異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

さん

文字の大きさ
上 下
18 / 107
第二章

第十八話・アレン、向こう側に”渡る”②儀式を受けた夜(アレンとジョエル)

しおりを挟む
食事の後、アレンに宛がわれた部屋は余りにも豪華で一人で使うには広過ぎるベットと部屋だった。
アレンはジョエルとバルトに一緒に寝てくれるように頼んだがバルトは「その役目はジョエルに譲る。」と言って、宿舎に帰ってしまった。

(今日は、いろんな事がありすぎて正直どうしたらいいのか全く分からなかった。)アレンはベットの中でお城に着いてからの事を思い返した。

(グラバルという人は僕の従兄弟で、父さまはトラビスと言う人になるんだろうか?でも、伯爵様の態度からはそんな風に感じられなかった。だとしたら誰なんだろう?)

(それに儀式の事も。あの”炎のトンネル”は何だったんだろう、他の人に絶対に言っては駄目みたいだし、先に試したあの子は失敗したんだろうか?凄く怒ってた。僕が成功したのが知れると、何だか恨まれそうなくらいに。)

「アレン、眠れないの?」横で眠っていたジョエルが声を掛けて来てくれた。
「こんなにフカフカのベットじゃ無理ないよな。薄情な騎士バルト様は宿舎で今頃、高鼾だ。」
(ジョエルはいつも先回りして気遣ってくれる。)
「どうして、ジョエルはそんなに優しくしてくれるの?僕達、知り合ってまだたったの2日だよ。」

「それは俺がアレンの事が大好きだからだよ。お世辞じゃなく、アレンは凄い子だ、感心してる。いや、心から尊敬すらしてるよ。」
「僕は尊敬されるような事は何もしていないよ。」
「いいや、小さい時からお母さんを支えながら牧場で働いて、その上、森では病気のお母さんを庇いながら一歩も引かずに狼と戦うなんて、普通の子供には出来ないよ。大人の俺にだって無理さ。」
「誰だってきっとそうするよ。」

「いいや、そこさアレンの偉いところは。ちっとも偉ぶらないし、誰かを恨んだりもしていない。あんなに酷い事されたのにね。(ワイリーの事を指している。)それに、”儀式”大成功だったんだろう。感情を押えておられたけど伯爵様も大喜びだった。今日からアレンは貴族だ、堂々と胸を張っていればいいんだよ。」

「僕は貴族になるつもりはないよ。あのグラバルって人は、絶対に嫌がると思うんだ。きっと、他の人達もそうだよ。」
「ふん。そんな奴らは糞野郎だ、俺が打っ飛ばす!」ジョエルは起き上がって、力瘤を作って見せた。
「ありがとうジョエル。でも、ほんとうに貴族になりたいと思わないんだ。」

「あのさ、今日のお昼にジョエルが言ってくれたでしょ、家に来ていいよって。」アレンも起き上がり、ジョエルと向い合った。
「僕、ジョエルの家に行ったら駄目かなあ。僕はジョエルに兄弟にして貰って一緒の家族になりたい。」
「あぁ、アレン。君はなんてかわいい事を言ってくれるんだ。」ジョエルはひしとアレンを抱きしめた。

しばらくして、ジョエルはアレンを離し真剣な顔で話し始めた。

「俺はアレンが嫌なら、本当に攫って家に連れ帰って家族として暮らしたっていいんだ。その方がアレンを幸せにする事ができると分かっている。」

「でも、その一方で、アレンが守護魔獣を得て、このフォートランド領を治めてくれたら皆が平和に、幸せに暮らせるだろうなとも考えている。きっと、アレンなら素晴らしい領主になれると思ってる。でも、それはアレンにとって生易しい事じゃないのも分かっているんだ。きっと、厳しい茨の道になるだろう。」

ジョエルはガバッと、いきなり土下座した。
「ごめん、本当にご免、こんな卑怯な言い方しか出来なくて、ご免よアレン。」そして、何度も謝った。

(僕が貴族になって、守護魔獣を手に入れたら皆が本当に幸せになるんだろうか?あのグラバルって人では駄目なのかな?守護獣を持ってないから?分からない事が多すぎる。)

アレンはじっと考えている。

(本当に嫌な奴だ、俺と言う奴は!アレンは賢い子だ。俺の言った意味をちゃんと理解するだろう。そして、アレンならよりもを考えるだろう。こんな俺の幸せでさえ。)

「僕が守護魔獣を手に入れて貴族になったら、ジョエルは幸せになれる?バルトさんやフォートランド城下街の皆も?」

(あぁ。俺の馬鹿、一番の糞野郎は俺だ!)

++++++
③次はアレンと伯爵。”向こう側”に行けるといいな、私が。すいません。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

処理中です...