僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めで汰

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エンドレス「地下迷宮」編

第35話 公開謝罪

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「そこまで! この勝負、ゴーディー・スピンズ、ダクロス・エンリケ、両者戦闘不能とみなしカイト・パンターパーティーの勝利とする!」

「うおおおおおおおおおお!」
「ジャイアントキリングぅぅぅ!」
「きたきたきたきた大儲け! 賭けに勝ったよ、かあちゃ~ん!」
「達人級パーティーを瞬殺するって、こいつら一体何者だよ……」
「こんなやべぇ奴らがなんで今まで無名だったんだ?」
「え、ちょっと待って!?  じゃあさ、ゴーディーたちに勝ったこいつらが、もしかしてエンドレスの今の────」


「最強?」


 さっきまでかんしゃく玉のように弾けていた冒険者たちがピタリと止まる。
 静寂の中、仰向けで倒れていたゴーディーが意識を取り戻す。

「なんで……俺はひっくり返ってる?」
「僕たちはパーティーで戦ったけど、あんた達はバラバラで戦った。その差だと思うよ」

「負けた……のか、俺が」
「『俺が』じゃなくてあんた達『GDペアが』ね」

「俺の動きが重かったのは、お前がなにかしてたのか?」
「僕の職業はバッファーだ」

「……あんなすごい仲間どこで見つけてきた?」
「ちょっとだけ運がよくてね」

「俺を……殺すのか?」
「まさか。最初から言ってるでしょ。ラクに謝ってって」

「……それだけ?」
「うん」

「ほんとか?」
「うんって言ってるでしょ。早く謝って。あれは本当に大切なものだったんだから」

 ガラッ……。

 ラクの作り出したゴーレムの手のひらが開き、中から完全に心が折れちゃってるダクロスの姿が現れる。
 一体のゴーレムが器用にダクロスの革ボンテージの腰のあたりをつまみ、ゴーディーの隣に下ろした。

「……お前やる気出せよ」
「はぁ? 無理だって。六系統とか馬鹿でしょ。あんなの人間業じゃないって。まぁ人間じゃないんだけど」

「俺たち、負けたらしい」
「完膚なきまでにね。正直ロン以外に負ける日が来るなんて思ってもなかった」

「謝らなくちゃいけないらしい」
「謝るわよ。ここで意地張る意味がわかんないって」

「俺は張りたい部分ちょっとあるんだが」
「勝手に張ってれば? てか、私あんたが獣人だったこと知らなかったんだけど?」

「言ってなかったからな」
「どんだけ信用ないの私。ムカつく」

「悪かったよ。嫌われたくなくて」
「はぁ? なにそれ。きっしょ」

「きしょとか言うなよ。傷つく」
「てか私より先に謝る相手がいるでしょ」

「ああ、そうだな」
「ったく。私、もうあんたの獣人イビリに付き合う気ないから。やりたかったら一人で勝手にやって」

「GDペア解散ってことか?」
「当然。獣人のくせに正体隠して獣人イジメとかこじらせすぎ。悪いけど冷めたから」

「いや、これには複雑な事情が」
「誰でも事情くらいあるでしょ。うざっ」

 ほっといたら延々二人で話してそうなので口を挟む。

「えっと、結局謝るの? 謝らないの?」

「「謝る!」」

 いがみ合ってるくせに妙に息が合った返答。

「あ、うん。じゃあ謝って。ってことで、ラク?」

「にょ」

 浮遊魔法レビテットを解除したラクが砂塵を描きながら地面に降りる。

「うぅ~……」

 焦らすかのようにゆっくりと正座の体勢へと移行したゴーディーとダクロスが──。


「すまなかったぁ~~~~~~~!」


 深々と土下座し、頭を地面に擦り付けた。

「ってことだけど、どう?」
「にょ。仕方ないにょ。別に怒ってもあのニワトリは返ってこないにょ」
「大切なものだったんだろ?」
「大切……まぁ、そうにょ。味的には好みだったけど、う~ん、でもやっぱり数年前のだから劣化してた……かにょ?」

 ……ん?

