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第2章:第4節

意外な人物にバレてしまいました

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和乃恵町から帰ってきて三日後、私が部屋に閉じこもって夏休みの課題をしていた。


(……誰だろう?)


時刻は午後七時四十五分にて玄関からノックする音がしたので、席を立ち上がり部屋を出ようとしたら隣の部屋からドアを開ける音がした。


どうやらミナトが部屋から出たので私は席に戻って課題を再開する。



この時期は既に私とミナト以外の生徒は帰省しているため、ノックする相手が限られていた。


(ミナト以外の攻略対象達は帰省してるはずだし、濱田さんかな?)


そう思って、課題を再開するとコンコンと私のドアが叩く。


「スピカ。濱田さんがお前に話があるそうだ。」


ドア越しでミナトが私に話かける。ちょっと待って、とミナトに言って、服装を整え始めてから部屋のドアを開けた。


「よう、藤野!」


リビングの向こうから見える玄関から、濱田さんがひょこっと顔を出して私はリビングを通り過ぎて玄関まで歩み寄る。


「濱田さん、僕に何か用ですか?」


濱田さんの服装は赤のスカルTにダメージジーンズを着こなしていて、ヤンキー顔でその服装はぴったり合っていた。



「ああ、用はあるがよ……此処だと話しづれーから場所変えていいか?お前と二人で話がしたい」
「は、はい………」


濱田さんは人差し指で頬をかきながら、神妙な顔つきで私に尋ねられる。



「香月!藤野借りるけど、構わねぇよな?」
「…………はい」
「………藤野、俺について来な。」


ミナトに了承を得ると濱田さんは歩き出す。私は濱田さんの後ろについて行き、学生寮の廊下をスタスタと歩いていく。


※※※※※※※※※※


暫くして学生寮内に歩くと濱田さんはドアの前に立ち止まり、ガチャとドアを開く。


「濱田さん此処は?」
「寮長室、俺が今住んでる部屋だ。」


濱田さんは先に入るよう促し、寮長室に足を踏み入れる。


寮長室は私が住んでる部屋と違い、玄関から見えるリビングは畳の部屋になっていた。私は靴を脱いでリビングまで歩く。



「ここでなら、誰にも入れねぇな。」


その後、濱田さんが寮長室に入るとガチャリとドアを閉めて内側の鍵をロックした。



「あの、僕がいるのに何故鍵をかけたんですか?」
「基本この部屋は俺からの呼び出し以外は入れねぇんだ。ここには学生達の大事な情報が入ってるからな。部屋の出入りの際は鍵をかけることは義務付けられている。」


用は、個人情報を盗まれないようにするため鍵をかけているのか。


「お茶を入れてくる。立ちぱっなしもあれだから適当に座れよ。」


そう言って濱田さんはキッチンに行って、お茶を入れ始める。私はテレビの横で座布団の上に正座してジッとしていた。


(なんだろう、私に話って………)


寮長室に連れて来るぐらいだから恐らく、重要なことに違いない。


「藤野お前、ここにきてどれくらい経つんだ?」
「もう少しで三ヶ月になります。」
「三ヶ月か…………」


キッチンから濱田さんがお茶を運びながら出てくる。入れてきたお茶を私のところに置いて、その向かいに自分のお茶を置く。


濱田さんは私の向かいによっこいせと胡座をかいだ。


「お前、ここに来るまで海外にいたそうだな。」
「そうですね。十二歳から海外にいました。」


この世界にとって十二歳は、ヴァンパイアハンターの見習いとして入団出来る年齢。それまでは、知り合いが経営してる教会に住んでいた。


「…………それ以前は此処とは別の地域にいたのか?」
「はい、知り合いが経営してる教会で住んでいました。」



そう答えると濱田さんは神妙な面づらで私をジッと見る。


「藤野お前…………大変だったんじゃねぇのか?」


神妙な面づらで普段とは違う濱田さんに私は何故か、心臓がドキドキと鼓動を感じていた。


「そうかもしれません。なんせ異国の地ですし、話をするのも一苦労し…………」
「十二歳から海外でここに戻ってくるまでの六年間…………その細い体でよく耐えたよな」



私が鳴ってるこの心臓の鼓動は、ミナトを見るときのドキドキではない。濱田さんを見ても、なんとも感じていないから。


(なんだろう、この感じ…………)


けれど今感じてるこのドキドキは、不安要素が含まれていた。何故なら私が言いかけた言葉を遮って、濱田さんは重い口調で喋ったから。



「藤野が学生寮にきた時には何の疑いもなかったんだが、この前俺がお前の両肩に触れた時、妙な違和感を感じたんだ。男にしては肩幅が狭いとな。」


視線を逸らさない濱田さんの瞳には悲しみと怒りが混ざりあっていて、その視線に捉えられた私は逸らすことが出来ず、鼓動が速くなり始める。



濱田さんは一旦口を結み、意を決心して私に言い放った。



「……____藤野、お前の過去を調べさせて貰った」
「……っ!?」


神妙な面づらで言われた私は顔を顔面蒼白する。


(私を調べたって、それはつまり…………ハッキング、したの?)


私の鼓動はますます速くなり、背中から嫌な汗が流れてきて体を強張る。


「悪いと思ってたんだが、俺は違和感を感じたらとことん追求するタイプでな……」



濱田さんは言いにくそうに言うが、目は真剣そのものになっていて……



「………細い体で狭い肩幅、そしてさっきの話を聞いて俺は確信した」





そして濱田さんは真剣な眼差しで私に言った。



「藤野スピカお前は____ヴァンパイアハンターのスノーセイレーン、なんだろ?」



濱田さんが放った言葉により私は息を吸い過ぎて視界がテレビの雑音のようにザーッとなり始め……


「……っ……」
「っ!?おい、藤野!?」


慌てて駆け寄る濱田さんを見て私は意識を失った。




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