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8 腐れ縁が今世までも
しおりを挟む昔から、彼ーー涼太は私を中心に生きていた。それは自意識過剰でも何でもなく、公認の事実である。危なっかしく生きている幼馴染を優しい彼は見捨てることが出来なかったのだ。
世話を焼いてあれよこれよとしているうちに、気が付けば間抜けな私のお目付役として近所から評判だった涼太との腐れ縁はいつまで続くのだろうと思っていたけれど。
「まさか生まれ変わっても会えるなんて思わないよねぇ…。ってことで、おかわり」
ん、とティーカップを出すと、涼太ははぁっと溜息をつきながら注いでくれる。
「お前な…。顔が可愛くなっても性格がソレじゃ、相変わらず今世でも周りに呆れられてるだろ」
なかなかに失礼なことを言われているが、そんなことはないと思う。
「今の家族はとても優しいし、私がこんなでも受け入れてくれるわよ。それよりアンタ、レバリー大学なんて!どうやって入ったの?万年追試だったのに。裏口入学?」
「万年追試関係ねーよ!! …前の俺もそこそこ花いじってたろ」
「そう…だっけ?」
「幼馴染だよな!!?」
「嘘よ、嘘」
いつもおばさんの手伝いをしていたのをちゃんと覚えている。学校では男のくせに、なんて揶揄されたりもしていたけれど。それでも、テスト期間以外は毎日店にいた。だから私も涼太と遊ぶ時は涼太の家の花屋で、涼太のブーケを作る姿を見ていた。
「……こっちでも色々いじって遊んでたら、教授に見込まれた。それだけだ」
「へぇ。すごいじゃない」
「そうか?運が良かっただけだろ。…てかお前、王子と婚約者って」
思い出したように顔をぐにゃりと歪ませる涼太に曖昧に笑う。きっとまた、心配をさせてしまっているのだろう。
「あー……それは、ほら、さ」
「…花苗。お前、」
「ダメよ。この世界では、私はシルヴィア。貴方はギアン」
「お互い通じりゃそれでいいだろ」
「外で咄嗟に出た時に怪しまれるわ」
それに、彼に会えたのはとても嬉しいけれどーー昔を懐かしんでいるほど、今の人生に余裕があるわけでもない。
「…わかった。お前の言う通りにする」
「ありがとう」
それにしても、と涼太ーーギアンが問いかけてくる。
「ずっと当たり前のように適応してたけど、なんなんだこの世界?日本の未来の姿って訳でもねぇだろーし…」
きた、この質問。さて何と答えるべきか。私だって何も知らない彼の立場なら、当たり前ながら不思議に思うだろう。
少しだけ恥ずかしいけれど、手始めに今の私の現状と、ゲームのストーリーについて話した。
殿下は私以外のヒロインと恋に落ちること、私は悪役で当て馬役だということ。今世の私は優しい両親と兄に恵まれていること。今のところ、国外追放されないように予防線を張る準備をしているところなど。
全て話し終わった時、ギアンはーー。
「………いや、そこまで分かっててなんで婚約なんかしてんだよ!!?」
安直な質問。だがしかし。
「だって運営がくれたリアリティゲームライフが目の前にあったんだもん!!!!!仕方ないじゃん!!!!」
「意味わかんねぇよ!!」
またもや鉄拳を食らいました。
解せぬ。
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