96 / 107
第七章
第九十六話・②飛竜アルゲート
しおりを挟む
「アレン、アレン・・・どうした?」
気が付くと、アレンはジョエルに肩を揺す振られていた。
ちょうど、皆で集まり直して話合いをしていたところだった。
「ご、ごめんなさい・・・なんの話しをしてたっけ?」
「おい、おい。起きながら白昼夢か?えらく余裕があるな」ロンデルがからかうように言う。
「アレリス様、お疲れなのではないですか?休む間もなく話し合いに応じられて」ナグが車座の対面から、心配そうに声を掛けて来てくれる。べゼルも、うんうんと頷いている。
「そうですな。アレリス様はまだ、御幼少。何日も掛けてここまで足を運んでくだされた。少し、横になられてはどうかな?」テルル老も同調するように口を挟む。
「ええ、それがよいです。その間に我らが飛竜の居場所を探っておきましょう。直ぐに、見つける事はできないと思いますが、その間ゆっくりお休みください」イグナッシュが提案して来た。
みんなで車座に座り、今後の対策を練っていたが、今のところの懸案事項の一つが飛竜の居場所だった。
「え~と・・・アルゲートの居場所なら分かると思うよ」アレンは漸く口を開いた。
「アルゲートって、誰だ?」ナリスが首を傾げてロンデルを見る。
「傭兵の誰かじゃねーな」ロンデルは肩を竦める。
「誰の事だ、アレン」ジョエルが訝しげにアレンの顔を覗き込む。
アレンはゆっくり口を開くと、車座に座っている面々の顔を眺めた。
「アルゲートは飛竜の事だよ」
「「「!!」」」
みんなは吃驚してアレンの顔をまじまじと見た。
「そ、それは本当ですか?彼の名前がアルゲート?」イリーメルがアレンに向き合った。
「うん」
「いや、いや。そうじゃねえ!なんで飛竜の居場所が分かる?」ロンデルが床をドンと鳴らした。
「夢を見たよ」
「夢かい!白昼夢かい!寝ぼけてんのかあ?」
「寝ぼけてないよ。白昼夢かもしれないけど、さっきアルゲートの夢と言うか、思いが入って来たんだ。夢の中で彼の名前がアルゲートだって分かった」
「夢を見られたのですか?」イリーメルが膝を乗り出した。
「夢かどうか・・・突然、僕はアルゲートになってた・・・」アレンの瞳から、涙が溢れて来た。
「アルゲートはずっと、一人ぼっちだったんだ。五百年近くの間・・・そんなの寂びし過ぎるよ・・・おまけに卵が石化して砂粒になって・・・孵らなかった」
アレンは独りぼっちの気持ちが分かる。
悲しみに押しつぶされそうな気持も。
母が死んで、森の中で一人だった時の気持ちと、原始の森の中を一人で彷徨い続けるアルゲートの心がアレンに重なって思えた。
「ご主人様も死んで、メンサリューも居ない・・・一人で生きろなんて余りに残酷だ・・・酷いよ・・・」
「メンサリューって誰だ?」ナリスが小声でジョエルに耳打ちした。
アレンはキッと、ナリスを睨んだ。
「メンサリューは、アルゲートの奥さんだよ。アルゲートとや卵を守って死んだんだ。どうして、あんな酷い事ができるの?人間って残酷だ!酷過ぎる!」
ジョエルはアレンに腕を回して自分の胸に引き寄せた。
「し~、アレン。興奮し過ぎだ。もう、五百年も昔の話だろう・・・」そうして、アレンの背中をぽんぽんと叩いて慰めた。
「うぅ・・・アルゲートは今でも、その時の悲しみのまま長い時を流離っているんだ・・・昔のことじゃなよ」
「だったら、その悲しみを止めてやればいい」
「それは・・・殺すって事・・・そんなのできないよ」
「う~ん、まあ話を聞いてやればいいさ」
「話しを聴く?」
「うん、アルゲートって奴がどうしたいのか聞いてやればいいんじゃないかな」
「や、死にたがってんじゃねーの」ロンデルがナリスに囁くと、今度はジョエルがキッと睨んで来た。
