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??型④

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「将来の夢、昔はあったんだけどな」

「俺はサッカー選手だった」

「あー……予想通りだわ。俺なんだったっけな……」

 翔は昔からサッカーが上手だったし、納得だ。
 こぼせば、間髪入れずに翔が口を開く。

「俺の親友って言ってた」

「……え、マジで?」

 思わず、上半身を起こす。翔の目は──とても、嘘を言っているようには思えない。

「大マジ」

 なんだそれ。夢って──普通、仕事とかだろう。当時の自分は小さかったとはいえ、あまりにもだ。幼い頃の己のアホさに顔を見合せてから。声を上げてふたりで笑った。

 ひとしきり笑ってから。なんだか、胸がじんわりとする。妙な切なさが、影を落とした。

 いずれ、翔ともこうして家で遊べるときは来なくなるのかもしれない。どんな職に就くかはわからないが仕事を始めて忙しくなれば、会うことすら難しくなる可能性だってある。残業とかだってあるんだろうし。
 結婚だけが幸せの形ではないとはいえ、やっぱり家庭を持つことはありふれた幸せのひとつで。お互いそうなれば、余計に会うことは難しくなるはずだ。放課後にどこかに寄ることも、家で遊ぶのも、全部全部、今だけなのだ。

 仕方のないことだとはわかっている。それでも。それは、すごく。……悲しい。
 服の端をぎゅ、と掴んだけれど。生まれた寂しさは、消えてくれやしないようだ。

 進路希望の紙に、視線を落とす。胸に滲む切なさは悟らせないように、顔を上げて笑顔を作った。

「たまには遊んでくれよ。仕事とか始めたら疎遠になっちゃうかもしれないけどさ──」

「は?」

 吐き捨てられた一音に、肩が跳ねる。地を這うように低かったから。
 声とは裏腹に、翔は笑顔を浮かべていた。表情を崩さず、口角を上げたまま──しかし、その目は笑っていなかった。

「疎遠に? なるわけないだろ」

「え……いや、わかんないだろ、そんなの」

 わかるよ。

 しどろもどろな俺の言葉に。返されたその声色に、迷いはなく。どうして断言できるのか、回らない頭で考えていると。
 目を、僅かに細めて。


「だって、お前から離れる気なんてさらさらないし」


 まるでそれが当然の理のように、幼馴染は言ったのだった。
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