異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

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第三章

第三十四話・アレン、フォートランドに帰郷する①(悲しい現実)

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サージェント家においての楽しい日々はあっと言う間に過ぎ、皆に惜しまれつつアレンとジョエルの二人は帰りは七日間でフォートランドに戻って来た。

せっかくフォートランドに戻って来て懐かしいなと思えたのも束の間で、アレンが城内に入るとぴりぴりした雰囲気が漂っていた。

(ふ~う。久しぶりだな、この雰囲気を暫く忘れてた。)

城内には、アレンがノーランド領に行くのと入れ違いにカトリーネス婦人達も戻って来ていて、ついこの間までホービス侯爵も押し掛けて其のまま滞在し、傍若無人に振舞っていたらしい。

マリーさんはぷりぷり怒っていた。なんでも、ホービス侯はアレンが居ないのを見計らって押し掛け、ホービス家から養子を迎え入れろと無理難題をしつこく伯爵に迫っていたそうだ。
おまけに、ホービス侯滞在中にカトリーネス婦人のお付きの一人アドラ婦人が偉そうに(元、下級貴族の出で他のメイド達を見下げている)食事の采配等を振い皆は大いに迷惑したと言う。

(なんだかお城の中が二つに割れているようで、余りいい雰囲気ではないな。やっぱり、僕のせいかな・・・。)

アレンはサージェント家の皆が羨ましかった。喧嘩していてもそこは兄妹で直ぐに仲直りできるし、お互いを思い合ってる。(僕とグラバル兄さまもあんな風になれたらいいな。)

荷物を置いて、ジョエルと一緒に伯爵の執務室を訪れた。

「お帰り、アレン。フラン(サージェント伯の愛称)の所はどうだったね?」

「はい、とても楽しく過ごさせて頂きました。ノーランドやルナリアから乗馬の手解きを受けて、少しなら速歩はやあしさせて乗る事ができるようになりましたよ。
それから、アルフォンスに僕は小柄でまだ身体が出来ていないので、レイピアの中でもスモールソードから始めるのがいいと少し型を教えてもらったりもしました。
それに、四兄妹と度々遠乗りに出掛けて森で昼食を食べたり魚釣りをして、凄く楽しくて充実した毎日でした。」
アレンは思い出すと楽しくて自然と畳み掛けるように話した。

「ふむ。そうかそれは良かった。やはり、ノーランド領で正解だったな。」

「ところで、お前に謝らなければならない、アレン。ノーランド領に行っている間にお前を傷つけた犯人を割り出そうとしたが駄目だったのだ。メイドを見たのがお前しかいなくて、他に見かけた者が見付からなかった。済まない、アレン。」

「とんでもない、僕が迂闊にも知らないメイドに付いて行ったのが悪かったんですから。」

「そうか、しかし、アレン。これからは名前も顔も知られているのだから今まで以上に気を付けなければいかんぞ。」

「はい。」

「うむ。それで、これからは側仕えの衛士を置き、一人での行動は控えるようにな。側仕えの衛士はそなたと気心の知れたジョエル、その方に頼むとしよう。どうかね?」

「はい、私の命に換えましてもアレン様をお守りします。」ジョエルが真剣に誓う。

「うむ、頼もしい。しかと、頼んだぞ。」

「はい。」

アレンは二人のやり取りを呆気に取られて見ていた。

「う~む。肝心のアレンが納得いかない様子だな。なにが不満かね?」

「納得いかないとか、そんなんじゃないです。側仕えの衛士はジョエルで嬉しいです。でも、”命に換えても”なんて言うのが嫌なんです。」

「なるほどな。しかし、アレン、命を懸けているのは何もジョエルだけでは無いぞ。私達貴族もそうだ、命を懸けて所領を守っている即ち民を守っているのだ、現にお前も命を懸けて守護魔獣を手に入れたてはないか。それは自分の為でもなく、皆んなを守りたいからではなかったかな。」

