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第1章:第1節

攻略対象一人目 桃野凪

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「ねぇ」
「はい、何ですか?……って、先生が質問は後に聞けって言われてましたね。僕に何か質問ですか?」 


休み時間、読書していた私は桃野に声をかけられる。


「確かに質問はあるけど、まず自己紹介してもいい~?」
「……どうぞ」


桃野は大胆に表現して首を傾げる。


________桃野凪、由奈の攻略対象の一人で栖蘭学園の三年生。


身長は157㎝と男性平均身長よりやや低めで小悪魔系キャラ。
どんな相手に対しても人懐っこく、神楽先生をあだ名で呼んだり、時にいじり倒しても怖いもの知らず。
髪は明るい茶髪で目元はクリッとしている。


前世では桃野凪は「BLOODYPRINCE」シリーズの攻略対象の中でトップ3になるほど、人気があるキャラ。



ゲーム上でも桃野凪は他の攻略対象と比べ、体を使って表現する場面が多い。言わば無邪気なのだ。




前世で大抵は、桃野凪が大好きって言う人が多かったが、私はどちらかと言うと苦手だ。


嫌い、ではない。"苦手"、である



何故なら桃野凪は、私の推してるキャラを毛嫌いしてるし、推しキャラのバットエンドでは桃野凪はヤンデレになって、主人公殺そうとしてたから。


けど、どの結末になるかは、主人公である由奈次第で………


私はどの結末になっても対処しなければならない。


(由奈がバットエンドとかそんなこと、この私がさせないけどな!)


「僕、桃野凪って言うんだ~。」


ええ、知ってますとも。


「僕は……さっき自己紹介してたので、ご存知でしょう。」
「えっと………藤野スピカちゃん?」
「確かに合ってますが、何故間があるのですか?聞いてたのならその間はいりません。そして何故疑問形なんですか?」


藤野スピカはヴァンパイアに対して、毛嫌いしてるため容赦しない。相手がヴァンパイアと分かると、隙を与えないようとことん攻める。


(藤野スピカとして接しないとストーリーを変わってしまう恐れが……!)


予想していたエンドが全部違っていたらそれこそ、お手上げ状態だ


「ス、スピカちゃんってさ……ドSなんだね。」


確かにサポートキャラであるスピカは、ヴァンパイアに対して、冷たくあしらうがドSではない。ゲーム公式でも、ドSとは一言も書いてないのだ。


「この僕がドSですか………初めて言われましたよ、桃野君」
「凪」


小悪魔系キャラである凪が真剣な顔で私を見る


「…凪君」
「君付けダメ!」


おい、君付けダメなのか!?


「僕のこと、凪って呼び捨てにして!学年同じなんだから~」


そう言って凪はコロッと表情を変え、目をウルウルにして私を見る


「…分かりました。凪、僕のことも呼び捨てにして頂けますか?出来れば"ちゃん"付けなしで。」
「え?なんで~?」


いや、なんでって………


「凪が自身のことを呼び捨てにしてと、さっき仰いました。ならば僕のことも呼び捨てにしてもらわないと不平等かと、今度、僕のことを"ちゃん"付けで呼んだら無視しますのであしからず。」


淡々と流暢に口にした私は凪を見て眼鏡をクイっと上げる。


「……そろそろ美術室に移動しなければ」


チラッと時計を見て私は席を立つ。


「あっそうか!スピカちゃんは美術を選んでたんだ。あー、僕も美術にすれば良かったな~」


凪が喋ってる間に私は扉の前に立ち、扉を開ける。


「って、スピカちゃん。僕を無視しないでよー!」


藤野スピカとして接すると決めているので当然、無視する。


「スピカのドS!」
「……僕はドSではありません。それと僕のこと呼び捨てにしましたね。分かって頂いて光栄です。凪」


そう言って私は美術室へと移動した。




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