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107話・天耳通 3

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 どうやらラスは、スピカの声は聞こえなかったようだ。
 これも、慣れなのかと思った所で、俺はスピカに念話を送る。

"なぁ、スピカ。ひとつ聞きたいんだけどいいか?"

『何?』

"スピカって、鳴く事は出来るのか?"

『鳴く事…』

 スピカはそう言った後、ラスの手の上で口をパクパクさせるが、特に音は聞こえなかった。

『鳴けなかった…』

 スピカも今知ったのか、その声色には驚愕が含まれているように感じた。

"やっぱりそうだったか…"

 思った通り、ラスの天耳通てんにつうが使えなかった理由が判明した。
 俺は、申し訳ない気持ちで、ラスにその事を伝える。





 スピカちゃんを見つめていたセウンさんが、少し申し訳なさそうに、今分かった事を話してくれる。

「そうだったんですね…」

「あぁ。だから今回は、ラスが失敗した訳じゃなく、俺の見解が甘かった。スピカと話せるかもと期待させてしまって悪かったな、ラス」

 セウンさんは、頭を下げながら謝ってくる。
 それと同時に、手の上のスピカちゃんも、もぞもぞっと動いて頭を下げている。

「あ、いえ全然気にしていないので、セウンさんもスピカちゃんも頭を上げて下さい!! それに、スピカちゃんと知り合えただけでも嬉しかったですから」

「そう言ってくれると助かるよ」

「でも、それだとラスの天耳通?とやらは、今は試せないって事なの?」

 後ろで見守っていたシエルさんがそう聞いてくる。

「試せないって事はないと思うんじゃが、試す相手がいないからどっちにしろ今は先送りになるんじゃないかのぅ?」

 シエルさんの問いに、マオさんが答える。
 私も、マオさんの意見に同意する。
 そして、残りの2つを試す事を伝える。
 どちらを先に試すか考えているとセウンさんがある提案をしてくれる。





 天耳通を試すのを先送りし、残っている他心通たしんつう宿命通しゅくみょうつうの2つのどちらかを試す事になった。
 それを聞いて、そうなるわなと思ったと同時に、ふと閃いた事があり、スピカにある事を確認した後、それをラスに提案してみる。

「先に他心通を試すんですか?」

「あぁ。他心通って、相手の考えや心の声が聞こえるんだよな?」

「一応、そうなってますね」

「それなら、ワンチャン、それを使えば、スピカと話せるかも知れないかと思ってな」

「!?」

 それを聞いたラスは、驚愕の顔を浮かべながら、手の上のスピカを見だした。
 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー作者より(捕捉)

 全てのカメレオンがそうだと言う訳ではないですが、カメレオンは鳴かないそうです(たぶん)。
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