「味? いや、リュウくんたちとの思い出が……」
「思い出?」
「え、絆が刻まれてたんだろ?」
「絆……? 美味しいってことが絆にょ?」
「ん?」
「ん? なにかおかしいこと言ったにょ?」

 いまいち噛み合ってない。
 そう思った時。

「先生! パイセン! 見てたっす! スゴいじゃないっすか! やっぱ俺たちの憧れのコンビは最強っす!」

 さっき別れたばかりのリュウくんたち。

「え? なんでここに? 地元に帰ったんじゃ?」

「帰ろうとしたところに先生たちの決闘けんかの噂っすよ! そりゃ戻ってきて見るっすよ! あ、パイセン! そこでパイセンの好きなニワトリの頭いっぱい廃棄してあったんでもらってきました!」

 ……んんん?
 リュウくんの手には紐が通されたニワトリの頭がずらり。

「えと、それって……?」

「はい! パイセンが好きなやつなんで、これはいつもこうして持ち運びやすいようにしてるっす!」

「え、もしかしてあの僕がラクに渡したやつってさ……実はそこまで大切じゃなかったりする?」

「あ~、たしかに思い出は詰まってますけど、別に地元に帰ればいっぱいあるっすからね!」

「ん? じゃあ僕がゴーディーたちとここまで争ったのって……」

 怒り損?

 うそ~ん……。

 と、ちょっとした気まずさを感じていると。

「なぁ~に言ってるのっ! カイトは仲間がいきなり斬りつけられたことに怒った! そして正々堂々戦って勝って詫びを入れさせた! つまりは『カイト最高!』ってことよ!」

 と、ハルが若干強引に僕を持ち上げてくれた。
 サンキュー、ハル。
 おかげで救われた気分だよ。

「はいはぁ~い、じゃあみんな~、今日の決闘けんかはこれでおしまぁ~い! 解散してぇ~、かいさ~ん! はい、さっさと今日の依頼クエストに向かう~!」

 メラさんが手を叩いて解散をうながす。

「おう! またな~! バッファーの坊主!」
「魔法使いちゃん、違うパーティー来たかったら声かけて!」
「俺、あの金髪の子のファンになっちゃった!」
「アオちゃんかわい~!」
「ふふふ……賭けに負けた分、依頼クエストで取り戻さないと……」

 好き好きに言葉を発しながら去っていく野次馬冒険者たちと入れ替わりに、冒険者ギルド長ロン・ガンダーランドが修練場へと姿を現した。
 満を持して、って感じ。一気に場の空気がピリッと変わる。

 ザッ……。

 白ひげの大男──ロンがGDペアの前に仁王立つ。

「う……うぅぅ……」

 さっき応接室でロンに向かって散々でかい口を叩いてたGDペアは、正座したままバツが悪そうに言葉をつまらせる。

「さぁ~て……お前らには詳しく話を聞かせてもらわなきゃな。で、だって? ん?」

「あわわ……それはその……なんつーか勢いっつ~か……」
「ちなみに!」
「ひぃっ!」
「この少女、ラクは49階まで行って帰ってきたそうだ。お前らは42だっけ? 43?」
「41です……」
「あ? なんて!?」
「41です!」

 それを聞くとロンは満足げにニィと笑った。

「49から8、7、6、5、4、3、2、1……ってことは、あと8階層深く潜んなきゃ、お前らのギルド長就任はないみたいだなぁ?」
「49階……49階ってマジかよ……。いや、でもあのふざけた才能からしたらそれも……」
「だなっ! 俺も半信半疑だったが、さっきの戦いを見て納得がいったぜ! 要するに!」

 一息溜めたロンが続ける。

「……お前らはケンカを売っちゃいけない相手にケンカを売っちまったってことだ。俺でもよう売らんぜ、こんなおっかないやつらに」
「いや……ほんとに……」
「六系統、しかも無詠唱とか知ってたら手なんか出さないわよ……」

 おそらく二人の心の支えだったのだろう迷宮の踏破記録まで破られて完膚なきまでに叩きのめされた二人は、続くロンの言葉を聞いて深くうなだれる。

「てことで話、聞かせてもらうかのぅ? ボンテージの言ってた『ヤバそうなポーション』についてもな」
「はい……」

 耳もしっぽもシュンとしおれたGDペア。
 二人を見ながら、なんとなくふわっとしちゃった事態の収集をロンがつけてくれたことに僕は感謝した。
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