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世界は閉じる
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誰もいない日々に戻り、ソファーに寝転ぶ。アカツキやヴァレッドのことを思うと、ベラもまた来るんじゃないかと待っていた。
だが何日過ぎようともドアは開かない。食べて寝るくらいしかやることもない。本も同じ物を何回読んだことか。興味のない物にまで手を出した。真剣に読んだわけじゃないから、どこまで頭に入っているかは不明だ。
全ての部屋を見て回って、思いつく限り調べ尽くして、何もすることがなくなった。
「同じことの繰り返しだ……」
そう呟いて玄関へ向かう。何度やっても同じことなんだけど、気が済むまで続けたい。
ドアノブをガチャガチャ動かしても開く様子はない。
「っ……え?」
ダメ元で体重をかけドアを押したとき、体が前へ傾いた。慌ててドアノブを離し、倒れないように数歩進むと何かにぶつかる。
「……カナコ」
「は、え? あれ?」
名前を呼ばれたがそれどころではない。
急いで振り返ると、手を離したドアはサラサラと砂のように消えていく途中だった。そこにあるはずの実家はもうほとんど消えていて、知らない部屋が見える。
最後にドアノブが崩れ全て消えたのを見て、もう帰れない、と思った。元の世界へ帰る方法はあるのだろうか。
開いたドアから中へ入ってみても、見たことのある景色には戻らない。
肩を落とし、うつむいた。そのまま振り向き顔を上げて、いつの間にか近くにいた人物に驚く。
「だ、誰……」
「アカツキだ。覚えているか? ……このネックレス、持ってきてしまって。すまなかった」
「アカツキ……?」
首元で持ち上げられたチェーンの先には見覚えのある形。色はくすんでいるが、私が持っていたネックレスと同じに見える。
男を見れば、紺色の髪に水色の瞳はアカツキそのままだった。以前と違い、髪は短くなっている。
内側からは動きもしなかったし、きっとアカツキがドアを開けたと同時に私が開こうとしたのだろう。望んでいたこととはいえ、いざこちらへ来ると何をして良いのかわからない。
「帰れないし……」
「帰れない?」
視線をそらし室内を眺めながら言った私を見て、ネックレスから手を離したアカツキは首をかしげた。
「うん。多分もう……帰れない」
「……行くところはあるのか?」
「ないなぁ。ここがどこかも知らない。この世界のこと全然わかんないや」
苦笑いした私にアカツキは手を伸ばし、頬をなでた。
「それなら……俺と一緒に来れば良い。帰る道を探したいのなら、ともに旅をしよう」
「何で助けてくれるの?」
「俺が助けられたから」
「…………きっと迷惑をかける」
「いくらでも」
じっと私を見る目がそらされることはない。
「この世界のことを、教えてほしい。……一年、旅に付き合ってくれる?」
「一年で良いのか?」
「うん。決めておかないと、ズルズルといつまでも探しちゃう」
「……わかった」
アカツキは頬から手を離し優しく笑った。初めて見たその表情にドキッとする。知っている男の子が、知らない男の人になっていた。
ネックレスを外して差し出したアカツキに言う。
「あー、アカツキが持ってて。いらなかったら捨てるか、売れるなら売っちゃって良いし」
無言でいたアカツキだったが、軽く頷いた後自分の首に着け直した。
私が着けるにしても色が合わなくなってしまったし、これからお世話になるなら売って少しでも足しになればと思う。
「これからよろしくお願いします」
「ああ」
今いる建物は宿屋らしい。通りがかった宿の従業員に人数の変更を伝えて部屋へ入る。
まずはお互いの状況を知るために話そうと、ドアを閉めて椅子に座った。
だが何日過ぎようともドアは開かない。食べて寝るくらいしかやることもない。本も同じ物を何回読んだことか。興味のない物にまで手を出した。真剣に読んだわけじゃないから、どこまで頭に入っているかは不明だ。
全ての部屋を見て回って、思いつく限り調べ尽くして、何もすることがなくなった。
「同じことの繰り返しだ……」
そう呟いて玄関へ向かう。何度やっても同じことなんだけど、気が済むまで続けたい。
ドアノブをガチャガチャ動かしても開く様子はない。
「っ……え?」
ダメ元で体重をかけドアを押したとき、体が前へ傾いた。慌ててドアノブを離し、倒れないように数歩進むと何かにぶつかる。
「……カナコ」
「は、え? あれ?」
名前を呼ばれたがそれどころではない。
急いで振り返ると、手を離したドアはサラサラと砂のように消えていく途中だった。そこにあるはずの実家はもうほとんど消えていて、知らない部屋が見える。
最後にドアノブが崩れ全て消えたのを見て、もう帰れない、と思った。元の世界へ帰る方法はあるのだろうか。
開いたドアから中へ入ってみても、見たことのある景色には戻らない。
肩を落とし、うつむいた。そのまま振り向き顔を上げて、いつの間にか近くにいた人物に驚く。
「だ、誰……」
「アカツキだ。覚えているか? ……このネックレス、持ってきてしまって。すまなかった」
「アカツキ……?」
首元で持ち上げられたチェーンの先には見覚えのある形。色はくすんでいるが、私が持っていたネックレスと同じに見える。
男を見れば、紺色の髪に水色の瞳はアカツキそのままだった。以前と違い、髪は短くなっている。
内側からは動きもしなかったし、きっとアカツキがドアを開けたと同時に私が開こうとしたのだろう。望んでいたこととはいえ、いざこちらへ来ると何をして良いのかわからない。
「帰れないし……」
「帰れない?」
視線をそらし室内を眺めながら言った私を見て、ネックレスから手を離したアカツキは首をかしげた。
「うん。多分もう……帰れない」
「……行くところはあるのか?」
「ないなぁ。ここがどこかも知らない。この世界のこと全然わかんないや」
苦笑いした私にアカツキは手を伸ばし、頬をなでた。
「それなら……俺と一緒に来れば良い。帰る道を探したいのなら、ともに旅をしよう」
「何で助けてくれるの?」
「俺が助けられたから」
「…………きっと迷惑をかける」
「いくらでも」
じっと私を見る目がそらされることはない。
「この世界のことを、教えてほしい。……一年、旅に付き合ってくれる?」
「一年で良いのか?」
「うん。決めておかないと、ズルズルといつまでも探しちゃう」
「……わかった」
アカツキは頬から手を離し優しく笑った。初めて見たその表情にドキッとする。知っている男の子が、知らない男の人になっていた。
ネックレスを外して差し出したアカツキに言う。
「あー、アカツキが持ってて。いらなかったら捨てるか、売れるなら売っちゃって良いし」
無言でいたアカツキだったが、軽く頷いた後自分の首に着け直した。
私が着けるにしても色が合わなくなってしまったし、これからお世話になるなら売って少しでも足しになればと思う。
「これからよろしくお願いします」
「ああ」
今いる建物は宿屋らしい。通りがかった宿の従業員に人数の変更を伝えて部屋へ入る。
まずはお互いの状況を知るために話そうと、ドアを閉めて椅子に座った。
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