勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単

文字の大きさ
上 下
3 / 172
【第一章】 勇者パーティーから追放されたら、美少女に拾われた!?

●3

しおりを挟む

「…………というわけで、俺は勇者パーティーを追放されたんです」

「なんと。聞くも涙、語るも涙の話じゃのう」

 本日二度目の焚火。
 焚火の近くには鳥を丸ごと刺した串が突き立っている。
 焼けるまであと少しだろう。

 俺は焼き魚を頬張りながら、美少女に先程の出来事を語って聞かせた。
 初対面の美少女に話すような内容ではなかったが、誰かに言わずに自分の胸の中だけに留めておくには、辛すぎる話だったからだ。
 あとたぶん、この美少女は見た目通りの年齢ではない。
 だから人間関係のゴタゴタを聞かせても平気だと判断した。

「しかし……勇者、戦士、僧侶、魔法使い、荷物持ち。結構いいパーティーだと思うがのう」

「荷物持ちじゃなくて、ラッキーメイカーです」

「そうじゃったな。そういうことにしておいてやろう。ワッハッハ」

 美少女は見た目と合っていない豪快な笑い方で笑いながら、俺の背中を叩いた。
 いきなり叩かれてむせると、美少女はすぐに水を渡してくれた。
 そういえば美少女は、狩った肉にも魚にも手を付けず、ただ俺の食事を眺めている。

 ……もしかしてこの肉と魚、毒があるわけじゃないよな!?

 俺の動揺を悟ったのだろう美少女が、すぐに答えをくれた。

「安心するといい。お主の食べておる魚も肉も、無毒な生物じゃ。妾はすでに食事を済ましたゆえ食べないだけじゃ。それにこんな時間に食べたら太ってしまうからのう。美少女が台無しじゃ」

「……こんな時間にどうして美少女が一人で山にいるんですか」

「夜の散歩じゃ」

 答えになっているような、なっていないような。
 本当に少女なわけではないだろうから別にいいのだが、それでもこの見た目の少女が夜に一人で山を歩いている絵面は、違和感を覚えずにはいられない。

「しかし先程の話で気になったのじゃが、お主が魔王に会いたいというのはどういうことじゃ? 倒したいのではなく会いたいと言っておったであろう。ミーハーなのか?」

「そんな理由で魔王城までは行かない……けど、俺の個人的な事情と深く関わる話です。悪いですが、初対面のあなたには話せません」

「寂しいのう悲しいのう。お主と妾の仲ではないか」

「ほんの一時間前に会った仲でしょう」

「絆の深さに時間は関係ないと言うじゃろ」

「だとしても、一時間でそこまでの絆は結べませんよ」

 美少女はなおも、寂しいのう悲しいのう、と言い続けている。
 さらに目には涙まで溜め始めた。

「妾はこんなにもお主と仲良くなりたいと思っておるのに。壁を作られると泣いてしまいそうじゃ。少しだけでいいから教えてはくれんかのう?」

「……泣かれても話せませんよ」

「美少女が頼んでおるんじゃぞ? 本当に少しだけでいいんじゃよ。先っちょだけでいいから」

「本物の少女はそんな下品なことを言いません」

 俺が美少女のお願いを突っぱねると、美少女の目に溜まっていた涙はスッと引っ込んだ。

「ちっ、ダメか」

 実は美少女の涙に心が揺れていたのだが、嘘泣きだったようだ。
 美少女はケロリとした顔で、その辺に落ちている石や小枝を焚火に投げ入れ始めた。
 石が投げ入れられるたびに炎がゆらりと揺れる。

「肉には当てないでくださいよ」

「妾がそんなヘマをするわけがなかろう」

 美少女は炎の中に小枝を数本投げ入れてから、試すような表情で俺のことを見た。
 口の端を上げて不敵な笑みを浮かべている。

「それで、そのラッキーメイカーというユニークスキルとやらは、具体的には何が出来るものなんじゃ?」

「パーティー全体の運気を上げられます」

「それだけの能力で魔王を倒せるなどと言っておったのか? 本当に?」

 美少女はなおも俺を試すような視線を向けている。
 挑発されているのだろうか。

「倒せると思いますよ。別に倒す気はないですが」

「勝とうと思えば勝てるけど、勝つ気がないから勝たなかっただけ。みたいなことを言うのう」

「…………」

「作ろうと思えば作れるけど、作る気がないから彼女を作らなかっただけ。みたいなことを言うのう」

「…………」

 美少女は絶妙に嫌な例えを出してきた。
 俺がイキっているだけだと思っているようだ。

 しかしよく考えてみると、俺の発言は何も知らない相手が聞くとイキっているようにしか聞こえない。
 だからと言って軽率にユニークスキルの内容は言えないので、無言で耐えるしかない。

「人気者になろうと思えばなれるけど、人気者になる気がないから……」

「もう勘弁してください!」

 早々に耐えられなくなった俺は、美少女の言葉を遮った。
 美少女は遮られるまで嫌な例えを出し続けるつもりに見えたからだ。

「では、お主が魔王を倒せると言った理由を教えてくれるんじゃな?」

「それはまだ言えませんが、魔王に会いたい理由なら言えます」

「ほう。言ってみるがいい」

 俺は一つ深呼吸をしてから告げた。

「俺のユニークスキルを、奪ってほしいんです」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました! ~いざなわれし魔の手~

高見南純平
ファンタジー
最弱ヒーラーの主人公は、ついに冒険者パーティーを100回も追放されてしまう。しかし、そこで条件を満たしたことによって新スキルが覚醒!そのスキル内容は【今まで追放してきた冒険者のスキルを使えるようになる】というとんでもスキルだった! 主人公は、他人のスキルを組み合わせて超万能最強冒険者へと成り上がっていく! ~いざなわれし魔の手~ かつての仲間を探しに旅をしているララク。そこで天使の村を訪れたのだが、そこには村の面影はなくさら地があるだけだった。消滅したあるはずの村。その謎を追っていくララクの前に、恐るべき魔の手が迫るのだった。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

無能扱いされた実は万能な武器職人、Sランクパーティーに招かれる~理不尽な理由でパーティーから追い出されましたが、恵まれた新天地で頑張ります~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)
ファンタジー
鍛冶職人が武器を作り、提供する……なんてことはもう古い時代。 現代のパーティーには武具生成を役目とするクリエイターという存在があった。 アレンはそんなクリエイターの一人であり、彼もまたとある零細パーティーに属していた。 しかしアレンはパーティーリーダーのテリーに理不尽なまでの要望を突きつけられる日常を送っていた。 本当は彼の適性に合った武器を提供していたというのに…… そんな中、アレンの元に二人の少女が歩み寄ってくる。アレンは少女たちにパーティーへのスカウトを受けることになるが、後にその二人がとんでもない存在だったということを知る。 後日、アレンはテリーの裁量でパーティーから追い出されてしまう。 だが彼はクビを宣告されても何とも思わなかった。 むしろ、彼にとってはこの上なく嬉しいことだった。 これは万能クリエイター(本人は自覚無し)が最高の仲間たちと紡ぐ冒険の物語である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

処理中です...