異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

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第五章

第六十六話・アレン、宮廷へ

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 アレン達、一向は城内壁の内門も無事通り抜け、借り上げ屋敷に到着した。雇われ執事や、メイド達に出迎えられて屋敷内に入ると、リクシルド・フォン・アライエンス伯爵が叔母のグレイシル・フォン・スローディング侯爵夫人を伴って客間で待ち構えていた。

 「無事にご到着され、何よりですダンドリュウス伯爵。到着早々、申し訳ありませんが叔母のグレイシル・フォン・スローディング侯爵夫人をご紹介いたします」
 「これは、わざわざのお運び、まことに申し訳なく思います。お初にお目にかかります。ラビウス・フォン・ダンドリュウスと申します」
 「グレイシル・フォン・スローディングと申します。いつも、甥がお世話になっております。ご迷惑をお掛けしていないとよろしいのですが」
 「とんでもない、いつも、お世話になっているのはこちらの方です」ダンドリュウス伯はそう言うと、侯爵夫人の手を取り、その手に軽く口付けた。そして、身体を起こすと、アレンを紹介する。
 
 「孫のアレリスです。侯爵夫人」
 「初めまして、アレリス・フォン・ダンドリュウスと申します。よろしくお願いいたします」アレンは伯爵にならって手に口付けしようとしたが、それより早く、侯爵夫人に抱きしめられた。
 
 「まあ~~!!なんて、かわいいの!天使みたい!」そう叫ぶと、アレンをギュウギュウ抱きしめる。
 「はは、すいません。ダンドリュウス伯、一刻も早く、アレリス殿に会わせろと、うるさいもので」驚いて、目を丸くしている伯爵に謝った。
 「何を、言ってるのリクシルド。あなたのことだから、独り占めしようと企んだに違いないわ。その先手を打っただけよ」そう言うと、びっくりして目を見開いているアレンの両頬に手を当てた。

 「なんて、綺麗な瞳かしら。紫水晶のようだわ、いいえ、もっと深い色ね。ステキ。ほっぺも、赤ちゃんみたいにスベスベだわ~~」そして、アレンの両頬にキスをした。
 「あっ!」アライエンス伯爵が小さく声を上げる。
 
 「ふふふ。あなたもキスするつもりだったのは、お見通しよ。早い者勝ちよ」そう言うと、又、ギュウギュウ抱きしめた。
 「叔母上、アレリス殿が困っていますよ。たいがいになさいませ」

 「まあ、ごめんなさい。あなたが想像以上に可愛らしかったから。到着したばかりですものね。でも、旅の途中で、ワンダーホルン公爵に付け回されたと聞いて飛んで来たのよ。私と、リクシルドがここに尋ねて来たと知れ渡れば、そうそう、他の貴族が押し寄せることはないでしょう」公爵夫人は抱きしめるのは止めたが、アレリスの手をしっかり握って離さなかった。

 「それは、有り難いことです。細やかなお心遣い痛み入ります。なにせ、アレリスは宮廷の作法に全くうといもので、困っておったところです。しかし、アライエンス伯同様に、お耳がお早い」
 「ほほほほ。褒め言葉として受け取らせて頂きますわ。ところで、宮廷にはいつ参内さんだいなさるおつもりですの?」
 
 「そうですね。式典まで、ぎりぎり引き延ばそうかと考えております。そうすれば、各国の招待客に混じって目立たないかと愚考しております」ダンドリュウス伯爵は淀みなく答えた、前以ってバルト達と相談していたからだ。

 「う~ん。それはどうかしら。どう思う、リクシルド」
 「そうですね。前以って挨拶を済ましておく方が良い気がします。たぶん、屋敷に引きこもっていれば国王陛下から、催促の使いがやって来るでしょう」
 「・・・それほどに?」伯爵は驚いた。
 
 「ええ、残念ながら。陛下は今か、今かとアレリス殿の参内を非常に楽しみにされております」
 
 「「「・・・・・」」」

 「ねえ、いっその事、明日にでも参内を済ませてはどうかしら?まさか、到着した次の日に参内するとは思わないでしょう。その後、我が屋敷に逗留とうりゅうするといいわ。そうすれば、他の貴族の魔の手から守ってさし上げることができるわ」
 「・・・いや、そこまで甘える訳には・・」

 「叔母上。只、アレリス殿を独占したいだけでしょう」

 結局、明日はは止めて明後日に参内する事が決まったが、国王陛下より他の貴族にも会わせたいので三日後に参内するようにとの使いがやって来た。
 どうやら、ニ日で王都中の貴族に収集を掛け、その参集した貴族たちの前で王に謁見するという異例の事態になった。伯爵達に取って、なんとも頭の痛い展開になってしまった。




 参内の日に、わざわざアライエンス伯爵が立ち寄り同行してくれる事になったが、宮殿に着くとアレン達にはわざわざ、別部屋が用意されており他の貴族とは隔離されてしまった。
 
 (普通、謁見の前は爵位ごとの待機室が設けられ、軽い軽食や飲み物等が用意され収集が掛るまで歓談して過ごし、下位の者から順番に呼ばれて謁見の大広間に並んで行く。但し、下位の者達は何組か同時に呼ばれる。全員が大広間に揃った後に、国王や王子達が出廷する仕来たりだ)

 アレン達が別部屋に通されて、もう大分時間が過ぎた。
 「アレン、大丈夫か?」伯爵が心配して声を掛ける。
 「はい。でも、いつもこんなに時間が掛るものですか、お爺様?」
 「・・・いや、もうとっくに、貴族達の出廷は始まっておる筈だ」
 「僕達は行かなくていいのですか?」
 「普通であれば、一緒に出廷して陛下をお待ちするんだが・・・どうなっているのか、さっぱり分からん」
 バルト達は黙って聞いていた。
 (今回は、本当に異例づくしで、先がさっぱり読めん。国王陛下は余程アレンの事が気になるらしい。それにアレンの行動も心配だ)バルトは重い溜め息を吐いた。

 部屋にノックの音が響き、外で待機している城内衛士が扉を開けると、お揃いの赤の上着を着た案内人が「陛下のお召しでございます」と告げた。
 (陛下のお召しだと!・・・もう、皆が謁見の大広間に揃って待っていると言う事か)

 アレン達は大広間の直ぐ近くの部屋を宛がわれていたので大広間の大扉の前に直ぐ着いた。扉前には、片側それぞれに四人づつ城内衛士が待機して、アレン達の到着と共に大扉は両側に開け放される。
 目の前には、入り口からずっと奥の高くなった壇上に国王陛下とお妃が見えた。大広間の両側には大勢の貴族達が並んで立っている。

 「赤の絨毯の敷かれている上の一番手前まで御進みください」案内人は手で示すと、扉の両側に分かれて立った。
 伯爵はアレンに軽く頷いて歩きだしたので、アレンも一歩分離れて付いて歩く。

 アレンは扉が開いた瞬間から、全ての目が注がれたように感じたが、なぜか一番強く感じるのは遠く離れた国王の眼差しのように感じられた。

 大広間の半分くらいに達した時、突然、国王の足元に寝そべっていたライオンが一頭立ち上がると、アレン達に向かって、咆哮ほうこうを上げた。それは、アレン達は元より、大広間中をビリビリと揺るがす程の大音量だった。耳を塞いだり、その場にルビる貴族や、女性の中には失神したりする者も多数出た。
 
 咆哮が終わると、ライオンは国王の椅子の裏に隠れてしまった。
 (これは、どう言う事だ・・・・)ライオネル国王は椅子の背から、身体を起こしアレンをじっと見た。
 もう、一頭のライオンは国王の足元にうずくまったままだが、低く唸っている。
 ライオン達は国王以外には、常に無関心だったので、非常に珍しい反応だ。