「・・・・。」

「アレン、お城に来る前に話したよね。貴族になりたい訳じゃ無い、ただ父親の事が知りたいだけだって。でも、俺が貴族になって魔獣を手に入れたら皆んなを守れるかも知れないと言ったら、皆んなを守る為に魔獣を手に入るって決めたよね。それと同じなんだ、俺はその時にアレンを命を懸けて守るって決めたんだよ。でもね、俺だってたった一つの命なんだからそう簡単には死なないよ、約束する。」

「アレン、彼ら衛士や他の兵士達も我が民の一人だ。そう簡単に死なせる訳がない、だから他の領主達と同盟を結び、皆が平和的に暮らせるよう我々も努力を怠らぬのだ。どうだね?分かってくれたかな。」

「はい、でもジョエルが危ない時はクッキーに頼んで守って貰う事にするよ。それならいいでしょう。」

「う~ん。なんか納得いくような、いかないような。」

「いや、それでよい。自分自身が危ない時や、周りの誰かをどうしても助ける時には魔獣を召喚してもいいんだよ。その為の守護魔獣だ。だが、召喚する時をよく考えるようにな。彼らとて不死身では無いのだ。」

「はい、分かりました。お爺様。」


二人は暇を請い、執務室を退出するとジョエルは兵舎に荷物を置きに行き厩舎で待ち合わせをする事にした、久しぶりリュゲルに会いに行くのだ。
(リュゲルが喜んでくれるといいな。)アレンの胸は期待に膨らみ自然と足取りも軽くなる。

アレンは厩舎に通じる廊下でグラバルと鉢合わせした。
「ただいま戻って参りました。」アレンは声を掛けたが、グラバルは無視して通り過ぎようとしたが振り返って彼と対峙した。

「お前、僕に恩を売ったと思い上がるなよ。」

「何のことですか?」

「ふん、分からないなら別にいい、どちだって困らない。只、お前が邪魔なだけだ。」

「僕は・・・貴族になりたいと思った事はありません、だから別に嫡男でなくてもいいんです。もし、兄さまが良ければ補佐に回りたいと思います。」

「やめろ!!兄と呼ぶなと言ったはずだ!父上の子は僕一人だ。それに嫡男にならなくていいだと?はっ、お前のそう言う所が大っ嫌いだ、何さまのつもりだ。お爺様はまだ、誰も嫡男だと決めてはおられない。現にお前をただの孫だと紹介しただけだ。思い上がるな。」

「でも、僕は兄・・・あなたと仲良くなりたいんです。どうすればいいですか。」

「はっ、絶対に無理だな。お前はなんにも分かっていない僕や母上がどんな気持ちでいるか。」

「では、教え」「黙れっ!!」

「いいか!僕も母上も、お前の事はおろかお前の母親の事を少しも知らされていなかった!!それがどう言う事か分かるか?僕の母上と父上は正式に婚姻を結んだのだ、それがどうだ、父上が亡くなられた途端もう一人子供が居たと知らされてみろっ!それは父上の僕達に対する裏切り行為だ!」

「!!」

「お前を見る度に父上が僕達を裏切っていたと突き付けられるんだぞ!!」

アレンは衝撃を受けて固まっていた、その様子を見てグラバルは少し溜飲を下げ最後に吐き捨てるように言って去って行った。

「お前は裏切りの象徴だ!分かったらさっさと出て行け!」









アレンはジョエルが探しに来るまでずっとその場所から動けずにいた。



結局その日は厩舎に行けず、ジョエルが心配そうに聞いてきてもた只、旅の疲れが出たと押し通して食事も取らずに部屋に籠った。






母さま、僕はどうしたらいいのですか?
お城に来ればこう言う事になると分かっていたから父さまが誰か教えてくれなかったのですか?

僕がここに居れば、父さまが兄さま達を裏切った事になってしまう。
でも、僕がここを出るとお爺様の他に守護魔獣を持っている人が誰も居なくなってしまう。

僕がここに居れば兄さま達を裏切り続ける。
僕がここを出ればお爺様やジョエル達を裏切ることになってしまう。

僕はほんとうにどうしたらいいのですか?

どうして何も教えてくれなかったのですか?母さま!!




アレンはその日悲しみで小さな胸が一杯になり、一睡もできなかった。














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