勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

文字の大きさ
上 下
63 / 172
【第三章】 困っている女の子は助けるべし、と誰かが言っていた

●63 side ドロシー

しおりを挟む

「約束通り、来たわよ……って、ショーンとリディアは?」

 村に、珊瑚色の髪を一つに結った少女がやってきた。
 ものすごいタイミングで。

「これはどういう状況!?」

 私の操る魔物が、戦士に飛びかかった。
 戦士は剣で魔物を薙ぎ払う。
 しかし痛覚のない魔物は、剣を恐れずに何度も戦士に向かっていく。
 戦士が何度でも立ち上がる魔物と戦っている間に、別の魔物に残りの三人を襲わせる。
 勇者は剣で魔物を切り、魔法使いと僧侶は杖を振り回して魔物を追い払っている。

「あいつが、あの狂ったネクロマンサーが、私たちを襲ってるの! もうっ、距離さえ取れれば魔法で吹き飛ばせるのに!」

 魔物に手こずる僧侶と魔法使いを狙って、さらに攻撃を重ねる。
 一人でも相手の人数を減らせれば、戦闘が格段に楽になるからだ。

「あなたたちは、私の幸せな世界を壊しました。絶対に許しません!」

 勇者と戦士によって二匹の魔物が再起不能にされた。
 いくら痛覚が無くても、バラバラに切り刻まれては、もう戦えない。
 しかしこの村には代わりの魔物がいくらでもいる。
 新たな魔物を勇者と戦士に差し向け、僧侶と魔法使いを助けることが出来ないようにする。

「……あたしには、どっちが正しいのか分からないわ」

 少女は戦闘を続ける私たちを困惑しながら眺めていた。
 勇者たちも私も、突然現れたこの少女に攻撃を当てるようなことはしなかったが、流れ弾が当たる位置にいつまでも突っ立っていられるのは少し困る。

「僕たちは勇者パーティーだ。僕たちの後ろに隠れろ!」

 同じことを思ったのだろう勇者が、少女を自分たちの後ろに下がらせようとした。

「勇者である証拠は?」

「この剣は国王に渡された勇者の剣だ」

 勇者はそう言いながら、件の剣で魔物を突き刺した。

「あたし、本物の勇者の剣を見たことがないから、それが本物かどうかの判断が出来ないわ」

 しかし少女は、勇者の剣とやらを見ながら首を傾げている。

「この状況で疑ってどうするんだ!?」

「うーん……そうだ! この中に合図玉を割った人はいる? これなんだけど」

 少女は戦闘中の私たちの前で、呑気に懐からとあるものを取り出した。
 取り出されたのは、星空を閉じ込めたような綺麗なガラス玉だった。

「なんだよそれ」

「それ、は……」

 あれは、私がもらったヒーローを呼ぶお守りだ。
 あのお守りは割ったはずなのに、どうして少女が持っているのだろう。

「その反応、あなたがあたしを呼んだのね!?」

 少女は私の元へと歩みを進めた。

「その女は危険だ!」

 勇者が少女に向かって叫んだが、少女は構わずに私の元へとやってきた。
 そして私の目の前でぴたりと止まる。

「あたしはあなたを助けに来たの。助けを呼ばれたから」

「私を、助けに来た……?」

 目の前の少女は信じられないことを言っている。
 私を助ける者など、この世のどこにもいないのに。

「その女に近付いたら危ないわよ!?」

「早くこっちに来い!」

 少女の後ろでは、勇者パーティーの面々が少女を止めようと叫んでいる。
 しかし少女は、その声に耳を貸そうとはしない。

「あたしはあなたを助けたいの」

「私を……?」

「そうよ。助けてほしいから呼んだんでしょ?」

 その通り、助けてほしいから呼んだ。
 これまでだって、何度も助けを呼んだ。
 何度も何度も何度も何度も。

 でも一度も助けは来なかった。
 それなのに目の前の少女は、私を助けに来たと言っている。

 ……ずっと待っていた。
 私を助けてくれる誰かを、ずっとずっと待っていた。

 私以外の村人が死んでも、ここでずっと助けを待ち続けていた。
 夢のような平穏で幸せで残酷な世界から、私を救ってくれる、誰かを。

「…………私を、助けて」

 喉から漏れた声は、あまりにも弱々しく、村が襲われたあの日の私のもののようだった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! 主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく! ~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...