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第二章
第十八話・アレン、向こう側に”渡る”②儀式を受けた夜(アレンとジョエル)
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食事の後、アレンに宛がわれた部屋は余りにも豪華で一人で使うには広過ぎるベットと部屋だった。
アレンはジョエルとバルトに一緒に寝てくれるように頼んだがバルトは「その役目はジョエルに譲る。」と言って、宿舎に帰ってしまった。
(今日は、いろんな事がありすぎて正直どうしたらいいのか全く分からなかった。)アレンはベットの中でお城に着いてからの事を思い返した。
(グラバルという人は僕の従兄弟で、父さまはトラビスと言う人になるんだろうか?でも、伯爵様の態度からはそんな風に感じられなかった。だとしたら誰なんだろう?)
(それに儀式の事も。あの”炎のトンネル”は何だったんだろう、他の人に絶対に言っては駄目みたいだし、先に試したあの子は失敗したんだろうか?凄く怒ってた。僕が成功したのが知れると、何だか恨まれそうなくらいに。)
「アレン、眠れないの?」横で眠っていたジョエルが声を掛けて来てくれた。
「こんなにフカフカのベットじゃ無理ないよな。薄情な騎士バルト様は宿舎で今頃、高鼾だ。」
(ジョエルはいつも先回りして気遣ってくれる。)
「どうして、ジョエルはそんなに優しくしてくれるの?僕達、知り合ってまだたったの2日だよ。」
「それは俺がアレンの事が大好きだからだよ。お世辞じゃなく、アレンは凄い子だ、感心してる。いや、心から尊敬すらしてるよ。」
「僕は尊敬されるような事は何もしていないよ。」
「いいや、小さい時からお母さんを支えながら牧場で働いて、その上、森では病気のお母さんを庇いながら一歩も引かずに狼と戦うなんて、普通の子供には出来ないよ。大人の俺にだって無理さ。」
「誰だってきっとそうするよ。」
「いいや、そこさアレンの偉いところは。ちっとも偉ぶらないし、誰かを恨んだりもしていない。あんなに酷い事されたのにね。(ワイリーの事を指している。)それに、”儀式”大成功だったんだろう。感情を押えておられたけど伯爵様も大喜びだった。今日からアレンは貴族だ、堂々と胸を張っていればいいんだよ。」
「僕は貴族になるつもりはないよ。あのグラバルって人は、絶対に嫌がると思うんだ。きっと、他の人達もそうだよ。」
「ふん。そんな奴らは糞野郎だ、俺が打っ飛ばす!」ジョエルは起き上がって、力瘤を作って見せた。
「ありがとうジョエル。でも、ほんとうに貴族になりたいと思わないんだ。」
「あのさ、今日のお昼にジョエルが言ってくれたでしょ、家に来ていいよって。」アレンも起き上がり、ジョエルと向い合った。
「僕、ジョエルの家に行ったら駄目かなあ。僕はジョエルに兄弟にして貰って一緒の家族になりたい。」
「あぁ、アレン。君はなんてかわいい事を言ってくれるんだ。」ジョエルは緊とアレンを抱きしめた。
しばらくして、ジョエルはアレンを離し真剣な顔で話し始めた。
「俺はアレンが嫌なら、本当に攫って家に連れ帰って家族として暮らしたっていいんだ。その方がアレンを幸せにする事ができると分かっている。」
「でも、その一方で、アレンが守護魔獣を得て、このフォートランド領を治めてくれたら皆が平和に、幸せに暮らせるだろうなとも考えている。きっと、アレンなら素晴らしい領主になれると思ってる。でも、それはアレンにとって生易しい事じゃないのも分かっているんだ。きっと、厳しい茨の道になるだろう。」
ジョエルはガバッと、いきなり土下座した。
「ごめん、本当にご免、こんな卑怯な言い方しか出来なくて、ご免よアレン。」そして、何度も謝った。
(僕が貴族になって、守護魔獣を手に入れたら皆が本当に幸せになるんだろうか?あのグラバルって人では駄目なのかな?守護獣を持ってないから?分からない事が多すぎる。)
アレンはじっと考えている。
(本当に嫌な奴だ、俺と言う奴は!アレンは賢い子だ。俺の言った意味をちゃんと理解するだろう。そして、アレンなら自分の幸せよりも他人の幸せを考えるだろう。こんな俺の幸せでさえ。)
「僕が守護魔獣を手に入れて貴族になったら、ジョエルは幸せになれる?バルトさんやフォートランド城下街の皆も?」
(あぁ。俺の馬鹿、一番の糞野郎は俺だ!)
