃあダンジョンに潜るときは、あたしは外で待ってるわ。足手まといになっちゃうし」

 俺の質問の意味を理解したのだろうヴァネッサはそう言ったが、ではそこまでして俺たちの旅に同行する意味は何だろう。

「ダンジョンに潜らないのに、ダンジョンまでついて来てくれるんですか? どうしてですか?」

「それは……ねえ?」

 応えに困ったのだろうヴァネッサがドロシーを見ると、ドロシーが代わりに応えをくれた。

「私たちは広い世界を見るために旅がしたいんです。だからダンジョンの周辺も見てみたくて、ダンジョンが消滅するところも見てみたくて……ですよね、ヴァネッサちゃん?」

「え、ええ。ドロシーの言う通りよ」

 イマイチすっきりしない解答に首を捻っていると、魔王リディアも不思議そうに首を捻っていた。

「外で待つ必要は無いじゃろ。一緒に潜れば良いではないか」

 これに慌てたのはヴァネッサだ。
 両手を大きく振って全力で拒否している。

「ええっ!? ダンジョンよ!? あたしには無理。すぐに死んじゃうわ」

「妾が隣にいれば問題ない。安全にダンジョンに潜れる機会など、なかなか無いぞ?」

「リディアが守ってくれるの?」

「守るまでもない。妾が隣にいれば、大抵のモンスターは襲ってこないからのう」

 そうだった。
 魔王リディアがダンジョンに潜ると、ダンジョン内のモンスターはみんな隠れてしまうのだった。

「そんなことある!?」

「それが、そんなことがあるんですよね……」

 俺の言葉を聞いたヴァネッサは、ぱあっと顔を綻ばせた。

「実はダンジョンに潜るの、夢だったの! あたし、絶対にダンジョンに潜りたい!」

 笑顔になるヴァネッサを、ドロシーが微笑ましいものを見る目で眺めていた。

「ということは、次の目的地はダンジョンなんですね?」

「村じゃが?」

 ヴァネッサが、ガクッとずっこけた。


   *   *   *


 俺たちは途中で一度野宿を挟んでから、目的の村に到着した。
 小さな村だが、店はいくつかあるようだ。

「まずはアイテムショップに寄ってもいいですか」

「回復薬の補充? それとも新しい武器が欲しいとか?」

「実は俺、とあるアイテムを探すために旅をしているんです」

「どんなレアアイテム? この村にあるかしら」

 ヴァネッサは俺がレアアイテムを探して旅をしていると思ったようだ。
 確かに各地を旅して探すほどのアイテムなら、高価なレアアイテムだと普通は考えるだろう。
 しかし俺が探しているのは、大抵の人間にとってガラクタとなるであろうアイテムだ。

「俺が探しているのは、ユニークスキルを消してくれる呪いのアイテムです」

「なにそれ!? せっかくのユニークスキルを消すアイテムなんて、どうしてそんなものが欲しいのよ!?」

 予想通り、ヴァネッサが素っ頓狂な声を上げた。

「話すと長くなっちゃうんですが、俺のユニークスキルが強すぎまして……」

「あのー、ユニークスキルって何ですか?」

 俺とヴァネッサの会話を聞いていたドロシーが、遠慮がちに手を上げた。

「お恥ずかしながら、私は小さな村で育ったため世間知らずで……すみません」

 しょぼんと俯くドロシーの肩を、ヴァネッサが明るい調子で叩く。

「知らないことは、別に恥ずかしいことじゃないわ。誰だって最初は無知なんだから。むしろ分からないことをそのままにしないで、ちゃんと質問が出来たドロシーは偉いわよ」

「ヴァネッサちゃん……!」

 顔を上げたドロシーに、ヴァネッサがユニークスキルの説明をした。

「ユニークスキルって言うのはね、簡単に言うと、とっても珍しい能力のこと。型にはまらない能力って言えばいいのかな」

 その通りだが、雑な説明だ。
 しかしドロシーはこの説明で納得したらしい。

「なるほど。その珍しい能力を、ショーンくんが持っているんですね」

「そう……って、聞いてないわよ。ショーンがユニークスキルを持ってたなんて。なんで教えてくれなかったの!?」

「言う必要が無かったので……」

 俺のユニークスキル・ラッキーメイカーは、珍しい能力過ぎて説明が難しい。
 そのため、過去にはユニークスキルを説明した相手に嘘吐き呼ばわりされたことすらある。
 それもあって、必要に迫られない限りユニークスキルの話はしないことにしている。

「で、どんな能力なの? ユニークスキルってすごい能力なんでしょ!?」

 ユニークスキルの単語を聞いたヴァネッサは目を輝かせている。

「えっと、俺のはラッキーメイカーというユニークスキルで……望む結果を掴み取る能力です」

「なにそれ、すごいじゃない!?」

「すべてはショーンくんの思い描く通りということですか!?」

 ドロシーまで目を輝かせ始めた。
 しかし残念ながら、ラッキーメイカーを使っても、必ず思い描く未来に繋がるわけではない。

「そんなに万能な能力ではありませんよ。悲しい未来に繋がることも多いですし」

「え? じゃあ望む結果に繋がってないじゃない」

 ヴァネッサの頭にはハテナマークが浮かんでいる。
 俺も言葉でだけ説明をされたら、今のヴァネッサのような顔になっていたはずだ。

 欲しい結果に繋がる因果の糸を掴んだとしても、その結果の先の未来が希望通りのものとは限らない。
 マーティンの望む結果を引き寄せた先にあったのは、ルースとの決別だった。

「結果がどのような未来を生むかは神のみぞ知る、じゃ」

 魔王リディアが物知り顔で話をまとめた。

「ふーん。じゃあショーンは、ユニークスキルが期待させるだけの能力だから、消したいわけね」

「そんなようなものです」

「目的のアイテムが早く見つかると良いですね」

 呪いのアイテムが見つかることを祈って、俺たちはアイテムショップの扉を開けた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! 主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく! ~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...