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【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る

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「この森にはお二人以外の魔物も住んでいるんですか?」

 ふと町の人に、町から若い女を連れ去る魔物を退治してほしい、と言われたことを思い出しケイティとレイチェルに聞いてみた。
 すると二人は顔を見合わせた後、首を傾げ合った。

「ケイティは他の魔物のことまでは分からないかも。いるともいないとも言えない感じ。レイチェルは知ってる?」

「レイチェルも知らない。魔物って基本的に他人に興味がないからね。でもここは大きな森だから、ケイティとレイチェル以外の魔物も住んでいるかもしれない」

 そして俺に向かって返事をする。

「森で他の魔物を見たことは何度かありますが、その魔物が森に住んでいるのか、森に寄っただけなのかまでは分からなくて……お役に立てなくてすみません」

「この森は住みやすいから、他の魔物がいてもおかしくはないとは思います。レイチェルも森で魔物を見かけたことがあります。でもレイチェルも詳しいことは分からなくて……」

 そう言って二人ともが頭を下げた。

「別に謝らなくてもいいですよ。もしかしたら知ってるかな、と思っただけですから」

「どうしてそんなことを聞くんですか? お探しの魔物がいるんですか?」

 不思議そうにする二人に、町で聞いた話を伝えることにした。

「積極的に探しているわけではないですが、ここへ来る前に寄った町の人に、世間話程度にですが、町から若い女をさらう魔物を退治してほしいと頼まれまして」

「うーん? どうして人間は、ショーン様に魔物退治を頼んだのですか?」

「ショーン様に魔物退治を頼むなんて、その人間には目が付いていないんじゃないですか?」

 俺の話を聞いたケイティとレイチェルは、また首を傾げた。
 どういう意味かと考えて、すぐに答えに辿り着く。

 そうだった。
 今の俺は魔物の姿だった。
 人間が魔物に魔物退治を頼むなんて、おかしすぎる状況だ。

「あはは。町にいたときは帽子を被っていたので、きっと俺が魔物だとは気付かなかったんでしょうね」

「わあ、うっかりさんな人間だったんですね。人間と魔物を見間違えるなんて」

「ショーン様は人間に近い見た目をしていますから……あっ、これは決して貶しているわけではありませんよ!? むしろショーン様の姿が羨ましいくらいで……」

 レイチェルは言ってから、慌てて否定的な意味ではないと付け足した。
 ここへ来る途中ケイティが、町に行くとすぐに魔物だと気付かれて追い払われると言っていた。
 彼女たちには大きな羽が生えているから当然だ。
 だから彼女たちは、町に自然に溶け込める俺の姿が羨ましいのだろう。

「さすがに発言一つで怒りませんよ。別に怒るような発言でもありませんし」

 町から若い女を連れ去っているのは、きっとこの二人ではない。
 彼女たちは町へ行くと追い払われるらしいから、彼女たちには人間が追い払うことの出来る程度の戦闘力しかないのだろう。
 そもそも二人とも女の魔物だ。
 若い女を狙ってさらうような真似はしないはずだ。
 それに二人の身体の細さから考えて、頻繁に人間を食べているとも思えない。

 それよりも森には他の魔物が出入りしているらしいから、その魔物が犯人の可能性が高い。
 町から連れ去った人間を、一旦この森に引きずり込んでいるのかもしれない。

 とはいえ、わざわざ犯人の魔物を探すことまではしなくてもいいだろう。
 町の人には期待しないように言ってあるし、すでに頼りになる別の人に討伐依頼をしていると、町の人が言っていた。

 魔物の住処にある呪いのアイテムが、俺の探すものかどうかを確認することだけが、俺たちがこの森へ来た理由だ。
 それ以外のことに深入りする必要は無いはずだ。



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