++++++
③次はアレンと伯爵。”向こう側”に行けるといいな、私が。すいません。
アレンはジョエルとバルトに一緒に寝てくれるように頼んだがバルトは「その役目はジョエルに譲る。」と言って、宿舎に帰ってしまった。
(今日は、いろんな事がありすぎて正直どうしたらいいのか全く分からなかった。)アレンはベットの中でお城に着いてからの事を思い返した。
(グラバルという人は僕の従兄弟で、父さまはトラビスと言う人になるんだろうか?でも、伯爵様の態度からはそんな風に感じられなかった。だとしたら誰なんだろう?)
(それに儀式の事も。あの”炎のトンネル”は何だったんだろう、他の人に絶対に言っては駄目みたいだし、先に試したあの子は失敗したんだろうか?凄く怒ってた。僕が成功したのが知れると、何だか恨まれそうなくらいに。)
「アレン、眠れないの?」横で眠っていたジョエルが声を掛けて来てくれた。
「こんなにフカフカのベットじゃ無理ないよな。薄情な騎士バルト様は宿舎で今頃、高鼾だ。」
(ジョエルはいつも先回りして気遣ってくれる。)
「どうして、ジョエルはそんなに優しくしてくれるの?僕達、知り合ってまだたったの2日だよ。」
「それは俺がアレンの事が大好きだからだよ。お世辞じゃなく、アレンは凄い子だ、感心してる。いや、心から尊敬すらしてるよ。」
「僕は尊敬されるような事は何もしていないよ。」
「いいや、小さい時からお母さんを支えながら牧場で働いて、その上、森では病気のお母さんを庇いながら一歩も引かずに狼と戦うなんて、普通の子供には出来ないよ。大人の俺にだって無理さ。」
「誰だってきっとそうするよ。」
「いいや、そこさアレンの偉いところは。ちっとも偉ぶらないし、誰かを恨んだりもしていない。あんなに酷い事されたのにね。(ワイリーの事を指している。)それに、”儀式”大成功だったんだろう。感情を押えておられたけど伯爵様も大喜びだった。今日からアレンは貴族だ、堂々と胸を張っていればいいんだよ。」
「僕は貴族になるつもりはないよ。あのグラバルって人は、絶対に嫌がると思うんだ。きっと、他の人達もそうだよ。」
「ふん。そんな奴らは糞野郎だ、俺が打っ飛ばす!」ジョエルは起き上がって、力瘤を作って見せた。
「ありがとうジョエル。でも、ほんとうに貴族になりたいと思わないんだ。」
「あのさ、今日のお昼にジョエルが言ってくれたでしょ、家に来ていいよって。」アレンも起き上がり、ジョエルと向い合った。
「僕、ジョエルの家に行ったら駄目かなあ。僕はジョエルに兄弟にして貰って一緒の家族になりたい。」
「あぁ、アレン。君はなんてかわいい事を言ってくれるんだ。」ジョエルは緊とアレンを抱きしめた。
しばらくして、ジョエルはアレンを離し真剣な顔で話し始めた。
「俺はアレンが嫌なら、本当に攫って家に連れ帰って家族として暮らしたっていいんだ。その方がアレンを幸せにする事ができると分かっている。」
「でも、その一方で、アレンが守護魔獣を得て、このフォートランド領を治めてくれたら皆が平和に、幸せに暮らせるだろうなとも考えている。きっと、アレンなら素晴らしい領主になれると思ってる。でも、それはアレンにとって生易しい事じゃないのも分かっているんだ。きっと、厳しい茨の道になるだろう。」
ジョエルはガバッと、いきなり土下座した。
「ごめん、本当にご免、こんな卑怯な言い方しか出来なくて、ご免よアレン。」そして、何度も謝った。
(僕が貴族になって、守護魔獣を手に入れたら皆が本当に幸せになるんだろうか?あのグラバルって人では駄目なのかな?守護獣を持ってないから?分からない事が多すぎる。)
アレンはじっと考えている。
(本当に嫌な奴だ、俺と言う奴は!アレンは賢い子だ。俺の言った意味をちゃんと理解するだろう。そして、アレンなら自分の幸せよりも他人の幸せを考えるだろう。こんな俺の幸せでさえ。)
「僕が守護魔獣を手に入れて貴族になったら、ジョエルは幸せになれる?バルトさんやフォートランド城下街の皆も?」
(あぁ。俺の馬鹿、一番の糞野郎は俺だ!)
++++++
③次はアレンと伯爵。”向こう側”に行けるといいな、私が。すいません。
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