アリス様の仰せのままに

秋鹿たいてぃー

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夢にうなされて

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『おぉーいメビウス~』
階下から二階の自室で眠るメビウスを起こす。マリアおばさんは朝食作りに忙しいからお寝坊さんを起こすのは先に起きた方。だいたいは僕なんだけどね。お寝坊さんのメビウスを起こすのはクラインの日課になりつつあるぐらいの勢いだし。

『もう。メビウスったら。いつまで寝てるのさ』

一つため息をつきながら階段を上がる。メビウスの部屋は階段を上がって左側にある。ちなみ僕の部屋は階段を登って右側。丁度メビウスの部屋の向かって反対側にある。
 コンコンコンとノックをする。メビウスはノックには口うるさい。以前ノックを2回した時は「失礼ね!2回のノックはトイレの中に人が居るか確認する時にするものなのよ!今度からはノックは3回にして頂戴。勿論ノックをしないのもダメよ!少女おとめの部屋に入るんだからそれ位は当然よ!」と叱られたのだ。ちなみに今のノックの返答は無い。ノックしても起きないんだったらノックの意味無いじゃん。でも、もし起きてた時のためにノックもするし、返事がなくても声は掛ける。

『入るよ~?』

メビウスの部屋はいつ見ても綺麗に片付けられている。ノックの回数を気にするくらいだから、綺麗好き、というよりも神経質なだけなんだろうけど。メビウスは横向きに寝ていた。

『メビウス~ご飯冷めちゃうよ~?』

あまり力をいれずに揺さぶってみる。メビウスはベットの上で気持ちよさそうに寝ていた。いや、メビウスはこちらに背中を向けて寝ているので気持ちよく寝ているのかどうかはわからないけど、なんとなくそう感じたのだ。もう一度、今度は少し力を入れてメビウスの身体を揺さぶる。大抵はいつもこれで起きるんだけど、おかしいなぁ。今度は大きく揺らしてみた。___すると、今までこちらに背中を向けて寝ていた身体がバランスを崩し、あお向けになった。

『…!』

びっくりした。別に驚いたのはメビウスがあお向けになったからではない。メビウスの目から涙が零れていたからだ。小さい頃からずっと暮らしてきたけどこんなに弱々しく涙を流すメビウスは多分、初めて見る。

『…………ドレ…』

寝言だろうか。泣きながら眠るなんて、なにか悲しいことでもあったのかな。それとも何か怖い夢を見ているのかな。

『…マー…ドレ………行かないで…マードレ…』

マードレとはお母さんという意味だとこの前メビウスが言っていた。僕は産まれて半年位でマリアおばさんに引き取ってもらったけどメビウスは2歳くらいの時に引き取ってもらった。だから僕と違ってお母さんへの思いは強いのだろう。

『お母さんを思い出してるの?メビウス…』

メビウスの手を握る。僕にはそれ位のことしか出来ないし、このままじゃメビウスが何処かに行ってしまうように感じたから。




朝食を食べる頃にはメビウスはいつも通りだった。そんなメビウスを何故か不安に思ってしまって朝ご飯は食べた気がしなかった。
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