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62話・別れ際
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シェーンは、どうやら猫舌なのか、何度か息を吹きかけてから、緑茶を飲み出した。
「う…」
湯呑みを下げたシェーンの顔は、しかめっ面をしていた。どうやら、口に合わなかったようだ。
「ふふ… どうやら、シェーンには、まだ早かったようだね」
「…すみません、フィアンマ様」
「いや、気にしなくていいよ。そういえば、シェーンは、苦いものが苦手だったねぇ」
苦いものが苦手なら、緑茶は厳しいか…
「そうなのか、シェーン?」
「お恥ずかしながら… で… でも、今は少しくらいなら…」
そう言って、再び緑茶を口にするが、少し涙目になっている。
俺は、笑いを堪えながら、
「無理しなくてもいいよ、シェーン。誰しも苦手なものくらいあるよ。それは、俺が貰うから、これでも飲んでくれ」
俺は、そう言ってアイテムボックスから、果実水の入ったコップを取り出して、シェーンの湯呑みと交換する。
「あ… いや、でも…」
納得してなさそうな顔だったので、シェーンの湯呑みを持ち上げ、熱いのを我慢しながら、一気に飲み干す。
「あ!!」
「悪いな、シェーン。間違って、シェーンの分飲んでしまったから、それを代わりに飲んでくれ」
「はい…」
顔を伏せながら、シェーンは、了承してくれる。
「ふふ… それじゃあ、3人でお話でもしましょうか」
何故か、笑顔のフィア婆様の言葉で、お茶会を再開する。お茶会は、子供たちがお昼寝から起きてくるまで続いた。
◆
お茶会の後、シェーンにどうするのか尋ねると、今日一日、孤児院の手伝いにあてるらしいので、約束通りにシェーンを手伝う。やった事は、孤児院の掃除や子供たちの勉強をみたり、晩御飯の準備などだ。
途中、カヴァリエがやって来た。
どうやら、ガルさんに武器を造って貰える事になったようで、少しの間、この国に、滞在するって事を報告しに来たようだ。
そんな事もあって、子供たちやフィア婆様たちと晩御飯を食べた後、シェーンと孤児院を出る。
「そういえば、シェーンは、どこに泊まるんだ? カヴァリエたちと同じ宿屋か?」
「いえ、私は、マオさんの家に泊まる予定です」
「そうなのか?」
「はい。こっちにいる時は、そうしてるんです」
「そうか。なら、日も暮れるし、そこまで送るよ」
「え… でも…」
「気にしなくていいよ。それじゃあ、行くよ」
俺は、先に歩きだす。
「は… はい!!」
シェーンが駆け寄ってきたのを確認し、歩みを緩める。
◆
2人で、たわいない話をしながら歩き、マオの家にたどり着いた。
「それじゃあ、俺も帰るな」
「はい。今日は、ありがとうございました」
「いや、いいよ。こっちも、いい気晴らしになったから」
「そう言って頂けると、ありがたいです」
「それじゃあ、またな、シェーン」
「はい!!」
俺は、踵を返し、宿屋に戻ろうとした所で足を止め、振り返る。
「シェーン」
アイテムボックスから、あるアイテムを取り出し、投げ渡す。
「わ、わ、わ」
シェーンは、慌てながらも何とか受け止める。
「セウンさん、これは?」
「少し前、マオとアイテムの鑑定をしていてな。その時、シェーンたちにあいそうなアイテムがあったからやるよ」
「い… いいんですか?」
「あぁ。逆に返されても困るしな」
「ありがとうございます、セウンさん!! 大切にします!!」
「喜んで貰えて良かったよ。それじゃあな、シェーン」
「はい!!」
今度は、振り返る事なく宿屋へ帰った。
「う…」
湯呑みを下げたシェーンの顔は、しかめっ面をしていた。どうやら、口に合わなかったようだ。
「ふふ… どうやら、シェーンには、まだ早かったようだね」
「…すみません、フィアンマ様」
「いや、気にしなくていいよ。そういえば、シェーンは、苦いものが苦手だったねぇ」
苦いものが苦手なら、緑茶は厳しいか…
「そうなのか、シェーン?」
「お恥ずかしながら… で… でも、今は少しくらいなら…」
そう言って、再び緑茶を口にするが、少し涙目になっている。
俺は、笑いを堪えながら、
「無理しなくてもいいよ、シェーン。誰しも苦手なものくらいあるよ。それは、俺が貰うから、これでも飲んでくれ」
俺は、そう言ってアイテムボックスから、果実水の入ったコップを取り出して、シェーンの湯呑みと交換する。
「あ… いや、でも…」
納得してなさそうな顔だったので、シェーンの湯呑みを持ち上げ、熱いのを我慢しながら、一気に飲み干す。
「あ!!」
「悪いな、シェーン。間違って、シェーンの分飲んでしまったから、それを代わりに飲んでくれ」
「はい…」
顔を伏せながら、シェーンは、了承してくれる。
「ふふ… それじゃあ、3人でお話でもしましょうか」
何故か、笑顔のフィア婆様の言葉で、お茶会を再開する。お茶会は、子供たちがお昼寝から起きてくるまで続いた。
◆
お茶会の後、シェーンにどうするのか尋ねると、今日一日、孤児院の手伝いにあてるらしいので、約束通りにシェーンを手伝う。やった事は、孤児院の掃除や子供たちの勉強をみたり、晩御飯の準備などだ。
途中、カヴァリエがやって来た。
どうやら、ガルさんに武器を造って貰える事になったようで、少しの間、この国に、滞在するって事を報告しに来たようだ。
そんな事もあって、子供たちやフィア婆様たちと晩御飯を食べた後、シェーンと孤児院を出る。
「そういえば、シェーンは、どこに泊まるんだ? カヴァリエたちと同じ宿屋か?」
「いえ、私は、マオさんの家に泊まる予定です」
「そうなのか?」
「はい。こっちにいる時は、そうしてるんです」
「そうか。なら、日も暮れるし、そこまで送るよ」
「え… でも…」
「気にしなくていいよ。それじゃあ、行くよ」
俺は、先に歩きだす。
「は… はい!!」
シェーンが駆け寄ってきたのを確認し、歩みを緩める。
◆
2人で、たわいない話をしながら歩き、マオの家にたどり着いた。
「それじゃあ、俺も帰るな」
「はい。今日は、ありがとうございました」
「いや、いいよ。こっちも、いい気晴らしになったから」
「そう言って頂けると、ありがたいです」
「それじゃあ、またな、シェーン」
「はい!!」
俺は、踵を返し、宿屋に戻ろうとした所で足を止め、振り返る。
「シェーン」
アイテムボックスから、あるアイテムを取り出し、投げ渡す。
「わ、わ、わ」
シェーンは、慌てながらも何とか受け止める。
「セウンさん、これは?」
「少し前、マオとアイテムの鑑定をしていてな。その時、シェーンたちにあいそうなアイテムがあったからやるよ」
「い… いいんですか?」
「あぁ。逆に返されても困るしな」
「ありがとうございます、セウンさん!! 大切にします!!」
「喜んで貰えて良かったよ。それじゃあな、シェーン」
「はい!!」
今度は、振り返る事なく宿屋へ帰った。
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