2 / 172
【第一章】 勇者パーティーから追放されたら、美少女に拾われた!?
●2
しおりを挟む
暗い山道を一人で歩く。
「早く遠くへ行かないと。あのまま勇者パーティーの近くにいたら、また睡眠魔法を掛けられて殴られそうだ」
思わず溜息が出てしまう。
勇者パーティーとして、俺なりに頑張ってきたつもりなのに。
「でもまあ、戦闘中にボーっとしてるように見えたのは仕方ないか」
実はこれまで戦った中に、あの四人だけでは勝てないボスもいたのだが……言ったところで信じてはもらえないだろう。
それに旅をしているうちに全員の能力値が上がってきて、今では俺がいる必要の無い戦闘も増えてきた。
「だから追放もやむなし……というか、二度と戻るか、あんなパーティー!」
静かな山道に響き渡る俺の声に驚いた鳥が羽ばたいた。
……あ、チキンが食べたい。
能力を使うと異常に腹が減るのは、強力なユニークスキルを使った反動なのだろう。
今日すでに能力を使った俺は、腹がペコペコだ。
獲物を狩ろうにも、この状態では能力が使えない。
自分の手で物理的に狩るしかないだろう。
「魔法使いがいれば一発であの鳥を撃ち落せるのに……はあ」
さっき別れたばかりの魔法使いの顔を思い出して、俺は溜息を吐いた。
魔法使いとは上手くやれていると思っていたのに。
それは、戦士や僧侶、そして勇者も同じだ。
「仲間だと……思ってたのに……」
仲間だと思っていたからこそ、地道な旅を一緒にしてきたのに。
あまりにもチートな能力は使わずに。
そう。
俺のユニークスキルは、運気を上げるラッキーメイカーではない。
ある意味では運気を上げたとも言えるから、ラッキーメイカーと名乗っているが。
俺の本当の能力は、『因果を掴む力』だ。
あまりにもチート過ぎて能力を明かしたら、魔王を倒した後に狙われるのは俺だろうと思い、隠していた。
なぜなら俺の能力で世界の滅亡を選択することも可能だからだ。
…………たぶん。
試してないから本当に出来るかどうかは分からないが。
「でもこの能力で世界が滅亡する因果を掴んだら、不可能じゃないと思うんだよな。その逆に、魔王を倒す因果を掴めば簡単に魔王討伐をして世界を救えるんだよなあ」
「ほう。魔王討伐が簡単に出来るとは。ぜひともその話を聞いてみたいものじゃ」
突如聞こえてきた声に驚いて振り返ると、俺の後ろには美少女が立っていた。
あと十年経ったらぜひお付き合いをお願いしたい……って、どうして美少女がこんなところに?
あたりを見渡したが、保護者らしき人物の姿は無い。
そもそも、今の今まで誰の気配も無かったはずだ。
ということは、この美少女はただの少女ではなく、魔物が俺を油断させるために美少女に変身している可能性が高い。
俺は慌てて美少女から距離をとった。
そして懐に忍ばせていた短剣を手に持ったが、肉弾戦で勝てる見込みはまるでない。
この臨戦態勢のハッタリで逃げてくれればいいが。
「こんな美少女に剣を向けるとは、お主さてはモテないであろう?」
俺が冷や汗を流している一方で、美少女は余裕な様子だ。
あと俺はモテないんじゃなくて、好きな子以外にはモテる気が無いだけだ!
「まあよい。人生はモテることが全てではないからのう。友人と遊ぶことや、美味しい食事を食べることも、人生の楽しみじゃ」
食事という単語を聞いた途端、俺の腹が大きな音を鳴らした。
緊張感の漂う場で、恥ずかしい。
しかし美少女は俺の腹の虫がお気に召したらしく、大声をあげて笑っている。
「この場面で腹の虫を鳴かせるとは。緊張感が無いにもほどがあるのう」
「う、うるさいなあ。生理現象なんだから仕方がないでしょう!?」
「うむ、気に入った。少しこの場で待っておれ」
そう言い残すと、美少女は姿を消した。
……が、五秒ほどで戻ってきた。
片手に鳥を持って。
「お主、チキンは好きか?」
「……好きだとしても、こんな得体の知れない美少女の用意したチキンなんて食えません」
「美少女とな? その通りじゃが、面と向かって言われると照れるのう」
美少女は、俺の発した「美少女」という単語に喜んでいた。
そして姿を消したかと思うと、またすぐに戻ってきた。
今度はもう片方の手に魚を持って。
「妾を美少女と表現した褒美に魚もやろう。肉と魚が食べられるなんて、贅沢であろう?」
肉と魚という単語に、腹の虫がまた大きな鳴き声を発した。
俺にはもう誘惑に逆らえるほどの忍耐力が残っていなかった。
「早く遠くへ行かないと。あのまま勇者パーティーの近くにいたら、また睡眠魔法を掛けられて殴られそうだ」
思わず溜息が出てしまう。
勇者パーティーとして、俺なりに頑張ってきたつもりなのに。
「でもまあ、戦闘中にボーっとしてるように見えたのは仕方ないか」
実はこれまで戦った中に、あの四人だけでは勝てないボスもいたのだが……言ったところで信じてはもらえないだろう。
それに旅をしているうちに全員の能力値が上がってきて、今では俺がいる必要の無い戦闘も増えてきた。
「だから追放もやむなし……というか、二度と戻るか、あんなパーティー!」
静かな山道に響き渡る俺の声に驚いた鳥が羽ばたいた。
……あ、チキンが食べたい。
能力を使うと異常に腹が減るのは、強力なユニークスキルを使った反動なのだろう。
今日すでに能力を使った俺は、腹がペコペコだ。
獲物を狩ろうにも、この状態では能力が使えない。
自分の手で物理的に狩るしかないだろう。
「魔法使いがいれば一発であの鳥を撃ち落せるのに……はあ」
さっき別れたばかりの魔法使いの顔を思い出して、俺は溜息を吐いた。
