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第一章 迷宮の国テルミア編

11 巨大遺跡迷宮アスモデウス3

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20階層を超えると迷宮はこれまでよりも複雑になっていた。
とても入り組んでいる上に、トラップがあちらこちらに仕掛けており慎重に進まないといけなかった。
「ほっ、ほっ。おいこれキリがねぇな。」
「普通、こんなに矢が飛んで来たら避けれなそうですけどね?」
俺は飛んでくる矢を分身体で素早く叩き落としていた。パンフレットはイミナに預けた。
「あれ、なんかここに…。リミドさん、なんか21~29階層はトラップゾーンで、罠解除というスキルによって罠を解除する必要があるようです。罠解除は冒険者ギルドで与えられる職業:シーフの適正スキルで、パーティに1人は必ずいれるべき…って書いてあります。」
つまり俺らは正規の方法を無視して進んでいるというわけか?うーん。
「イミナ、そろそろ戻るか。」
「私まだまだ元気ですけど?」
「もう少し迷宮の情報を集めた方がよさそうだ。今はこうしてごり押しできているが、いずれもっと難度の高い仕掛けが用意されているかもしれない。もっときちんと予習してから、また挑もう。」




冒険者ギルドに戻り、収納から倒した魔物の素材を出す。
「換金お願いします。」
「はーい…って朝の女の子じゃない!もしかして…迷宮に入ったの!?」
「いやぁ、お金がなかったもので少しばかり稼ごうと。」
「しかもこれ…20階層主のものじゃない!もしかしてあんなところまでいったの!?新人は10階層主で引き返すっていうジンクスがあるのに…。いや、あのステータスを見れば納得か。」
周りが一気にざわついた。
「えーっと…とりあえず換金を。」
「ちょっと待っててね。三十分ぐらいかかるから、そこに座ってて。」
「はい、わかりました。」
イミナは周囲の視線におびえている様子だった。


イミナが座ったとたん、大勢の冒険者が話しかけてきた。
本日二度目の騒ぎである。
「すごーい、本当に迷宮に一人で行っちゃったのね!」
「21階で戻ってきたんでしょ?あそこはシーフがいないと突破できないのよ。」
「ねぇねぇ私のパーティに入らない?あなたの強さならきっと役に立つわ。」
大勢の女冒険者。いまだに人に慣れないイミナは縮こまって緊張しているようだった。
しかし、そこで一人の若い男の声が響く。
「やめとけ、そいつは悪魔かもしれないぞ。」
群がっていた女冒険者が声の主の方を見る。
そこには銀色の鎧をまとった金髪の男、そしてその後ろにはパーティと思われる黒い獣人と細身の女がいた。
「あれは、Cランク冒険者のギールさん。」
「最近Cランクでチームを組んだっていう。」
ギールとよばれた男は俺らの方へとまっすぐ歩いてきた。
そしてイミナの座る椅子の目の前のテーブルをバンッっとたたいた。
「おい、説明しろ。俺らはさっきまで24階層にいたんだ。お前、罠解除もしないでそのまま迷宮を散策して、発動した罠をよけようともせずに謎の力で矢をはじいていたろ。あれはいったい何なんだ、魔法を使っている反応もなかったし、お前は悪魔なのか、答えろ。答えなければ今ここで切り伏せる。」
(どうしよう、リミドさんのことばれてるみたいだよ…。)
イミナが小声で俺に話しかけた。
これはしまった、どう言い訳をしようものか。本当のことを言っても面倒くさいだけだ。どうせばれるとは思っていたから、こいつの「悪魔」ってやつにのってやるか?そうだなそうしよう。
「それは俺のことか。」
「ひゃっ!」
俺が首元から分身体をだしたため、イミナは思わず声を上げてしまった。
「俺様がこの子にとりついている悪魔だ。」
あたりが静まり返る。
金髪の男は剣を取り出して俺に刃を向けた。
「まぁまて安心しろ。俺は普通の悪魔ではない、イミナと俺は契約を結んだ完全な主従関係だ。俺はイミナの許可なしじゃ自由に行動できないってわけだ。」
「え、え。」
イミナが混乱している。
「つまりだ、このイミナという少女は高位の悪魔である俺様を従えてるっつーわけだ。」
「そ、そうです!この悪魔さんは私の従魔みたいなものです!」
「…本当に安全なのか。」
「は、はい。安全です。」
「…従えているなら別に構わない、お前がそれほどの実力者というわけだな。お前が悪魔に支配されていると思って警戒していたが、どうやら逆のようだったな。悪魔が人間に化けて人の街に侵入するということはよくあることだ。街を守るのも冒険者の仕事、疑ったのもそれがゆえのこと、悪く思うな。」
そういうと、金髪の冒険者はその場を去っていった。
どうやら災難は免れたようだ。
しかしどうする?俺の存在がみんなにばれてしまった。
しかも悪魔、と言ってしまった。
悪魔を引き連れた少女のことをみんなはどう思うのだろうか?くそ、もう少し慎重に行動すればよかった。
白い髪の上に悪魔を引き連れている、これは周りから忌避されるのではないだろうか。
「イミナちゃんすごーい!知性を持った高位の悪魔を従えているのね!」
「かっこいいわ!」
「白髪と黒の悪魔、お似合いじゃない!」
周りの反応は俺が予想していたものと違った。あ、あれ?
「悪魔使いの少女、素敵じゃない!」
「悪魔を従えてるなんて今まで見たこともないわよ!」
「かわいい女の子が悪魔を従えてる、ギャップ萌えよね!」
どうやら、プラスの方向へ働いているようだった。俺はほっと安心した。
イミナもまんざらではない表情で、頭に手をあてて「えへへ…」、と照れている。
「よく見たらこの悪魔さんもかわいいじゃない!」
「ねぇイミナちゃん、触ってもいい?」
「あぁはい、いいですよ(にやり)。」
あ、ちょ。イミナ、お前やりやがったな。
「悪魔さんかわいいー!」
「キャー!」
俺は素材の換金が終わるまでの三十分間、女冒険者に触られ続けた。もう、メンタルが持ちません。
イミナは自分への注意が俺に映ったことを喜びながら俺を終始細い目で見ていた。
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