異世界からしか開きません

さよ

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零れ落ちる 1

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 相手の話も聞きながら、どんな場所で生きていたのかなど細かく話した。
 アカツキは私の方が年上ということに一番驚いていた気がする。彫りの深い顔が多いみたいだし、若く見えるのだろうか? あの家自体が別世界にあった物だということにはあまり反応していなかった。何でよ。一番驚くところはそこじゃないの?

 この世界に関してはあまりにも知らないことが多すぎて、旅をしながら少しずつ覚えることになった。
 アカツキと話し合った結果、記憶喪失という設定で仮の登録をする。数週間前にどこかの村が魔獣に襲われ死者が出たとのことで、そこから逃げてきたのではないかと思われたらしい。書類の確認をしていたお兄さんに、頑張れよ、と肩を軽く叩かれた。

 記入するのはアカツキで、私の名前や諸々を書き込んで提出していた。一定期間、問題を起こさなければ仮が外れる。
 何かあればアカツキが責任を負うことになるので、気をつけなければならない。危ないことに自ら首を突っ込む気はないが、何が原因でどう転ぶかもわからないので慎重に行動しよう。
 魔法で特殊な加工がされているカードを受け取り、旅に必要な物を買うためお店へ向かった。

「あの部屋からは出られないものだとばかり……」
「私の方からは開けられなかったし、間違いではないと思う」

 お店まで雑談しながらアカツキの背中を見失わないように着いていく。
 野宿で使う物などは詳しくないのでアカツキに確認しながら購入し、替えの服はなるべく値段の安い物を店員さんに聞いて買った。買うときに、こっそりと下着も数枚一緒に持つ。
 お金については事前に教えてもらっているので、モタモタしながらも支払うことができた。全てアカツキのお金なので、なるべく早く働いて返せたらと思う。まずはこの世界の常識を覚えることからですけどね……。

「私は今のところ思いつかないけど、これで全部?」
「何か必要な物があれば後からでも大丈夫だ。代用できる物は俺のをつかえば良い。……これはカナコに渡しておく」

 小さめのナイフを取り出し私へと差し出す。アカツキは別で持っているそうなので、私のために選んでくれたらしい。ないよりは持っていた方が良いと言われた。ありがとう、と受け取ったナイフを自分のリュックへしまい込む。
 再び歩き出した私たちを照らすのは夕日だ。あちこち見て回ったので買い物で一日が潰れてしまった。もう一日この町にとどまって、明日発つ。

「帰る方法を探すのなら、途中で情報収集もしつつ都心の方を目指すか」
「地図を見ても何が何だか……アカツキに頼りっぱなしになっちゃうね……。でも、魔法は任せて! 練習して使いこなせるようになるから!」

 そう、驚くことに私には魔力があった。魔石や魔道具を売っているお店で簡単にだが確認できる道具がある。自分にはないものだと思っていたから、魔力があることに喜んだ。それも結構多いらしい。
 本を買う余裕はないしアカツキに教わりながら、わからないところは独学で頑張ることにする。
 魔法陣を使うような物は専門用語やら複雑で難しそうだったので、たまに魔力でゴリ押しになるかもしれないけどそこは許してほしい。魔法は想像力が大事、そこから始めます。

 宿に戻り、夜は魔力を使う練習。明日は早く起きなければいけないし、早めに切り上げて眠りについた。

◇ ◇ ◇

 町を出て歩き始めてしばらくすると、自分の体力のなさを実感する。息は上がり足は痛い。運動もサボり気味だったのだから当たり前だろう。今更後悔しても遅い。
 物語であるじゃない、身体強化とか浮いて移動するの。

(何で、できないかな……!? 想像できてない? もっとゲームも遊ぶべきだった!?)

 箒に乗って飛ぶことはできたのに。私は、魔女で飛ぶと言ったらそのイメージが真っ先に思い浮かぶ。だからか?
 箒はお掃除を終わらせたおばちゃんに頼んで貸してもらった。こっそり練習してみたらなんとかなっちゃって……でも、箒だと股が痛いのよ。横座りしたら落ちそうで、すぐにやめた。

 まあ、何かに乗って移動というのは目立つので結局使えないんだけど。上空を飛んで何かにぶつかったり攻撃されても自己責任だし。そもそも飛べる人がいるのかもわからない。

「……ここら辺で休憩するか」
「ごめん」
「慣れていないんだろう? 無理をするよりはいい」

 その後も何度か休憩を挟みつつ、ゆっくりとだが目的地へと近づく。一日では着かないので数日かけて歩いた。
 村へ着いた日は倒れるように眠りにつき、翌日聞き込みをしてみたが特に情報は得られず。一つ目の村だし、そうすぐ見つかるとは思っていない。

 体力が回復するまで休んで、村を出た。
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