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18,一触即発に間抜けな声

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(あぁもう、クソすぎるだろッ!)
 数刻前までは平和だったというのに。穏やかだった空気はまるで氷のように冷たくなっている。
 お互いに剣を構えて向かい合う。その瞳には殺気しかない。
「…だから婚式を盛大になんてしなくていいだろうと申し上げたのに」
 はぁっとため息をついたフェロンに、モランが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「まさかこんな事になると誰が想像する」
「宰相のくせに役に立たねぇのな、アンタ」

 けれどまぁ、仕方ない。
 まさか皇国がこの結婚式を狙って我が国に入り込むなど誰が考えただろうか。
 エルステーネ達は無事、逃げただろうか。
 そんな事を考えて、今にも襲い掛かりそうな雰囲気にお互いが睨み合っていた。




 どうしてこんな事態になっているのか。それは、裏門の警備をしていた兵士が死体と化していた事から発覚した。致命傷となった傷口の切り傷は、皇国特有の剣のものだった。
 死後随分と時間が経っていることを考えると、城の随分と奥まで入り込んでいるのだろう。狙いはただ一つ、王族の首と考えるのは当たり前だ。
 とにかく国王とエリシア、エルステーネを避難させはしたのだが。
「それにしてもまだ王子は見つからないのか!」
 普段から自由奔放な長子のオルゼア王子だが、今回ばかりはその性格を呪うしかない。元々次期国王でありながら公の場にも碌に出ない方だから、顔を知られてはいないだろうがーーふらりとそこいらを出歩かれては困る。
「申し訳ございません!侍女の話では、朝方にふらりと出て行ったきりーー全く音沙汰がないと…い、いつもなら翌日の朝に帰ってくるそうなのですが…」
「あぁもういい!!先に陛下と王女様の安全を確保しろ!いいな!」
「はっ!」
 あぁもう頼むからいつも通り帰って来てくれるなよーー。
 そう願ったその時だ。
「……何者だ」
 城のこんなに奥まで、どうやら招かれざる客が来てしまったらしい。
「…王は何処だ」
「ーー答えると思うか?」
 モランの冷たい声が廊下に響く。と、その瞬間。
「…物騒だな」
 黒い衣装を纏ったならず者達が一斉に剣を引き抜く。ーーやはり、皇国の者か。剣が月の字に曲がっている。皇国特有の剣だ。
「もう一度しか聞かぬ。王は何処だ」
「…それを知る前にお前達にはここで死んでもらおう」
 モランのその言葉で、こちらの兵士も一斉に剣を抜く。
 一触即発の状態となった、その時だった。
「……えーと……これ、どういう状況?」
 間抜けな声がその場に響いたのは。
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