僕が可愛いって本当ですか?

さよ

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本編

ばく 1

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 手をたどって視線を移すと、デンドルムが怪訝な顔をしてヒューを見ていた。

「……何の用だ?」
「逃げたと思って追ってきたが……お前、顔色がわりぃぞ。……それに、あの黒髪の子はどうした?」
「……目が覚めないんだ」
「は? 何かあったのか!?」
「それは……」

 これまであったことを聞いたデンドルムは、すぐに幸多のもとへ案内するよう言った。
 部屋へ入って眠ったままの幸多に手をかざし、じっと何かを見る。悲しげに顔を歪めたヒューは結果を待った。

「眠りがかかってんのは予想してた。……この呪いはなんだ? 何でもぶち込みゃ良いってもんじゃないんだが……変な物使われたなぁ」
「どうしたら治る?」
「ここじゃあまともに回復もできねぇ。オレの家へ行くぞ」
「……わかった」

 幸多を抱きかかえたデンドルムに続き、ヒューは宿を出るため鍵を返しに向かった。

 デンドルムの活動地域は別にあるが、ハルーファスには使用していない大きな家を持っている。
 魔王の座を狙った者達の争いで、一度大きな被害に遭った場所がある。そこは中心地から離れており、弱い者が多く住んでいた。
 怪我人は増える一方で、治癒できる者も減り、目を覆いたくなるような状態だった。

 偶然ハルーファスに来ていたデンドルムは無視することもできず、助けるために全力で魔法を使った。
 亡くなった者も少なくない。それでも戦いが終息し、残った者達が悲しみに暮れながらも立ち上がって再び村をつくり上げていった。
 ハルーファスから離れて数十年、再び訪れると何やら「あなたに助けてもらった」と言う夫婦に屋敷へと連れて行かれた。これは、あのときのお礼なのだと。
 いらなければ売ってもいい。貰ってくれと譲らない夫婦に根負けした。

「ここならゆっくり過ごせる」

 広い廊下を抜け、幸多をベッドへ下ろしたデンドルムはすぐさま解呪に取りかかった。眠っているだけならば状態異常を回復するだけでいいが、余計な物までくっついている。
 呪いを解く薬を何個も生成し机へと置いていく。何度かにわけて摂取させないと、幸多の体には負担になるかもしれない。

 小さなガラス瓶に入った液体が揺れるのを見つめ、ヒューは今か今かと待っていた。

「オレが回復をかけるから、お前は幸多が起きたら薬を飲ませろ」
「ああ」
「少しずつ呪いを薄めていく。目覚めても呪いのせいでまた眠りに入るが、一日一回、薬を飲ませていれば七日もすりゃいつも通りに生活できるだろ」

 その指示に従って目を覚ました幸多に薬と水を飲ませる。数秒で、また眠りに落ちた。

「話がある。落ち着いたら広間に来い」

 そう言い残しデンドルムは出て行った。
 幸多の頬を触り、頭をなでる。寒くないようしっかり寝かせ、じっと見つめたヒューは名残惜しそうに離れて広間へと向かう。
 しんと静まりかえった廊下にヒューの足音だけが響いていた。

 椅子へと座り長い沈黙の後デンドルムに言われたのは、オレも幸多の夫になりたいから口説く時間をくれ、という内容だった。

「夫が増えるのは嫌だってのはわかる。だが、幸多が怪我や病気したときはどうすんだ? お前、治癒系は全く役に立たねぇだろ」

 悪い話じゃねぇと思うがなぁ、と。ヒューだけでは不安が残る。いくら強くとも、今回みたいに何かあったらどうする? デンドルムがいたほうが良いのではないか。
 ぐるぐる考え込むヒューは、渋々ながら条件付きで許すことにした。
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