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崇拝型⑦

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 いつもは背が丸まってよくわからなかったが──彼は俺よりも背が高く、体格も良いようで。

「……え? どう、したの……?」

 彼の纏う雰囲気が変わる。いつもの穏やかなそれとはどこか違い、なんだか妙だ。前髪の隙間から覗いた瞳は、真っ黒で。思わず体が固くなる。
 ふ、と息が漏れる。彼が小さく笑ったようだった。

「緊張、してる? 大丈夫、……おれ、きみのことが、好きなだけだから……」

「す、え、……っえ!?」

 顔に熱が集まる。今、なんて。彼が俺を──なんだって?
 こうして近くで見ると、彼の顔は整っているのがよくわかる。意識してしまえば妙な緊張が走る。

「ふふ……かわいい、ね。……初めてできた友だちに、こんな気持ちになるのはおかしい、かな。きみのことがすごく大切で……大好きになったんだ」

 告白に、頭の中がパニックになる。返す言葉も見つからず黙っていたのだが──彼の目の色が、僅かに変わった。

「──けど、きみにとっては、おれはただの友だちのひとりなんでしょう?」

 ──え。


 低い声。なにか、背筋に冷たいものが走った。その声色は、先程までとは別の感情を孕んでいて。


「ごめんね。おれは浅ましくて、醜いから。田山くんは、おれの光だから。すこしでも近づいて欲しくて、堕ちて欲しくて──」


 ──お菓子に、おれの血、入れちゃった。


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。あまりにも柔らかい笑顔でそう言うものだから。その内容は、信じ難いほど乖離していて──

 じゃあ、他の菓子では感じたことのないあの苦味は。まさか。
 顔から血の気が引いていくのがわかる。そんな俺に構うこともなく、彼は滔々と言葉を続けていく。

「……少しは近づけたかな。でも、駄目かも。田山くんは、やっぱりキラキラして綺麗だから……」

 何が見えているのか。俺が輝いて見えでもしているのだろうか。得体の知れぬ恍惚に浸っているようで、蕩けた瞳は目の前の俺を本当に映しているのかわからない。

「どうすれば、おなじになってくれる、かなあ。……でも、綺麗なままでも居て欲しい、なあ……ふふ……」


 ヤンデレゲームの主人公へ。羨ましいとか毎日思ってすみませんでした。幸せ者とかも思ってすみませんでした。正直──どんなに顔がいい相手でも、光の無い目で迫られるのは本当に怖いです。同性とか異性とかたぶん関係無しに。


 前髪から覗く瞳が、どろどろとした感情を孕んで。まっすぐ向けられるそれに、息の仕方を忘れてしまう。このまま、俺は──どうなるんだ?


 う、だとか、あ、という一音が口から漏れる。意識を手放しそうになった瞬間──怒号が空気を裂いた。

「っなにしてんだ!!」
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