 アレン達は一度、足を止めたが、咆哮が止むと恐れる風もなく再び歩み始めている。
 (聞いていた通り、中々、肝が据わっているようだ)

 伯爵は赤の絨毯に足を運ぶと、そこで立ち止まる。アレンも、横に並んで立ち止まり、壇上の国王を見上げたが、目はチラチラとライオンを見てしまっていた。

 「久しぶりだな、ダンドリュウス伯。」ライオネル国王が声を掛けた。これも、仕来たりの一つで、下位の者から声を掛ける事はできない。

 「はい。一年ぶりに御座います。国王陛下に置かれましては、ますます御壮健のご様子、又、今回、このような機会を頂き、誠に有り難く思っております」胸に手を当て、軽く頭を下げるが顔は国王を見たままだ。

 「隣に連れているのが、その方の孫だな。名は何と申す」
 「お初に御意を得ます。故イルビスが息子、嫡男のアレリス・フォン・ダンドリュウスと申します。国王陛下のご尊顔を拝し、誠に嬉しく思っております」アレンも、胸に手を当てて、軽く辞儀をする。

 「うむ。中々、利発そうな子だな、伯爵。良き孫を得たようだ、嬉しく思うぞ」
 国王の言葉を受けて、伯爵は軽く頷くに留めた。できるだけ無用の言葉を発するのを避ける作戦だった。

 「ふふふふ。時に、伯爵。そなたの孫は”火の鳥”を手に入れたと聞く。その上、ラベントリー領で、べリング領主を助け、ジョイコブスなる男爵の侵略を止めたとか。素晴らしい活躍ぶりだ。さぞ、鼻が高いであろう」
 「お褒め頂き有難う御座います。しかし、いささか誇張された噂が出回り、困っております。アレリスはべリング領主のお手伝いを少ししただけに御座います」
 「それは誠か、アレリス。答えよ」

 伯爵が頷いて来たので、アレンは国王に直接返答を返した。
 「はい。祖父の言う通り私は少し、お手伝いしただけに御座います」
 「ジェイコブス男爵の守護魔獣、大蝙蝠を燃やしたのは、その方ではないのか」
 
 「はい。確かに大蝙蝠を燃やしたのは、私の守護魔獣でした。しかし、その後の男爵との取り決めや、戦いの後始末をしたのは、べリング兄弟達が力を合わせて成し遂げた事です。だから、私はほんの少し手伝だっただけです!」
 今度は伯爵の方を見る事無しに話し始めた。アレンは本当に、自分は少ししか手伝っていなのに立役者のように言われるのが嫌だった。だから、最後の言葉に力が入ってしまい強い否定の言葉に響いた。
 伯爵はそれを聞いてヒヤリとした。アレンは国王の言葉に、憤慨して言い返したのである。

 壇上の国王は、それを聞いて目を細めてアレンを見た。
 周りの者は息を詰め、大広間は見えない緊張感に支配された。

 「ハッ、ハッ、ハッ、ハ。」国王の笑い声が響いた。
 「そなたは余程、べリング兄弟を尊敬しているようだな。彼等の事が好きかね」
 「ハイ。とても尊敬しています。私の命の恩人であるばかりか、どこの誰とも知れない私を助け暖かく兄弟のように接して貰いました。それに、彼等と兄弟の契りを交わしました」

 「べリング家の者達と兄弟の契りとな」
 「はい。そうです」

 (下位である男爵家の者達と兄弟の契りを交わすとは、やはり・・かなり風変わりな常識の持ち主のようだな)
 ライオネルは少しの間、考えた。

 

 「では、どうだ。このわしの子供にならぬか?」そう言うと、アレンを見て二ヤリと笑った。








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 第六十七話・アレン、ライオンにかぶり付かれる。(仮)







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