「うう~~、死なせるって、殺すことじゃないか・・・そんなの嫌だよ」アレンは又、泣きじゃくり始める。
どうやらアルゲートと、同調し過ぎて心の均衡が崩れてしまったようだ。
「アレリス様、もし、もしも本人が希望したら・・・眠らせてあげればいいんじゃないですか?」
アレンはその言葉にイグナッシュを振り返った。
「眠らせる?」
「ええ、我らの眠の森に来れば安らかな眠に付くことができます」
「眠の森?」
「マイヨールの里の奥にあります。寿命のの終わりに向う“終焉の地”とも呼ばれ、マイヨール族は木になります。周りには優しいドライアド達がいるので寂しくありませんよ」
「しかし、マイヨール族でもない者が迎え入れられるものでしょうか?」ナグが心配げに囁いた。
「そこは交渉次第でしょう。でも、永きに渡り扉を守って来た恩人です。きっと受け入れて貰えると思います」
「ありがとう、イグナッシュ」
彼は微笑み返した。
アレンはジョエルの懐から元気になって立ち上がると、宣言するように言った。
「今からアルゲートの所に行って来るよ」
「はっ?何言ってる」
「今なら彼は“水鏡”にいる。皆は此処で待ってて」
「「絶対に駄目だ!」」即座にジョエルとナリスが反対する。
「危険過ぎる。一人で行かせるわけにはいかない」ジョエルは立ち上がって、アレンの肩に手を置き説得するように言った。その顔は絶対引かないぞ、と訴えているようだった。
「俺も行くぞ」
ナリスも立ち上がると、ジョエルに同調するようにアレンを上から見下ろした。
ロンデルやナグ達も無言で立ち上がった。
++++++++++++++++
進化前のクッキーです(ラフ)羽と角は難しい~。因みに色は両方とも白色です。想像力でカバーお願いします。
クッキーはリスもどきです。(魔獣なので)
気が付くと、アレンはジョエルに肩を揺す振られていた。
ちょうど、皆で集まり直して話合いをしていたところだった。
「ご、ごめんなさい・・・なんの話しをしてたっけ?」
「おい、おい。起きながら白昼夢か?えらく余裕があるな」ロンデルがからかうように言う。
「アレリス様、お疲れなのではないですか?休む間もなく話し合いに応じられて」ナグが車座の対面から、心配そうに声を掛けて来てくれる。べゼルも、うんうんと頷いている。
「そうですな。アレリス様はまだ、御幼少。何日も掛けてここまで足を運んでくだされた。少し、横になられてはどうかな?」テルル老も同調するように口を挟む。
「ええ、それがよいです。その間に我らが飛竜の居場所を探っておきましょう。直ぐに、見つける事はできないと思いますが、その間ゆっくりお休みください」イグナッシュが提案して来た。
みんなで車座に座り、今後の対策を練っていたが、今のところの懸案事項の一つが飛竜の居場所だった。
「え~と・・・アルゲートの居場所なら分かると思うよ」アレンは漸く口を開いた。
「アルゲートって、誰だ?」ナリスが首を傾げてロンデルを見る。
「傭兵の誰かじゃねーな」ロンデルは肩を竦める。
「誰の事だ、アレン」ジョエルが訝しげにアレンの顔を覗き込む。
アレンはゆっくり口を開くと、車座に座っている面々の顔を眺めた。
「アルゲートは飛竜の事だよ」
「「「!!」」」
みんなは吃驚してアレンの顔をまじまじと見た。
「そ、それは本当ですか?彼の名前がアルゲート?」イリーメルがアレンに向き合った。
「うん」
「いや、いや。そうじゃねえ!なんで飛竜の居場所が分かる?」ロンデルが床をドンと鳴らした。
「夢を見たよ」
「夢かい!白昼夢かい!寝ぼけてんのかあ?」
「寝ぼけてないよ。白昼夢かもしれないけど、さっきアルゲートの夢と言うか、思いが入って来たんだ。夢の中で彼の名前がアルゲートだって分かった」