魔法使いとは上手くやれていると思っていたのに。
それは、戦士や僧侶、そして勇者も同じだ。
「仲間だと……思ってたのに……」
仲間だと思っていたからこそ、地道な旅を一緒にしてきたのに。
あまりにもチートな能力は使わずに。
そう。
俺のユニークスキルは、運気を上げるラッキーメイカーではない。
ある意味では運気を上げたとも言えるから、ラッキーメイカーと名乗っているが。
俺の本当の能力は、『因果を掴む力』だ。
あまりにもチート過ぎて能力を明かしたら、魔王を倒した後に狙われるのは俺だろうと思い、隠していた。
なぜなら俺の能力で世界の滅亡を選択することも可能だからだ。
…………たぶん。
試してないから本当に出来るかどうかは分からないが。
「でもこの能力で世界が滅亡する因果を掴んだら、不可能じゃないと思うんだよな。その逆に、魔王を倒す因果を掴めば簡単に魔王討伐をして世界を救えるんだよなあ」
「ほう。魔王討伐が簡単に出来るとは。ぜひともその話を聞いてみたいものじゃ」
突如聞こえてきた声に驚いて振り返ると、俺の後ろには美少女が立っていた。
あと十年経ったらぜひお付き合いをお願いしたい……って、どうして美少女がこんなところに?
あたりを見渡したが、保護者らしき人物の姿は無い。
そもそも、今の今まで誰の気配も無かったはずだ。
ということは、この美少女はただの少女ではなく、魔物が俺を油断させるために美少女に変身している可能性が高い。
俺は慌てて美少女から距離をとった。
そして懐に忍ばせていた短剣を手に持ったが、肉弾戦で勝てる見込みはまるでない。
この臨戦態勢のハッタリで逃げてくれればいいが。
「こんな美少女に剣を向けるとは、お主さてはモテないであろう?」
俺が冷や汗を流している一方で、美少女は余裕な様子だ。
あと俺はモテないんじゃなくて、好きな子以外にはモテる気が無いだけだ!
「まあよい。人生はモテることが全てではないからのう。友人と遊ぶことや、美味しい食事を食べることも、人生の楽しみじゃ」
食事という単語を聞いた途端、俺の腹が大きな音を鳴らした。
緊張感の漂う場で、恥ずかしい。
しかし美少女は俺の腹の虫がお気に召したらしく、大声をあげて笑っている。
「この場面で腹の虫を鳴かせるとは。緊張感が無いにもほどがあるのう」
「う、うるさいなあ。生理現象なんだから仕方がないでしょう!?」
「うむ、気に入った。少しこの場で待っておれ」
そう言い残すと、美少女は姿を消した。
……が、五秒ほどで戻ってきた。
片手に鳥を持って。
「お主、チキンは好きか?」
「……好きだとしても、こんな得体の知れない美少女の用意したチキンなんて食えません」
「美少女とな? その通りじゃが、面と向かって言われると照れるのう」
美少女は、俺の発した「美少女」という単語に喜んでいた。
そして姿を消したかと思うと、またすぐに戻ってきた。
今度はもう片方の手に魚を持って。
「妾を美少女と表現した褒美に魚もやろう。肉と魚が食べられるなんて、贅沢であろう?」
肉と魚という単語に、腹の虫がまた大きな鳴き声を発した。
俺にはもう誘惑に逆らえるほどの忍耐力が残っていなかった。
31
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました
ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。
そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった……
失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。
その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。
※小説家になろうにも投稿しています。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
今のは勇者スキルではない、村人スキルだ ~複合スキルが最強すぎるが、真の勇者スキルはもっと強いに違いない(思いこみ)~
ねぎさんしょ
ファンタジー
【完結保証】15万字足らず、約60話にて第一部完結します!
勇者の血筋に生まれながらにしてジョブ適性が『村人』であるレジードは、生家を追い出されたのち、自力で勇者になるべく修行を重ねた。努力が実らないまま生涯の幕を閉じるも、転生により『勇者』の適性を得る。
しかしレジードの勇者適性は、自分のステータス画面にそう表示されているだけ。
他者から確認すると相変わらず村人であり、所持しているはずの勇者スキルすら発動しないことがわかる。
自分は勇者なのか、そうでないのか。
ふしぎに思うレジードだったが、そもそも彼は転生前から汎用アビリティ『複合技能』の極致にまで熟達しており、あらゆるジョブのスキルを村人スキルで再現することができた。
圧倒的な火力、隙のない肉体強化、便利な生活サポート等々。
「勇者こそ至高、勇者スキルこそ最強。俺はまだまだ、生家<イルケシス>に及ばない」
そう思いこんでいるのはレジード当人のみ。
転生後に出会った騎士の少女。
転生後に再会したエルフの弟子。
楽しい仲間に囲まれて、レジードは自分自身の『勇者』を追い求めてゆく。
勇者スキルを使うための村人スキルで、最強を証明しながら……
※カクヨム様、小説家になろう様でも連載予定です。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる