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第七章
第九十六話・②飛竜アルゲート
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「アレン、アレン・・・どうした?」
気が付くと、アレンはジョエルに肩を揺す振られていた。
ちょうど、皆で集まり直して話合いをしていたところだった。
「ご、ごめんなさい・・・なんの話しをしてたっけ?」
「おい、おい。起きながら白昼夢か?えらく余裕があるな」ロンデルがからかうように言う。
「アレリス様、お疲れなのではないですか?休む間もなく話し合いに応じられて」ナグが車座の対面から、心配そうに声を掛けて来てくれる。べゼルも、うんうんと頷いている。
「そうですな。アレリス様はまだ、御幼少。何日も掛けてここまで足を運んでくだされた。少し、横になられてはどうかな?」テルル老も同調するように口を挟む。
「ええ、それがよいです。その間に我らが飛竜の居場所を探っておきましょう。直ぐに、見つける事はできないと思いますが、その間ゆっくりお休みください」イグナッシュが提案して来た。
みんなで車座に座り、今後の対策を練っていたが、今のところの懸案事項の一つが飛竜の居場所だった。
「え~と・・・アルゲートの居場所なら分かると思うよ」アレンは漸く口を開いた。
「アルゲートって、誰だ?」ナリスが首を傾げてロンデルを見る。
「傭兵の誰かじゃねーな」ロンデルは肩を竦める。
「誰の事だ、アレン」ジョエルが訝しげにアレンの顔を覗き込む。
アレンはゆっくり口を開くと、車座に座っている面々の顔を眺めた。
「アルゲートは飛竜の事だよ」
「「「!!」」」
みんなは吃驚してアレンの顔をまじまじと見た。
「そ、それは本当ですか?彼の名前がアルゲート?」イリーメルがアレンに向き合った。
「うん」
「いや、いや。そうじゃねえ!なんで飛竜の居場所が分かる?」ロンデルが床をドンと鳴らした。
「夢を見たよ」
「夢かい!白昼夢かい!寝ぼけてんのかあ?」
「寝ぼけてないよ。白昼夢かもしれないけど、さっきアルゲートの夢と言うか、思いが入って来たんだ。夢の中で彼の名前がアルゲートだって分かった」
「夢を見られたのですか?」イリーメルが膝を乗り出した。
「夢かどうか・・・突然、僕はアルゲートになってた・・・」アレンの瞳から、涙が溢れて来た。
「アルゲートはずっと、一人ぼっちだったんだ。五百年近くの間・・・そんなの寂びし過ぎるよ・・・おまけに卵が石化して砂粒になって・・・孵らなかった」
アレンは独りぼっちの気持ちが分かる。
悲しみに押しつぶされそうな気持も。
母が死んで、森の中で一人だった時の気持ちと、原始の森の中を一人で彷徨い続けるアルゲートの心がアレンに重なって思えた。
「ご主人様も死んで、メンサリューも居ない・・・一人で生きろなんて余りに残酷だ・・・酷いよ・・・」
「メンサリューって誰だ?」ナリスが小声でジョエルに耳打ちした。
アレンはキッと、ナリスを睨んだ。
「メンサリューは、アルゲートの奥さんだよ。アルゲートとや卵を守って死んだんだ。どうして、あんな酷い事ができるの?人間って残酷だ!酷過ぎる!」
ジョエルはアレンに腕を回して自分の胸に引き寄せた。
「し~、アレン。興奮し過ぎだ。もう、五百年も昔の話だろう・・・」そうして、アレンの背中をぽんぽんと叩いて慰めた。
「うぅ・・・アルゲートは今でも、その時の悲しみのまま長い時を流離っているんだ・・・昔のことじゃなよ」
「だったら、その悲しみを止めてやればいい」
「それは・・・殺すって事・・・そんなのできないよ」
「う~ん、まあ話を聞いてやればいいさ」
「話しを聴く?」
「うん、アルゲートって奴がどうしたいのか聞いてやればいいんじゃないかな」
「や、死にたがってんじゃねーの」ロンデルがナリスに囁くと、今度はジョエルがキッと睨んで来た。
「うう~~、死なせるって、殺すことじゃないか・・・そんなの嫌だよ」アレンは又、泣きじゃくり始める。
どうやらアルゲートと、同調し過ぎて心の均衡が崩れてしまったようだ。
「アレリス様、もし、もしも本人が希望したら・・・眠らせてあげればいいんじゃないですか?」
アレンはその言葉にイグナッシュを振り返った。
「眠らせる?」
「ええ、我らの眠の森に来れば安らかな眠に付くことができます」
「眠の森?」
「マイヨールの里の奥にあります。寿命のの終わりに向う“終焉の地”とも呼ばれ、マイヨール族は木になります。周りには優しいドライアド達がいるので寂しくありませんよ」
「しかし、マイヨール族でもない者が迎え入れられるものでしょうか?」ナグが心配げに囁いた。
「そこは交渉次第でしょう。でも、永きに渡り扉を守って来た恩人です。きっと受け入れて貰えると思います」
「ありがとう、イグナッシュ」
彼は微笑み返した。
アレンはジョエルの懐から元気になって立ち上がると、宣言するように言った。
「今からアルゲートの所に行って来るよ」
「はっ?何言ってる」
「今なら彼は“水鏡”にいる。皆は此処で待ってて」
「「絶対に駄目だ!」」即座にジョエルとナリスが反対する。
「危険過ぎる。一人で行かせるわけにはいかない」ジョエルは立ち上がって、アレンの肩に手を置き説得するように言った。その顔は絶対引かないぞ、と訴えているようだった。
「俺も行くぞ」
ナリスも立ち上がると、ジョエルに同調するようにアレンを上から見下ろした。
ロンデルやナグ達も無言で立ち上がった。
++++++++++++++++
