僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めで汰

文字の大きさ
上 下
7 / 50
エンドレス「地下迷宮」編

第7話 うゆゆ?

しおりを挟む
「おと~しゃま!」

 俺の足にしがみついてくる裸の女の子スライム。

 いや、女の子っていうかこれ……。

 幼女?

 91歳の死にかけスライムを若返らせたら幼女スライムになって? 懐かれて? そんでもって父親だと間違われちゃいました?

 どゆこと?

 ボーゼンとしてるとハルの声。

「カイト!」

 ドキッ。まだハルのタメ語に慣れない。
 タメ語でいいって言ったの僕なのにね。

「な、なに?」

「その子……!」

 あ、うん。モンスターだもんね。若返らせたらなんかステータス異常に高くなっちゃったし。しかも人型に変化だなんて厄介きわまりな……。

「かわいいいいい~~~~!」

 えぇ……?

「見て見てカイト! この子めちゃくちゃかわいくない!? あ~ん、もうぷにっぷに!」

 ハルは幼女スライムのほっぺたを人差し指でぷにぷに押す。
 押されるたびに幼女スライムのほっぺたはぽよんぽよんお餅みたいに反発する。

「あぅ……うゅゅ……」

 なすがままにされる幼女スライム。

「あの? ハル? 危険だからさ。その子めちゃくちゃステータス高くなっちゃったから」

「え~? 危険~? 絶対そんなわけないって! こんなにかわいい子が危険だなんて! ね~!?」

 ハルのほっぺたと幼女スライムのほっぺたがペタ~。
 あぁ、気持ちよさそう……。
 じゃない!
 ほんとに危ないんだって!

 とはいえ。

「うゆ? うゆゆ?」と言いながらハルになでなでモミモミさわさわぷにぷにされている無防備幼女スライムは──。

 かわいい。

 たしかにかわいい。

 なんなら鬼かわいいくらい言ってもいい。

 なんだ? これが萌えってやつなのか?

 全身水色。
 身の丈僕の腰くらい。
 髪が長くて手足が短い。
 ほっぺたぷにっぷに。
 お目々が垂れててくりっくり。
 お鼻ちっちゃ!
 ちっちゃな唇は「む~」と突き出てる。
 髪の先っぽはくるんってなってるし、体の周りには水色の泡みたいなのがポンって浮かんでは消えている。

 改めて僕の人生を振り返ってみると野生の幼女ってものに遭遇したのはこれが初めてかもしれない。

 いや、野生じゃなくても養殖の(?)幼女だったとしてもだ。

 つまり初幼女。

 僕はずっと田舎でじいちゃんと二人で暮らしてた。
 その間に会ったのはたまに尋ねてくる大人くらい。
 だからこれが幼女との初遭遇。初エンカウント。

 幼女と言ってもまぁこれスライムではあるんだけど。

「ねぇカイト。この子、もしかしたらあなたのことお父さんだと思ってるのかも」

「え、なんで?」

「ほら、生まれて最初に見たものを親と思い込む動物とかいるじゃない?」

「え~、なにそれ」

 幼女スライムを後ろから抱きかかえたハルが僕を指さして「お父さん?」って聞く。

 すると幼女スライムが「うゆゆ……うん、おと~しゃま!」って嬉しそうに答える。

「マジかよ~。勘弁してくれよ16歳で子持ちとか……」

「え、そこ!?」

「っていうか魔物でしょ? 懐かれても困るよ」

「じゃあなに? こんな可愛い子をここに置いていくってわけ? こんなに懐いてるのに?」

「いやそういう問題じゃなくてさ、例えばこの子を町に連れて行ったらどうなるさ? すぐスライムだってバレて殺されちゃうって。だからムリ、連れて行くとか」

「あう……たしかに……」

 ホッ。
 やっとわかってくれたか。
 いくら可愛くても萌えてても僕のことを父親だと思いこんでたとしても魔物を町に連れて行くなんてことはできない。
 たしかにちょっと後ろ髪を引かれる気持ちはある。
 でも、ここで91歳まで生き延びてきたスライムだ。
 ここにいる限り少なくとも死ぬってことはないだろう。
 安全なはず。
 だからここにいるのが彼女のためにもいいんだよ、うん。

 ハルが抱きかかえていた幼女スライムを名残惜しそうに地面に下ろす。

 急に解放された幼女スライムは「??」な顔をしている。

「ごめんな、僕らはもう行かなきゃいけないんだ。それから僕は君のお父さんでもなんでもない。だからここでお別れだ。いつかほんとうのお父さんに会えるといいね」

 幼女スライムの頭をそっとなでる。

「……ごめんね」

 ハルも申し訳無さそう。

「ほら、行こう」

 ハルの背中を押して前を向かせる。これ以上なさけは禁物だ。

「うゆゆ……うゆゆぅ……」

 あぁ……嘘でしょ……背後から泣き声が聞こえるんだけど……。

「おとうしゃまぁ……おかあしゃまぁ……私を置いて行かないでぇ……おねがぁい……うゆゆゆ……」

 あああ……罪・悪・感!
 っていうかもう無理!
 振り向く。
 幼女スライムが立ったままびえんびえん泣いてる。
 うわ、マジごめんって。

「カイト! やっぱり連れて行こう、この子!」

 ハルが幼女スライムに駆け寄って抱きしめる。

「うん」

 あ~だめだめ。
 これを見捨てていけるほど僕は非情じゃないって。
 でもだからといって町には連れていけないわけで……。
 う~ん、一体どうしたら……。

「あ、そうだ!」

 ハルがなにか思いついたっぽい。

「ねぇ、アオちゃん?」

「アオちゃん……?」

「うん、青いからアオちゃん。ねぇ、アオちゃん。あなた形を変えられるんでしょう? それならさ、小さくなったり出来ない?」

「うん……できりゅ」

 幼女スライム──もとい「アオちゃん」は、そう答えるとぎゅるんって小さな飴玉みたいになった。

「え、こんなに小さくなれるの!?」

「うゆ、なれりゅ」

 飴玉がしゃべった。

「すごい! これなら連れていけるね!」

「そうだね」

 僕はかばんのポケットにそっとアオちゃんを優しくしまうと、なだらかな一本道をゆっくりゆっくりとのぼっていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...