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130話・参考になりません

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 今から茨さんが全力を出す雰囲気だが、今までの動きすら参考に出来ているとは言えないのに、これ以上凄くなられてもと内心思ってしまう。

「茨木童子!? 成る程、それならあの強さに納得じゃな」

 茨さんのちゃんとした名を聞いたマオさんが何かを納得する。

「マオさんは、茨さんの事を知ってるんですか?」

「あぁ、その名は有名じゃからな。じゃが。その話は後じゃ。そろそろ決着がつきそうじゃぞ」

「そうだった」

 顔を戻し、これでもかと目を見開き茨さんの一挙手一投足を見逃さないように注目する。

 ドパンッ

 瞬きしたつもりはないのだが、気づけば茨さんが鬼人の懐に潜り込み、腹を貫いていた。
 だが、その一撃に耐えた鬼人の攻撃が茨さんに振り下ろされる。

「茨さん!!」

 咄嗟に心配の声が出たが、

「ラス、全く効いてなさそうだから大丈夫そうよ」

「…みたいですね」

 茨さんは、ピンピンとした様子で鬼人の腕を弾き、腕を引き抜いていた。
 そして、茨さんの一撃であの鬼人の上半身が消し飛んだ。
 圧倒的な一撃に、私たちは言葉すら失っていた。
 正気に戻ったのは、茨さんがこちらへ歩いてきたのに気づいた時だった。

「お待たせ、ラス。私の闘いはどうだった?」

 血塗れの茨さんが、とてもいい笑顔でそう聞いてきた。

「い… 茨さん。まずは、その血を落としませんか?」

「ん? あぁ、そう言えば血で染まってたんだっけ」

 茨さんは、今気づいたとばかりに自分の体に視線を移す。

「あ、でも今は、水もタオルもないんだった」

 しかし、綺麗にする物が無い事に気づくが、

「なら儂が綺麗にするのじゃ」

 マオさんがそう提案してくれる。

「ん? なら、お願いする」

「私からもお願いします、マオさん」

「任せるのじゃ」

 マオさんが魔法を唱えるとみるみるうちに血が消え綺麗になっていく。

「ありがとう」

「ありがとうございます、マオさん」

「このくら別にいいいのじゃ。それに、こちらこそあの鬼人を倒してくれて助かったのじゃ」

「それこそ構わない。私はただラスに力を貸しただけだしね。それより、ラス」

「はい、何ですか?」

「私の闘いはどうだった? 参考になった?」

 とてもキラキラとした目で感想を聞いてくる。

「あの、えっと…」

「うんうん」

「その… 何といいますか…」

「うんうん」

 どう答えるか迷ったが、

「…ごめんなさい、茨さん!!」

「え?」

「私の実力が足らず、茨さんの動きを捉えることが出来なくて、あまり参考になりませんでした」

 誤魔化す事なく正直に答えた。
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