進化前のクッキーです(ラフ)羽と角は難しい~。因みに色は両方とも白色です。想像力でカバーお願いします。
クッキーはリスもどきです。(魔獣なので)
気が付くと、アレンはジョエルに肩を揺す振られていた。
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「ご、ごめんなさい・・・なんの話しをしてたっけ?」
「おい、おい。起きながら白昼夢か?えらく余裕があるな」ロンデルがからかうように言う。
「アレリス様、お疲れなのではないですか?休む間もなく話し合いに応じられて」ナグが車座の対面から、心配そうに声を掛けて来てくれる。べゼルも、うんうんと頷いている。
「そうですな。アレリス様はまだ、御幼少。何日も掛けてここまで足を運んでくだされた。少し、横になられてはどうかな?」テルル老も同調するように口を挟む。
「ええ、それがよいです。その間に我らが飛竜の居場所を探っておきましょう。直ぐに、見つける事はできないと思いますが、その間ゆっくりお休みください」イグナッシュが提案して来た。
みんなで車座に座り、今後の対策を練っていたが、今のところの懸案事項の一つが飛竜の居場所だった。
「え~と・・・アルゲートの居場所なら分かると思うよ」アレンは漸く口を開いた。
「アルゲートって、誰だ?」ナリスが首を傾げてロンデルを見る。
「傭兵の誰かじゃねーな」ロンデルは肩を竦める。
「誰の事だ、アレン」ジョエルが訝しげにアレンの顔を覗き込む。
アレンはゆっくり口を開くと、車座に座っている面々の顔を眺めた。
「アルゲートは飛竜の事だよ」
「「「!!」」」
みんなは吃驚してアレンの顔をまじまじと見た。
「そ、それは本当ですか?彼の名前がアルゲート?」イリーメルがアレンに向き合った。
「うん」
「いや、いや。そうじゃねえ!なんで飛竜の居場所が分かる?」ロンデルが床をドンと鳴らした。
「夢を見たよ」
「夢かい!白昼夢かい!寝ぼけてんのかあ?」
「寝ぼけてないよ。白昼夢かもしれないけど、さっきアルゲートの夢と言うか、思いが入って来たんだ。夢の中で彼の名前がアルゲートだって分かった」
「夢を見られたのですか?」イリーメルが膝を乗り出した。
「夢かどうか・・・突然、僕はアルゲートになってた・・・」アレンの瞳から、涙が溢れて来た。
「アルゲートはずっと、一人ぼっちだったんだ。五百年近くの間・・・そんなの寂びし過ぎるよ・・・おまけに卵が石化して砂粒になって・・・孵らなかった」
アレンは独りぼっちの気持ちが分かる。
悲しみに押しつぶされそうな気持も。
母が死んで、森の中で一人だった時の気持ちと、原始の森の中を一人で彷徨い続けるアルゲートの心がアレンに重なって思えた。
「ご主人様も死んで、メンサリューも居ない・・・一人で生きろなんて余りに残酷だ・・・酷いよ・・・」
「メンサリューって誰だ?」ナリスが小声でジョエルに耳打ちした。
アレンはキッと、ナリスを睨んだ。
「メンサリューは、アルゲートの奥さんだよ。アルゲートとや卵を守って死んだんだ。どうして、あんな酷い事ができるの?人間って残酷だ!酷過ぎる!」
ジョエルはアレンに腕を回して自分の胸に引き寄せた。
「し~、アレン。興奮し過ぎだ。もう、五百年も昔の話だろう・・・」そうして、アレンの背中をぽんぽんと叩いて慰めた。
「うぅ・・・アルゲートは今でも、その時の悲しみのまま長い時を流離っているんだ・・・昔のことじゃなよ」
「だったら、その悲しみを止めてやればいい」
「それは・・・殺すって事・・・そんなのできないよ」
「う~ん、まあ話を聞いてやればいいさ」
「話しを聴く?」
「うん、アルゲートって奴がどうしたいのか聞いてやればいいんじゃないかな」
「や、死にたがってんじゃねーの」ロンデルがナリスに囁くと、今度はジョエルがキッと睨んで来た。
「うう~~、死なせるって、殺すことじゃないか・・・そんなの嫌だよ」アレンは又、泣きじゃくり始める。
どうやらアルゲートと、同調し過ぎて心の均衡が崩れてしまったようだ。
「アレリス様、もし、もしも本人が希望したら・・・眠らせてあげればいいんじゃないですか?」
アレンはその言葉にイグナッシュを振り返った。
「眠らせる?」
「ええ、我らの眠の森に来れば安らかな眠に付くことができます」
「眠の森?」
「マイヨールの里の奥にあります。寿命のの終わりに向う“終焉の地”とも呼ばれ、マイヨール族は木になります。周りには優しいドライアド達がいるので寂しくありませんよ」
「しかし、マイヨール族でもない者が迎え入れられるものでしょうか?」ナグが心配げに囁いた。
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「ありがとう、イグナッシュ」
彼は微笑み返した。
アレンはジョエルの懐から元気になって立ち上がると、宣言するように言った。
「今からアルゲートの所に行って来るよ」
「はっ?何言ってる」
「今なら彼は“水鏡”にいる。皆は此処で待ってて」
「「絶対に駄目だ!」」即座にジョエルとナリスが反対する。
「危険過ぎる。一人で行かせるわけにはいかない」ジョエルは立ち上がって、アレンの肩に手を置き説得するように言った。その顔は絶対引かないぞ、と訴えているようだった。
「俺も行くぞ」
ナリスも立ち上がると、ジョエルに同調するようにアレンを上から見下ろした。
ロンデルやナグ達も無言で立ち上がった。
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