スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ～今度から新たに出来た仲間と頑張ります～

閑話・ラスの過去 3

　強い衝撃を受けて、私は、地面を転がる。
　やっと止まったかと思い、身体を動かそうとするが、痛いだけで動く気配がない。それ所か、徐々に意識が遠のいていくのを感じる。
　すると、どこからともなく声が聞こえてきて、少し意識を取り戻す。

『転生のチャンスが与えられました。転生しますか？』

　こんな時に、ふざけている奴がいるのかと軽い怒りすら覚える。
　だからなのか、つい心の中で、やれるもんならやってみなさい！！　と思ってしまった。

『了解しました。特典として、スキルを１つ取得出来ます。希望スキルはありますか？』

「お姉ちゃん、大丈夫？」

　ん？
　同時に声が聞こえ、どちら共何と言ったのか聞き取れなかった。
　一応今動く、目線だけをずらして辺りを確認しようとしてみたが、視界がぼやけよく見えない。
　目の前に何か、あるのだけ分かる。

「そら！！」

「お母さん！！」

　私のすぐ近くで、女性とたぶんそら君の声が聞こえる。
　声の感じから、そら君は無事だと分かったからなのか、かすかに残っていた意識は完全に途絶えた。

『希望スキルはありますか？』

『返答がありません…　再度確認します。希望スキルはありますか？』

『返答がありませんので、直前の感情をもとにし、スキルを作製…　ユニークスキル:怒るを取得しました。続いて、肉体の構築開始…　完了…　精神の構築開始…　完了…　記憶の引き継ぎ開始…　失敗…　記憶の引き継ぎに時間がかかります…』


◆


　私は、身体を起こし、膝を抱え込む。

「結局あの事故で、私は死んだんだ…　それに、今思えば、あの声って、直接頭に聞こえてたなぁ。普通に、近くにいる野次馬がふざけていたのかと思った」

　まぁ、でも、そら君を助けられて良かった。

「それより、これからどうするかか…」

　私は、先程のセウンさんの言った事を口に出す。
　
「だけど、今の私って、人ですらないんだよね…」

　額に手を伸ばし、そこにある角を触ってみる。
　触りながら、本当に、転生したんだなと改めて思う。

「どうすればいいんだろ、私…」

　前世の記憶はあるとは言え、この世界で、１人で生きていけるとは思えない。
　かといって、生き残った鬼人たちのいる村に行きたいとは思わない。私は、普通の鬼人より身体が弱いらしく両親以外の殆どの村の鬼人たちには、好い顔をされてなかった。
　やっぱり、ここで暮らしていく方が現実的な気がする。

「あ！！」

　たけど、住んでいた村には、１度戻ってみたい気持ちはあった。
　理由は、今更だけど、両親の供養をしてあげたいからだ。
　そう思ったせいか、こっちの世界の両親の事を思い返してしまう。