スキルが覚醒してパーティーに貢献していたつもりだったが、追放されてしまいました ~今度から新たに出来た仲間と頑張ります~

黒色の猫

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62話・別れ際

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 シェーンは、どうやら猫舌なのか、何度か息を吹きかけてから、緑茶を飲み出した。

「う…」

 湯呑みを下げたシェーンの顔は、しかめっ面をしていた。どうやら、口に合わなかったようだ。

「ふふ… どうやら、シェーンには、まだ早かったようだね」

「…すみません、フィアンマ様」

「いや、気にしなくていいよ。そういえば、シェーンは、苦いものが苦手だったねぇ」

 苦いものが苦手なら、緑茶は厳しいか…

「そうなのか、シェーン?」

「お恥ずかしながら… で… でも、今は少しくらいなら…」

 そう言って、再び緑茶を口にするが、少し涙目になっている。
 俺は、笑いを堪えながら、

「無理しなくてもいいよ、シェーン。誰しも苦手なものくらいあるよ。それは、俺が貰うから、これでも飲んでくれ」

 俺は、そう言ってアイテムボックスから、果実水の入ったコップを取り出して、シェーンの湯呑みと交換する。

「あ… いや、でも…」

 納得してなさそうな顔だったので、シェーンの湯呑みを持ち上げ、熱いのを我慢しながら、一気に飲み干す。

「あ!!」

「悪いな、シェーン。間違って、シェーンの分飲んでしまったから、それを代わりに飲んでくれ」

「はい…」

 顔を伏せながら、シェーンは、了承してくれる。

「ふふ… それじゃあ、3人でお話でもしましょうか」

 何故か、笑顔のフィア婆様の言葉で、お茶会を再開する。お茶会は、子供たちがお昼寝から起きてくるまで続いた。





 お茶会の後、シェーンにどうするのか尋ねると、今日一日、孤児院の手伝いにあてるらしいので、約束通りにシェーンを手伝う。やった事は、孤児院の掃除や子供たちの勉強をみたり、晩御飯の準備などだ。
 途中、カヴァリエがやって来た。
 どうやら、ガルさんに武器を造って貰える事になったようで、少しの間、この国に、滞在するって事を報告しに来たようだ。
 そんな事もあって、子供たちやフィア婆様たちと晩御飯を食べた後、シェーンと孤児院を出る。

「そういえば、シェーンは、どこに泊まるんだ? カヴァリエたちと同じ宿屋か?」

「いえ、私は、マオさんの家に泊まる予定です」

「そうなのか?」

「はい。こっちにいる時は、そうしてるんです」

「そうか。なら、日も暮れるし、そこまで送るよ」

「え… でも…」

「気にしなくていいよ。それじゃあ、行くよ」

 俺は、先に歩きだす。

「は… はい!!」

 シェーンが駆け寄ってきたのを確認し、歩みを緩める。





 2人で、たわいない話をしながら歩き、マオの家にたどり着いた。

「それじゃあ、俺も帰るな」

「はい。今日は、ありがとうございました」

「いや、いいよ。こっちも、いい気晴らしになったから」

「そう言って頂けると、ありがたいです」

「それじゃあ、またな、シェーン」

「はい!!」

 俺は、踵を返し、宿屋に戻ろうとした所で足を止め、振り返る。

「シェーン」

 アイテムボックスから、あるアイテムを取り出し、投げ渡す。

「わ、わ、わ」

 シェーンは、慌てながらも何とか受け止める。

「セウンさん、これは?」

「少し前、マオとアイテムの鑑定をしていてな。その時、シェーンたちにあいそうなアイテムがあったからやるよ」

「い… いいんですか?」

「あぁ。逆に返されても困るしな」

「ありがとうございます、セウンさん!! 大切にします!!」

「喜んで貰えて良かったよ。それじゃあな、シェーン」

「はい!!」

 今度は、振り返る事なく宿屋へ帰った。
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