上 下
363 / 448

41話・痛感

しおりを挟む
 話は終わったので、シェーンの手をとり部屋を後にした。
 そして、そのまま王城を出て、邪魔にならない位置まで移動して立ち止まる。

「シエル、大丈夫ですか?」

 心配気な様子で、シェーンが尋ねてくる。

「うん、大丈夫だよ。ただ、ちょっと差を痛感しただけ…」

 正直な今の気持ちを伝える。

「そうですか… でも、何だかその気持ち分かる気がします」

「え、シェーンも?」

 そんな感じしなかった為、少し驚いてしまう。

「はい。私では、エリー様たちのように、話を聞いてすぐに、あんな判断をする事は出来ませんから」

「そうだよね…」

 それを聞いて、私だけじゃなかったんだと、少しホッとする。

「やっぱりまだまだだね、私たち…」

「そうですね。ならこれも、逆の意味で考えてみませんか?」

「逆の意味? どういう事なの、シェーン?」

「確かに、シエルが言った通り、私たちはまだまだ未熟だと思います」

「そうね。それで?」

「でも、逆に言えば私たちには、まだまだ成長できる部分があるという事になりませんか?」

「うーん… 言われてみれば、そうかもしれないけど、それって結構無理矢理な考えじゃない?」

「ふふ… 確かに無理矢理な考えですね。でも、それは考え方しだいですよ。それに、『やれると思って行動すれば、やれない事はない。もし、やれなくても、やったという経験はしっかり残ってる』でしょ?」

「それって…」

「えぇ。前にシエルが言った言葉よ。だから、少しずつでもいいから、一緒に成長していきましょう。それに、そっちの方がいつものシエルらしいですよ」

「そうだよね。少しずつ成長していけばいいのよね。ありがとう、シェーン」

 シェーンの言葉で、何が吹っ切れる。

「別にいいですよ。なら今は、危険人物の捜索の方を集中しましょうか」

「そうね。なら捜索する前に、マオとセウンにどうなっているか確認してみるわね」

「そうですね。もしかしたら、もう見つけているかもしれませんしね」

 私は、遠話のブレスレットに魔力を流し、2人に遠話する。





 あの人が止める暇もなく、慌ただしくシエルがシェーンを連れて出ていった。

「あなた、そんな顔してないで、すぐ兵の手配をした方がいいんじゃないの?」

 まだ話足りなさそうな顔をして、扉を見つめていた為、声をかけておく。

「…あぁ、分かってる」

 そう答えて、外に控えていた者を呼び、シエルから聞いた特徴の人物の捜索を手配し、何かあってもすぐ兵を動かせるように集まっておくよう指示を出していた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ヒロインたちと悪役令嬢と転生王子~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,140pt お気に入り:166

婚約者に逃げられた令嬢ですが、侯爵令息に溺愛されています

恋愛 / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:1,947

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

BL / 完結 24h.ポイント:965pt お気に入り:6,648

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,391pt お気に入り:4,824

婚約破棄が始まりの鐘でしたのよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,214pt お気に入り:184

憧れていた王子が一瞬でカエル化した!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:482

処理中です...