上 下
444 / 447

122話・配下召喚

しおりを挟む
 過去最高だと思える一撃を鬼人に食らわせたのだが、口の端を少し切っただけで、さほど効いた様子がないようだった。
 これ以上やっても、倒すどころか今以上の傷を与えるビジョンすら浮かばないし、強者に対しての私の今の実力も知れたので、ここで策を切る事にした。

「奥の手だと? へぇ面白ぇ。どんな手があるか知らねぇが、待っていてやるからやってみろ」

 鬼人からは、どんな事があっても打ち破ってやるという意思を感じる。

「言われなくてもやりますよ… 茨さん、お願いします。配下召喚!!」

 目の前に複雑な魔法陣が現れ、今の所唯一召喚できる茨さんを召喚する。

「私、参上!!」

 召喚に応じ、目の前の魔法陣から茨さんが現れてくれる。

「茨さん… 「ラス、みなまで言わなくても分かってる。とりあえず、あいつをぶちのめせばいいんでしょ」」

 向こうで鏡を見ていたのか、茨さんは私がお願いする前にやる事を理解していた。

「すみません、お願いしても大丈夫ですか?」

「えぇ、もちろん。任せて頂戴。だから、ラスはあそこの人たちの所まで下がってて」

 茨さんは、普通に鬼人から目を離し、シエルさんたちの方を指差す。

「あ、はい。下がっておきます」

 言われた通り移動しようとした際

「あ、後、参考になるかもしれないから私の動きをちゃんと見てて」

 茨さんにそう言われる。

「はい、分かりました」

 それに返事し、シエルさんのいる場所まで駆け足で下がる。
 後少しの所で、シェーンさんが近寄ってきてコツンと頭を拳骨されてしまう。だけど、痛みは全くなかった。
 そして、どうして拳骨されてしまったのか何となく分かっている為、

「すみま…」

 その事について謝ろうとする前に、シェーンさんにギュッと抱き締められる。

「もうこんな事はしないでね」

「はい。すみませんでした」

 抱き締め返しながら、今度はしっかり謝る。

「シェーン。心配なのは分かるが、その辺にするのじゃ」

「そうですね。急にごめんね」

「いえ、全然大丈夫です」

 マオさんの言葉で解放される。

「それでラスに聞きたいんじゃが、あそこにおる可愛らしいおなごは一体どこの誰なんじゃ?」

 チラッと鬼人と戦いだそうとする茨さんを見ながら何者なのか聞いてくる。

「あの人は、以前にも言った鬼神様の元で修練している方の中の1人です」

「あれがそうなのじゃな。それにしても、儂たちが苦戦したあの鬼人をまるで子供扱いするとは、恐ろしい程腕が立つみたいじゃな」

 マオさんの言う通り、茨さんは、あの鬼人を赤子の手を捻るようにあしらっていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

私の夫が未亡人に懸想しているので、離婚してあげようと思います

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:52,266pt お気に入り:902

公女は祖国を隣国に売ることに決めました。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,140pt お気に入り:98

元Sランククランの【荷物運び】最弱と言われた影魔法は実は世界最強の魔法でした。

EAT
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:151

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:315

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:894pt お気に入り:2,783

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:12,128pt お気に入り:4,087

実力主義に拾われた鑑定士 奴隷扱いだった母国を捨てて、敵国の英雄はじめました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:16,603

処理中です...