異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

さん

文字の大きさ
上 下
21 / 107
第二章

第二十一話・向こう側の世界②アレン大型魔獣に遭遇する。

しおりを挟む
アレンはクッキーを肩に乗せて再び歩きだした。
木々はますます密度を増して、時折どこからか動物や鳥類と思われる鳴き声が聞こえてきたが鬱蒼うっそうとした枝葉に遮られその姿を見る事はできなかった。

「やっぱり、森を出なくちゃ始まらないね、クッキー。」同意してくれているのか、キュウキュウと返事が返ってきた。(相棒みたいでいいな。)

バサッバサッバササッ、大きい羽音が頭の上から聞こえ、アレンが見上げると近くの木の枝に止まっているふくろうのような鳥と目が合った。

「梟にしては大きいと思わない?あれ?もしかしてかなり大きい?」アレンより、随分高い所に止まっているのに相当大きく見える。

梟はいきなり飛び立つとアレン目がけて急降下して来た。
「うわっ!」咄嗟に木の根元に跳び込んで屈み込み蹲った。
アレンはまだ剣も鉄砲も扱えないのでひたすら逃げるしか選択の余地がないのだ。 

それが伯爵の懸念でもあった。普通は”渡り”を何度か経験して、剣や弓の扱いか短銃、鉄砲を習得し扱える年齢に達してから向こう側に渡り、大型魔獣に備える準備をするものだ。
(それで、大型魔獣を殺す事はできないが追い払う・・ことができる時もある。駄目なら喰われて終わるだけだ。)

鋭い風切り音と大きな羽音が頭の上で響き、風と羽が身体を掠めて行った。
頭上で「グギャァアアー」と鳴き声がして飛び去って行った。

「あれ?助かったのかな?」アレンは半身を起して、梟を探したが、クッキーがいない事に気が付いた。
「あっ!クッキー?クッキーーー!」
(クッキーがいない!攫われちゃった!)アレンは慌てて周囲を見回したが見当たらない。

その時、上の方からフヨフヨと何かが落ちて来ているのに気が付いた。それはゆっくり風に乗ってアレンの方に漂って来た。
三本の尻尾を大きく広げうまく風に乗っている。

「クッキーー!良かった、攫われて食べられちゃったと思っ!ひゃあ!!」アレンはクッキーを抱き取ろうと手を差し出したが思わず引っ込めた。

クッキーは血塗ちまみれの大きな何かを咥えていた。よく見ると鳥の足の指でクッキーの倍の大きさだ。まだ、ぴくぴくと動いている。

地面に降りたクッキーはと例の大きな口を開け飲み込むと、それをモシャモシャ食べ始めた。


「・・・クッキー、君って凄い奴なのか、只の悪食なのか・・・」アレンは只、呆気に取られて見つめるしかなかっ
た。


クッキーが食後の毛繕いを始めだしたが、そのお腹はポヨンと膨れている。
「クッキー、そろそろ出発していいかな?」アレンは何となくクッキーに承諾を得たくなった。
(気に入らないと僕の指も食べられるかな?)そんな心境にしばし陥ったアレンであった。

一人と一匹は歩きだしたが、行けども、行けども大木と深い下ばえで森の終りが見えそうになく、辺りは薄暗くなってきていた。

「もしかして野宿をしないと駄目かな?だったら早目に寝るところを確保しないと・・・。」
クッキーがアレンから飛び降りて地面を跳ねるように駆けて行き、大きな大木の根元に行き着くと、上を向いてキュウキュウ鳴いて何かを訴えた。

「なあに?う~ん、葉っぱや枝が邪魔で良く見えないよ。」
クッキーは軽快に太い幹を伝って登って行くと、上の方から再びキュウキュウとアレンを呼んだ。
「上に、木のうろでもあるのかな?でも、一番低い枝にも届かないし、幹は太すぎて手が回らない。」

なんとかジャンプして低い枝を掴もうと跳び跳ねていると、クッキーが下りて来て枝から三本の尻尾を伸ばしてアレンの腕に巻き付けるとアレンを持ち上げ枝に捉まらせた。
アレンは枝を足掛かりにして身体を何とか持ち上げた。

「クッキー、ありがとう。身体だけじゃなくて、尻尾も伸びるんだ?それにしても凄い力だね。」
キュッキュッ、と自慢そうな鳴き声を出した。

アレンはクッキーに助けて貰いながら上に登って行くと入り口は小さいが中は大きくなっている洞が見つかり、覗き込むと木の実や何かの骨が片隅に集められていた。
「もしかして、クッキーのお家?お邪魔します。」アレンはここで夜を過ごす事に決め中に入った。

クッキーはアレンの胸の辺りに陣取ると身体を丸めて眠りに入ったが、器用に尻尾を広げて伸ばしアレンの身体の半分を覆ってくれた。
「ホント、便利な魔獣だね。暖っかいし、モフモフだ~。今日はちょっと疲れたから余計に癒される~。」

(それになんだか身体も少し重たくてだるい。今日は早目に寝て明日に備えよう。)アレンも尻尾に顔を埋め、クッキーを撫ぜながらいつしか眠りに落ちていた。
 







ニギャアアア、ミャーゴ!突然、鋭い鳴き声がしてアレンは飛び起きた。辺りは真っ暗だが洞の向こうに二つの目が爛々らんらんと燃えている。
どうやらネコ科の大型魔獣のようで身体が入らず、前足を伸ばしてアレンを捕まえようとしていた。

アレンは洞の奥に貼り着くとポケットから火打ち箱を取り出して火を灯し追い払おうとしたが、一瞬怯んだだけで又、鋭い爪の前足を繰り出しガリガリと洞を引っ掻いた。

「急いで追い払わないと。」アレンも足を蹴り出して何とか応戦しようとしたが、運悪く猫魔獣の爪がブーツに引っ掛かってしまい、ずるずると引っ張られた。

シャアアアアッ!クッキーが前足を振りかざし、魔獣の前足にで切り付けた。
ミギャアーー!!前足がパックリ引き裂かれ、魔獣は堪らず逃げて行った。


「・・・爪も伸びるンだ。ほんと、便利なんだか、凄いんだか。ウフフ、不思議魔獣だね、君って子は。」底の見えないクッキーの魔力にアレンは又、助けて貰った。

当のクッキーは元のサイズに戻り、のお手入れに余念がない。



++++++

第二十二話・向こう側の世界③アレン、魔獣と巡り遇う







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...