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閑話・ラスの過去 16

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「…っ」

 目が覚めると、誰かに背負われていた。
 その背は、ゴツゴツしていたのでお父さんの背だと思ったので、もう一度目を閉じようとした所で、

ズキンッ

 と、首の後ろが痛む。
 その痛みで、先程までの状況を思い出す。
 バッと顔をあげ、背負ってくれている人を見る。
 背負ってくれている人も、起きた私に気づいたようで顔をこちらにむけたので、目が合う。

「起きたかい、ラスちゃん」

 私は、首を縦に振りながら、目の前の人の事を思い出そうとし、すぐに、お父さんやドルフさんの知り合いのエルさんだと気づく。

「えっと俺の事は分かるかい?」

 それにも、首を縦に振る事で答えながら、辺りを見渡しながら、お父さんとお母さんの姿を探す。

 私が、何をしているのか気づいたのか、エルさんは、私の事をドルフさんに頼まれた事、そしてドルフから聞いた両親の事を教えてくれる。
 私は、それを聞いてすぐにでも両親の元へと行こうとする為に、エルさんの背から降りようとするのだが、エルさんは降ろしてくれず、

「駄目だ!! どうして3人がラスちゃんを逃がしたのかよく考えてみろ!!」

 そう怒鳴られた事で、次第に抵抗を止め、涙が溢れてきた。





 強く言い過ぎた感じはあるが、大人しくなってくれた。
 俺は、背中で泣くラスちゃんを落とさないように、他の鬼人たちと離れた場所にある鬼人の村へと避難する。
 一夜明け、まだ心の整理がつかないようだが、ちゃんと言う事は聞いてくれるので、一安心する。
 急いで村へむかって進んでいると、ゴブリンの集団に出くわしてしまう。
 避難する村までまだ距離があるので、戦闘は避けたい所たが、ゴブリンはそんなのお構い無しとばかりに襲ってくる。俺はその対処をする為、先に村までむかうように伝え、ラスちゃんや他の女・子どもを逃がす。





 エルさんは、私たちに先に村へむかうように言いながら、ゴブリンへむかって行った。
 私以外の人たちが走っていく。私はどうすればいいか迷ったが、エルさんから再度行くように言われた為、私も走り出す。
 少しして追い付いたのはいいのだが、他の皆は、止まる事なく走るのでそれについて行くが、体力があまりない為か、次第に離されて行く。
 それでも懸命に足を動かし追い付こうとするが追い付けず、それどころか木の根もとに足を取られ転んでしまう。起き上がった時には既に誰の姿も見えなくなっており、森の中で1人になってしまった。

「っ… っ…」

 息をきらしながら、どうしようか途方にくれていたら、ガサガサっと物音がした。

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作者より(捕捉)

 急な事態に備え、すぐに避難や救援出来るように、村を合併するのではなく、分かれて暮らしています。
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