勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

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【第一章】 勇者パーティーから追放されたら、美少女に拾われた!?

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 俺は倒れている勇者パーティーの面々に近付くと、全員の脈を確認した。
 どうやら気絶しているだけで、全員生きてはいるらしい。

「早く近くの村までワープして、回復してあげてください。ワープ用のアイテムは持ってましたよね?」

「うるさい! 荷物持ちが僕に指図するな!」

「そんなことを言っている場合では……」

「うるさいうるさいうるさい! お前は役立たずで底辺の荷物持ちで、僕は誰からも賞賛されるエリートの勇者なんだ。お前は僕に意見できる立場じゃねえんだよ!」

 俺が勇者と言い争っていると、魔王リディアが耳打ちをしてきた。

「どうやらこの者、ダンジョンを閉じずに村へ逃げ帰り笑いものにされることが嫌みたいだぞ。器の小さい男じゃ」

 勇者らしい理由だ。
 いや、この場合は「勇者らしい」ではなく「この男らしい」が適切な表現か。

 正直、勇者パーティーがボロボロになっているところを見るのはいい気味だが、助かる命が消えていくのを無視することは出来ない。
 俺は勇者のようなクズにはなりたくないから。

「ダンジョンを閉じたら、近くの村までワープしてくれるんですね?」

「荷物持ちにダンジョンが閉じられるわけねえだろ。それとも一緒にいる女が戦ってくれるのか!?」

 勇者は魔王リディアを指差した。
 しかし魔王リディアは瞬きすらしない。

 ボスモンスターに関しては、魔王リディアは手出しをしない。
 俺たちは、道中にそう決めた。

 そして今、魔王リディアはボスモンスターに対して自分は戦闘の意志が無いという合図を送ってくれている。
 そのおかげでボスモンスターは逃げずにこの場にとどまっているのだ。

「ボスモンスターとは、俺が戦います」

「勇者パーティーが負けたのに、荷物持ちに何が出来るんだよ!?」

「どうやって倒すかはまだ分かりませんが、可能性はゼロではないと思います」

 攻撃を受けないようにボスモンスターから十分な距離をとる。
 そして、俺は――――ユニークスキルを使った。



 精神を、因果の世界へダイブさせる。
 全身の力を抜き、ここではないどこかへと意識を飛ばす。
 ふわりふわりと現実世界の輪郭が歪んでいく。

 意識の向かった先、因果の世界は、自分の足すらも見えないほどに真っ暗だ。
 しかし目の前には、幾千万の因果の糸が伸びている。
 幾千万の因果の糸が絡み合い、繋がり合い、未来へと伸びている。

 手近な因果の糸を掴むと、その因果の先の未来の映像が脳内に直接流れてくる。
 どの因果の糸を掴んでも、因果の先に見える未来は、俺がボスモンスターに倒されるものばかりだ。

「これも違う、これも、これも……」

 糸を手繰るたびに残念な未来ばかりが見えてくる。
 俺が心臓に致命傷を受ける未来、首に致命傷を受ける未来、頭に致命傷を受ける未来、じわじわと苦しみながら倒れる未来、戦い続けて力尽きる未来、ボスモンスターから逃亡してダンジョン内で餓死する未来。

「……あった、これだ!」

 俺はその中からやっと見つけた欲しい未来へと続く因果の糸を掴むと、因果の内容を確認した。

 確認の終わった俺は、また全身から力を抜く。
 そして現実世界を強くイメージする。
 今度は因果の世界の輪郭がふわりふわりと歪んでいく。


「ボスモンスターを倒す方法が分かりました!」

「ようやく戻ってきおったか」

 因果の世界から戻ってきた俺は……地面に生えていたキノコを次から次へと採取した。
 そしてキノコを抱えたままボスモンスターに近付くと、咆哮するボスモンスターの口の中に、採ったキノコをまとめて投げ込んだ。

「考えてみるとおかしいんですよ。こんなにキノコがあるのに、ボスモンスターに踏まれた形跡がありません。踏まれているキノコには、すべて人間が踏んだあとがついています。つまりこのボスモンスターは、キノコを踏むことさえ避けるほどに、このキノコを苦手としているんです」

 俺が説明をしている間に、ボスモンスターは悶え苦しんで暴れ回り、動かなくなった。



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