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閑話・マレン(過去編) 3

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 お父さんも、振り返り、逃げ出す前に、足を振り下ろした所で、視界の共有が途切れた。
 今まで、この能力を使ってきて、共有が突然切れた経験は何度かある。
 これまでの事や今の出来事を踏まえると、

「蜘蛛さん、死んじった…」

 私は、目を開け、そう呟く。
 私が、共有出来る対象は、虫系でありかつある程度ふれあいを持っていないと使えない。だから、何度か虫さんたちの死を体験したけど、悲しくなっちゃう。
 だから、私は、その日お母さんが呼びに来る迄、布団にくるまっていた。





「マレン、ご飯出来たわよ」

 私は、中々来ないマレンを呼びにきた。
 最近、部屋にこもりがちで、まれに、今日みたいに、呼んでも来ない時がある。
 初めは、体調が悪いのかとも思い本人に聞いてみたが、そう言う訳ではないらしい。
 だから、今では普通に起こしにきている。

「ほら、マレン。布団にくるまってないで、出てらっしゃい」

 布団を剥がし、マレンを引っ張り出す。
 この時、いつも悲しい顔をしている為、ギュッとしばらく抱き締めた後、手を引き、食卓へむかい席に座らせる。

「それじゃあ、ご飯を食べましょうか?」

「うん…」

 作ったご飯を並べ、夕食を食べ始める。
 マレンも少しずつだが、食べ出すのを確認してから、私も食べ始める。
 少しした所で、

「ねぇ… お母さん… お父さんは?」

「朝、仕事に行くとき、遅くなるって言っていたから、まだ帰ってきてないわね。どうして?」

「ううん… 聞いただけ…」

「そう?」

 そう言えば、昼間もあの人の事を聞いてたわね。何かあったのかしら。そう思っていると、今度は、街のとある場所に建ってある家に住んでいる女性を知っているかと聞いてきた。
 急に何でそんな事を聞いてくるのか不思議に思ったけど、一応その女性の特徴はないか聞いてみる。
 マレンは、記憶を思い出すかのように、ゆっくりとその女性の特徴を言っていく。

「やっぱり、知らないわね。その女性がどうかしたの?」

「ううん… 何でもない…」

「そう… なら、まだ少し残ってるから食べてしまいましょう」

「うん…」

 私は、マレンの話を頭の隅に止めておき、自分の残ってある分を食べる。





 最近、お母さんがよくギュッと抱き締めてくれる。
 理由までは分からないが、その時は、虫さんが亡くなって落ち込んでいる時なので、心が温かくなる。
 今日も、お母さんからギュッとして貰った後、手を引かれ食卓へ連れていかれる。
 子供ながら、お父さんのやっている事が良くない事だと分かっていたのか、その食卓では、お母さんが、その女性について知っているのか尋ねたけど、お母さんは知らなかったので、何となく誤魔化した。
 だけど、数日後、私はお母さんと2人で、おじいちゃんとおばあちゃんの家へと移り住んだ。
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