勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

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【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る

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「どうでしたか?」

「アップテンポな曲も可愛かったですが、こういうしっとりとした曲もいいですね。歌の上手さが際立ってました」

 俺が拍手を送ると、ケイティとレイチェルは顔を見合わせてから吹き出した。

「それにしても。ショーン様からあんな演出を頂けるとは思っていませんでした。ありがとうございました」

「びっくりしましたが、嬉しかったです。わざわざ初心な演技してくださってありがとうございます」

 どうやら二人は、俺が自身の目を隠しながら指の隙間から二人を見ていたことを、演技でやっていたと思っているらしい。

「あれは、わざとやったわけでは……」

「ショーン様は、リディアさんで見慣れてますもんね」

「今は幼い姿になっていますが、いつもは大人の魅力に溢れてますもんね、リディアさんって」

 言われて魔王リディアの大人の姿を思い出した。
 大人の姿の魔王リディアは、通りすがりの十人が十人とも振り返るような美貌だ。

「確かにリディアさんの大人の姿はすごいですよね。ハニートラップ百発百中という感じで」

「はい。リディアさんが近くにいたら、目が肥えちゃいそうです」

 頷き合う俺とレイチェルをよそに、ケイティはどこからか取り出した鏡を確認していた。

「ケイティは童顔だからなあ。もうちょっと大人の魅力が欲しいなあ」

「童顔は童顔で需要があるらしいわよ」

「ケイティは大人っぽくなりたいの。すぐにケイティがセクシー担当になってやるんだから!」

「何年経ってもケイティにセクシー担当は無理よ」

「レイチェルの意地悪」

 この二人は、仲が良いのか悪いのか。
 息ピッタリかと思えば、すぐに喧嘩を始める。
 喧嘩するほど仲が良いというやつだろうか。
 本当に仲が悪かったら、一緒には住まないはずだ。

「まあいいや。次も水着で歌って踊ります」

「今度は激しい曲なので、ノリノリでいきますよ」

 それに仲直りも早い。
 …………ん? 水着で激しい曲?

「もう水着は堪能しましたから! 早く着替えてきてください!」

 俺は、二人を無理やり隣の部屋へと押し込んだ。



 普通の服に着替えてきた二人は、さらに数曲を披露してくれた。
 ついでに目隠しけん玉とブリッジ歩行、怪談と漫談も披露してくれた。

「とっても可愛かったです。それにかくし芸もお上手でした。二人とも、絶対にアイドルになれますよ」

 俺の言葉を聞いたケイティとレイチェルは、嬉しくてたまらないのだろう、頬をずっとゆるませている。
 彼女たちが笑顔だと、何だか俺まで嬉しくなってくる。
 これがアイドルの効果だろうか。

 きっと彼女たちは、これからたくさんの魔物を笑顔にするはずだ。
 もしかすると、人間までも笑顔にしてしまうかもしれない。
 現に今、俺は笑顔になっている。

「あの、ショーン様」

 二人につられて微笑む俺に、ケイティが切り出した。

「ケイティたちには、まだファンが一人もいません。もしよければ、ショーン様がファン第一号になってくれませんか?」

 こんな可愛い頼みごとをされて、断ることが出来るだろうか。
 いや、そもそも断る理由がない。
 だって俺はもう彼女たちのファンなのだから。

「はい。俺がファン一号になります」

「ありがとうございます! じゃあこのファンクラブ会員の契約書に、ぜひサインをお願いします」

 そう言ってケイティは一枚の紙を取り出した。
 紙の一番上には大きく『ケイティとレイチェルのファンクラブ会員に関する契約書』と書かれている。

「本格的だね。ここにサインをすればいいの?」

 俺は、契約書の一番下にある署名欄を指差して尋ねた。

「そうです。よろしくお願いします!」

 俺は渡されたペンでさらさらとサインを書いていく。
 横からその様子を覗き込んだレイチェルが、ケイティに向かって何かを言おうとした。

「ケイティ。あんた、それ……」

「レイチェル、時として度胸も無いとアイドルとしてはやっていけないんだって」

 しかしレイチェルの言葉は、ケイティによって遮られてしまった。

 アイドルには度胸も大事、か。
 なるほど、そうかもしれない。

「ケイティは度胸があり過ぎよ」

 レイチェルは呆れたようにケイティを見たが、それ以上は何も言わなかった。



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