霖雨

一碧

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あの日

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雨音が煩かった。

体の調子はまだよくない。
左腕は動かないし、足にもほとんど感覚がない。
辛うじて見つけたこの穴蔵も、この体では居心地が悪すぎた。
湿った腐葉土の臭いが漂ってきて、思わず顔をしかめる。
「何で、こんなことに」
答えはでないと知っていても、呟いてしまった。


あの日は、いつものように出掛けた。頼まれた買い物をして、帰りに市場を見て回り、家に帰れば夕飯の準備をしなければいけなかった。

その筈だった。

見慣れた玄関を開けると、家の中は静まり返っていた。君の姿が見えなくて、何故だか胸騒ぎがする。家のなかには誰もいない。病弱な君がこんな時間に一人で外出するとは思えない。

外を探しに行こうと玄関を開けて言葉を失った。

扉の向こうは闇に包まれていた。奈落へ続くような深い深い闇に。

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