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第3章:第4節

605号室にて

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時刻午後八時頃____


あの後学生寮に帰宅して夕食を済ませて、私はキッチンにて食器を洗っていた。


「ヴァンパイアハンターであるはずの貴女が誰かにつけられていることを気付けないなんて………」


セレスはリビングで机を拭きながら、食器を洗っている私に声を掛ける。


「……私でも気付かないことはあります。ヴァンパイアハンターである以前に一人の人間でもありますから。」


全ての食器を洗い終えて、私は濡れた手をタオルで拭き取りリビングへと向かう。


「それに……この前もありましたから」
「……この前?」
「跡をつけられていたんです。ジェレマイアという男に。」
「____それ、今初めて聞いたんだけど?」



怒気を混じるその声を聞いて私は恐る恐る顔を向けるとセレスから異様な圧力を感じ取り、いつものお嬢様口調から男に戻っていた。


「どういうことか、説明しなさい!!」



中性な容姿に反して憤然とした面持ちで睨んでくるので、言わなきゃよかったと後々後悔しながらも私は、渋々この前の出来事をセレスに説明した。


※※※※※※※※※※


「……厄介な相手に目つけられてしまったわね。」


セレスは思い詰めた表情を浮かべて頬に手を添えて溜息をつく。



「まぁ、確かに厄介ですが相手はヴァンパイア。私の手にかかれば問題ないです。」
「ヴァンパイアのワタクシが言うのもアレですけど、気配に気付けなかった貴女が言うセリフですの?」
「う…………ぐうの音も出ない」


セレスに急所を突かれて私は言葉を詰まる。確かにあの時私は、ジェレマイアの気配に気付けなかったので、皮肉だが神無月がいなかったらどうなっていたか。


「相手が上級のヴァンパイアだったから、気付かないのは無理ないんじゃなくて?」
「……………」


確かに上級のヴァンパイアは他のヴァンパイアと比べて理性もあり、気配にも敏感だ。ヴァンパイアハンターに対する警戒心も強いため、一定の距離を保っていれば例え凄腕のヴァンパイアハンターでも気付かない可能性はあるのだが、それは"一定の距離を保っている"場合は、だ。


(あの時は一定の距離ではなかった。)


この前の出来事を思い出し、ふてくさそうな表情を浮かべる。神無月には気付いてヴァンパイアハンターである自分が気配に気付かないとは致命的である。


____疑いたくないけど、能力が低下してる?



自身の能力の危機感を感じているとセレスは恐ろしい形相のまま私を見据える。


「とにかく、外出の時は必ず誰かと同行した方が良さそうね。と言うか、絶対同行よ!!」


セレスは念を押すかのように私に指差してビシッと言い放った。






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