「夢を見られたのですか?」イリーメルが膝を乗り出した。
「夢かどうか・・・突然、僕はアルゲートになってた・・・」アレンの瞳から、涙が溢れて来た。
「アルゲートはずっと、一人ぼっちだったんだ。五百年近くの間・・・そんなの寂びし過ぎるよ・・・おまけに卵が石化して砂粒になって・・・孵らなかった」
アレンは独りぼっちの気持ちが分かる。
悲しみに押しつぶされそうな気持も。
母が死んで、森の中で一人だった時の気持ちと、原始の森の中を一人で彷徨い続けるアルゲートの心がアレンに重なって思えた。
「ご主人様も死んで、メンサリューも居ない・・・一人で生きろなんて余りに残酷だ・・・酷いよ・・・」
「メンサリューって誰だ?」ナリスが小声でジョエルに耳打ちした。
アレンはキッと、ナリスを睨んだ。
「メンサリューは、アルゲートの奥さんだよ。アルゲートとや卵を守って死んだんだ。どうして、あんな酷い事ができるの?人間って残酷だ!酷過ぎる!」
ジョエルはアレンに腕を回して自分の胸に引き寄せた。
「し~、アレン。興奮し過ぎだ。もう、五百年も昔の話だろう・・・」そうして、アレンの背中をぽんぽんと叩いて慰めた。
「うぅ・・・アルゲートは今でも、その時の悲しみのまま長い時を流離っているんだ・・・昔のことじゃなよ」
「だったら、その悲しみを止めてやればいい」
「それは・・・殺すって事・・・そんなのできないよ」
「う~ん、まあ話を聞いてやればいいさ」
「話しを聴く?」
「うん、アルゲートって奴がどうしたいのか聞いてやればいいんじゃないかな」
「や、死にたがってんじゃねーの」ロンデルがナリスに囁くと、今度はジョエルがキッと睨んで来た。
「うう~~、死なせるって、殺すことじゃないか・・・そんなの嫌だよ」アレンは又、泣きじゃくり始める。
どうやらアルゲートと、同調し過ぎて心の均衡が崩れてしまったようだ。
「アレリス様、もし、もしも本人が希望したら・・・眠らせてあげればいいんじゃないですか?」
アレンはその言葉にイグナッシュを振り返った。
「眠らせる?」
「ええ、我らの眠の森に来れば安らかな眠に付くことができます」
「眠の森?」
「マイヨールの里の奥にあります。寿命のの終わりに向う“終焉の地”とも呼ばれ、マイヨール族は木になります。周りには優しいドライアド達がいるので寂しくありませんよ」
「しかし、マイヨール族でもない者が迎え入れられるものでしょうか?」ナグが心配げに囁いた。
「そこは交渉次第でしょう。でも、永きに渡り扉を守って来た恩人です。きっと受け入れて貰えると思います」
「ありがとう、イグナッシュ」
彼は微笑み返した。
アレンはジョエルの懐から元気になって立ち上がると、宣言するように言った。
「今からアルゲートの所に行って来るよ」
「はっ?何言ってる」
「今なら彼は“水鏡”にいる。皆は此処で待ってて」
「「絶対に駄目だ!」」即座にジョエルとナリスが反対する。
「危険過ぎる。一人で行かせるわけにはいかない」ジョエルは立ち上がって、アレンの肩に手を置き説得するように言った。その顔は絶対引かないぞ、と訴えているようだった。
「俺も行くぞ」
ナリスも立ち上がると、ジョエルに同調するようにアレンを上から見下ろした。
ロンデルやナグ達も無言で立ち上がった。
++++++++++++++++
進化前のクッキーです(ラフ)羽と角は難しい~。因みに色は両方とも白色です。想像力でカバーお願いします。
クッキーはリスもどきです。(魔獣なので)
0
お気に入りに追加
2,217
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる