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【最終章】
第94話 いざ広場へ
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翌朝、店に集合した私たちは、シリウス様に防水魔法を掛けてもらった。
「これで全身が水を弾くんですか? イマイチ実感が湧きませんが……そうだ」
防水の効果を確認するため手にお茶をかけようとすると、信じられないものを見たと言わんばかりのシリウス様に阻止された。
「そなたは何をしている!? 防水魔法は、水を弾くが熱は通す。自ら火傷をしに行く奴がどこにいる!?」
「あ、考えてみればそうですね」
言われてみると、当たり前の話だ。
防水魔法なのだから、弾くのは水だけに決まっている。
いくら水を弾こうとも、熱いものは熱い。
「そなたは変なところで抜けていると言うか……これから行なう作戦では気を抜かないように」
「はーい」
「気の抜ける返事ね」
緊張している様子のイザベラお姉様が言った。
広場での行動は、昨日何度もシミュレーションをしている。
予期せぬイレギュラーが起こる可能性もあるが、イレギュラーについても何パターンも想定した。
大体のことには対応できるはずだから、大船に乗った気持ちで任せてほしい。
……まあ、決められた私の役割は、イザベラお姉様が登場する前に会場を沸かせることだけだが。
「忘れ物は無いな? 『防御魔法の掛かった腕輪』と『オトナリさん』それに『聖女を見分ける原石』……他に必要なものはあったか?」
「ありません。準備万端です!」
「今朝城でも思ったが、そなたはどうして大荷物なのだ?」
シリウス様が、リュックを背負う私のことを、不思議そうな顔で見つめてきた。
大荷物というほどではないが、確かに演説をしに行くだけにしては荷物が多めかもしれない。
「私、旅行の準備をすると荷物が増えちゃうタイプなんです。ハネムーンでも荷物が多いと思いますが、大目に見てくださいね」
可愛くウインクをしてみせると、シリウス様はわざとらしく咳払いをした。
「これから行なうのは、旅行ではなく決戦だ」
「初めての共同作業ですね」
「変な言い方をするな」
「こんなときに緊張感の無い夫婦漫才はやめてください」
私たちのやりとりを見兼ねた様子のイザベラお姉様がストップをかけた。
「夫婦漫才だなんて、えへへ。夫婦ですって、シリウス様」
「夫婦ではない」
「仲が良いのは良いことですが、会話はそのくらいで。いい具合に緊張がほぐれたところで、広場へ向かいましょう」
今度はアンドリューさんが苦笑しながら会話の終了を促した。
この日常を壊したくなくて、つい作戦決行を先延ばしにしようとしてしまったが、そんなことをしていても何も解決しない。
「ああ。では行くぞ」
シリウス様のかけ声で、私たちは広場へと出発した。
* * *
広場に到着すると、広場ではすでにシリウス様の使用人たちが待機をしていた。
それに広場には使用人以外の人間も大勢いた。
彼らはパンの入ったバスケットを持つリアの前に並び、パンを購入しているようだった。
予想外の事態にリアは困惑しているようだったが、広場に大勢の人間がいることは好都合だ。
ちなみにパンの販売を手伝っているピーターの頬は、真っ赤に腫れている。
マリーさんに殴られたらしいが、一体どれほどの力で殴られたのだろう。
私は広場の中央に立った……が、目立たない。
背が低いこともあり、遠くから私の姿が見えるとは思えなかった。
イザベラお姉様も私と大して身長が変わらないから、きっと同じ結果になるだろう。
私は広場の中央からシリウス様の元へと向かうと、踏み台の作成をお願いした。
するとシリウス様は、近くに倒れていた木をあっという間に安定した木の踏み台へと変身させた。
さすがはシリウス様だ。
ついでに出来上がった踏み台を広場の中央まで運んでくれた。
シリウス様、さすがな上に優しい。
さっそく踏み台の上に乗ると、さっきよりもずっと景色がよく見えた。
周りからも私の姿がよく見えることだろう。
すでに何人かは奇妙なことを始めた私をちらちらと見ている。
一つ深呼吸をした私は、持って来た『オトナリさん』を起動させた。
さあ、準備は整った!
――――――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます。
応援もありがとうございます!
ついに最終章です。
ぜひクレアとシリウス、そして彼らに関わったみんなの結末を見届けてください。
最後まで『ちょっとズレた死神と幸せに暮らす人生設計もアリですよね?~死神に救われた何も持たない私が死神を救う方法~』をよろしくお願いします!
「これで全身が水を弾くんですか? イマイチ実感が湧きませんが……そうだ」
防水の効果を確認するため手にお茶をかけようとすると、信じられないものを見たと言わんばかりのシリウス様に阻止された。
「そなたは何をしている!? 防水魔法は、水を弾くが熱は通す。自ら火傷をしに行く奴がどこにいる!?」
「あ、考えてみればそうですね」
言われてみると、当たり前の話だ。
防水魔法なのだから、弾くのは水だけに決まっている。
いくら水を弾こうとも、熱いものは熱い。
「そなたは変なところで抜けていると言うか……これから行なう作戦では気を抜かないように」
「はーい」
「気の抜ける返事ね」
緊張している様子のイザベラお姉様が言った。
広場での行動は、昨日何度もシミュレーションをしている。
予期せぬイレギュラーが起こる可能性もあるが、イレギュラーについても何パターンも想定した。
大体のことには対応できるはずだから、大船に乗った気持ちで任せてほしい。
……まあ、決められた私の役割は、イザベラお姉様が登場する前に会場を沸かせることだけだが。
「忘れ物は無いな? 『防御魔法の掛かった腕輪』と『オトナリさん』それに『聖女を見分ける原石』……他に必要なものはあったか?」
「ありません。準備万端です!」
「今朝城でも思ったが、そなたはどうして大荷物なのだ?」
シリウス様が、リュックを背負う私のことを、不思議そうな顔で見つめてきた。
大荷物というほどではないが、確かに演説をしに行くだけにしては荷物が多めかもしれない。
「私、旅行の準備をすると荷物が増えちゃうタイプなんです。ハネムーンでも荷物が多いと思いますが、大目に見てくださいね」
可愛くウインクをしてみせると、シリウス様はわざとらしく咳払いをした。
「これから行なうのは、旅行ではなく決戦だ」
「初めての共同作業ですね」
「変な言い方をするな」
「こんなときに緊張感の無い夫婦漫才はやめてください」
私たちのやりとりを見兼ねた様子のイザベラお姉様がストップをかけた。
「夫婦漫才だなんて、えへへ。夫婦ですって、シリウス様」
「夫婦ではない」
「仲が良いのは良いことですが、会話はそのくらいで。いい具合に緊張がほぐれたところで、広場へ向かいましょう」
今度はアンドリューさんが苦笑しながら会話の終了を促した。
この日常を壊したくなくて、つい作戦決行を先延ばしにしようとしてしまったが、そんなことをしていても何も解決しない。
「ああ。では行くぞ」
シリウス様のかけ声で、私たちは広場へと出発した。
* * *
広場に到着すると、広場ではすでにシリウス様の使用人たちが待機をしていた。
それに広場には使用人以外の人間も大勢いた。
彼らはパンの入ったバスケットを持つリアの前に並び、パンを購入しているようだった。
予想外の事態にリアは困惑しているようだったが、広場に大勢の人間がいることは好都合だ。
ちなみにパンの販売を手伝っているピーターの頬は、真っ赤に腫れている。
マリーさんに殴られたらしいが、一体どれほどの力で殴られたのだろう。
私は広場の中央に立った……が、目立たない。
背が低いこともあり、遠くから私の姿が見えるとは思えなかった。
イザベラお姉様も私と大して身長が変わらないから、きっと同じ結果になるだろう。
私は広場の中央からシリウス様の元へと向かうと、踏み台の作成をお願いした。
するとシリウス様は、近くに倒れていた木をあっという間に安定した木の踏み台へと変身させた。
さすがはシリウス様だ。
ついでに出来上がった踏み台を広場の中央まで運んでくれた。
シリウス様、さすがな上に優しい。
さっそく踏み台の上に乗ると、さっきよりもずっと景色がよく見えた。
周りからも私の姿がよく見えることだろう。
すでに何人かは奇妙なことを始めた私をちらちらと見ている。
一つ深呼吸をした私は、持って来た『オトナリさん』を起動させた。
さあ、準備は整った!
――――――――――――――――――――
ここまでお読みいただきありがとうございます。
応援もありがとうございます!
ついに最終章です。
ぜひクレアとシリウス、そして彼らに関わったみんなの結末を見届けてください。
最後まで『ちょっとズレた死神と幸せに暮らす人生設計もアリですよね?~死神に救われた何も持たない私が死神を救う方法~』をよろしくお願いします!
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