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第2章:終幕
Grumpy&Philanderer Older Brother ー公爵と従者ー
しおりを挟むヴァンパイア世界のとある屋敷内____
アンティークが強調する部屋にて青年はある人物を待っていた。
一つに纏めた銀色の髪に端整な顔立ち、しなやかな体付きでありながら女々しさは感じられず、紅い瞳が宿っている。
この青年の名はメテオと呼ぶ。彼はこの屋敷を住んでから十年の歳月を迎えていた。
「メテオ様、ショウがお見えになっております。」
コンコンとノックした後、ドア越しから流暢のある声に反応して、メテオは即座に今行くと返事をしてドアを開ける。
白のシャツの上にジレとネクタイ姿でコツコツと赤いカーペットの上に歩き、玄関へと向かう。
玄関に辿り着いて、二階に繋がる大階段を降りて行く。
「久しぶり、メテオ」
玄関の先には、一人の青年がニコッとはにかんでメテオに目を向ける。青年を目にしたメテオは無表情のまま、青年のところへと歩み寄った。
「ショウは相変わらず、何も変わってないな。」
そう言ってメテオは腕組みをして青年…ショウに目を向ける。
「そりゃ、俺は純血のヴァンパイアだから見た目変わらないのは当然だよ。」
「……とりあえず、屋敷に入れ。」
メテオはショウに屋敷に入るよう促して、青年は屋敷に足を踏み入れた。
暫くして二階の通路を通って行く。周りにはメテオとショウのみで誰もいない。メテオが事前に誰も近付くなと命令を入れていたためである。
「メテオのその無表情と言い草、直した方がいいと思うんだけど?」
「それは無理だ。俺は生まれた時から、表情が乏しいからな。」
自身の部屋に辿り着いてドアを閉めると早速、ショウがメテオの仕草を指摘していた。メテオは無表情のまま、ショウに返答する。
「ショウ」
「……何でしょう?"公爵殿"」
メテオのオーラがガラリと雰囲気が変わり始め、それを読み取ったショウはメテオの呼び名を変えた。
「俺はまだ公爵と呼ばれるのは些か、早いと思うが?」
「……もうすぐ社交界で顔を出すことになりますので、今のうちに呼び慣れた方がいいかと。」
ショウもまた雰囲気を変わり、ちゃっかりした喋り方から丁寧な喋り方へと変わる。
「ジェレマイアに何か不審な動きはあったか?」
「今のところ動きはありませんが、イケ好かない男ですよ。二つの顔を持っていますし、何よりも皆の前では兄君を忠実に従う弟のフリをしてますから。」
「……だろうな。俺も初めて会った時から、あの男の目は完全に濁っていた。あれはもう正気ではない。」
メテオはジェレマイアに初めて対面した時、彫りの深い引き締まった顔たちで落ち着きのある容姿であったが、その時のジェレマイアの目は濁っていて、メテオに対して口では褒めていたが軽蔑な眼差しをしていた事を思い出していた。
「あの男の僻む顔を毎日見なければいけないのかと考えるとゾッとします。ああ早く、公爵殿のところに戻りたいです!」
「気持ちは分かるが、これは叔父上の命令だから致し方あるまい。だが…………」
メテオは腕組みをして瞼を閉じて重い溜息を吐く。
「あの男が俺のもう一人の叔父だと考えると腹ただしい。」
「……まぁ、血縁上はそうなりますね。」
メテオの愚痴を聞くショウは哀れな眼差しを向ける。
「ですが、あの男の面影が見えなくてホッとしています。公爵殿はウォルフレッド様の面影が見えて凛々しくなられて。その姉君はナタリー様に瓜二つで、可憐なお方でした。」
「……ちょっと待て。最後の言い方まるで、姉さんに会ったと言ってるように聞こえるが?」
鋭いですね、と言ってるかのようにショウの目は愉しんでいて、それを見たメテオは無表情のままで、どういうことか説明しろと射抜くような目で訴えた。
「この前人間界でね、俺が経営してるお店に姉君が来ておりましたよ。」
「………そう、か。」
戸惑う声とは裏腹にメテオの顔は何処か安心な表情を浮かべる。するとショウはその一瞬を見逃さなかった。
「メテオ様もそういうの出来るじゃないですか!」
「……何のことだ。あと、ショウから様付けで呼ばれるのは虫唾が走る。」
「素直じゃないですね~。あと何気に酷いですよ!」
メテオはすぐに無表情に戻してムッと眉にシワを寄せれば、ショウはやれやれと肩を竦めた。
「俺はこれであの男に戻りますよ。まだ任務の途中ですので。」
「玄関まで見送ろう。この屋敷の主人として客を見送るのは当然の礼儀だろう。」
「俺は貴族ではありませんので、気を遣わせないで下さい。"我が主人殿"。」
そう言ってショウは歩み寄るメテオを制して、ガチャっとドアを開けて部屋から出て行く。
「………………」
自分の部屋で一人になったメテオは書斎室に入って、机と睨み合うように書類に書き始めた。
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