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生き残れ「地下迷宮」編
第51話 女子と女子~ズ
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【二十五階層】
【石化】
ビキビキビキッ!
「なるほど……全部石にしちゃえばトラップも関係ないってことなのねぇ」
セレアナが感心した様子で漏らす。
「ああ、鑑定して罠を見つけて、石化で固めていく。これなら何の問題もなく進めるはずだ」
「しかし、よくそんなこと思いつくな」
下半身が蛇、上半身が人間のラミアが口をポカンと開けている。
「最初に思いついたのはルゥだよ。なっ?」
「え、あ、いえ、私なんて……あはは……。今は何も出来ないですし……」
大悪魔の家に忍び込んだ時。
煙突内のトラップを全部石化で固める、というアイデアを思いついたのはルゥだ。
「へぇ、ゴンゴル……ルゥ、さん……。人間になったってのは、本当なんですね……」
アルラウネのアルネがしずしずと確認する。
「あ、はい……フィードさんにスキルを奪ってもらったら人間になれました……」
「人間……に…………ごくり……」
ラミアのカミラの瞳が妖しく輝きを増す。
「ちょっと、あなたたち! 私の友達になにかしたら、ただじゃおかないからねっ!」
キッとカミラを睨みつけ、リサがルゥの前に立ちはだかる。
「は? 一度も学校に来たことのないバンパイア……いや、『元』バンパイア? が、なんのつもりだ? お前から先に食ってやろうか、あ?」
ピリついた空気が流れる。
いくらオレに好意的だった女子~ズだからといって、魔物であることに変わりはない。
日光と人の吐いた息さえあれば生きていけるアルラウネ。草食のケルピー。生態自体が、よくわからないローパー。
その三人とは違って、完全肉食のラミアは「人を食う」という魔物の本能を剥き出しにしてリサに迫る。
「まぁまぁ、二人とも。今は一緒に脱出を目指す仲間なんだから。まずは出口を見つけることに専念しよう」
微かに震えるリサの肩をそっと押して、ラミアから引き離す。
「チッ! 私は、スキルで寝ずにいられるんだ。せいぜい寝る時は背後に気をつけて眠るんだなっ」
なかなか嫌な捨て台詞を吐き捨てるラミア。
女子~ズの「いつメン」でもあるローパーのパルは、どっち側につくことも出来ずオロオロと狼狽えている
一方、諍いに一切関わってこなかったセイレーンのセレアナがため息をつく。
「はぁ~、くだらないですわぁ……。人間と魔物、どちらも耳があってワタクシの歌を聴くことが出来るというのに……。どちらも等しくワタクシのファンになるべき存在にすぎませんわぁ。それが争うだなんて……本当にくだらないですわぁ」
「いや、セレアナ? お前も最初、オレにノリノリで腐った飯食わせたりしてたよな?」
「……そうだったかしらぁ? あまり覚えていませんわぁ。わたくし、過去よりも栄光ある未来にしか興味がございませんの」
「えぇ~……まさかのすっとぼけ……?」
ある意味大物だなと思ってると、アルラウネのアルネが話しかけてきた。
「あ、でも、フィード。そんなにスキルを使って魔力は大丈夫? こんなにいっぱい石化したら、消費が激しそう」
「ああ、それは管理できてるから大丈夫だよ。オレは自分の魔力量が数字で見えてるから」
「鑑定……っていうのが出来るんだっけ? 前は、あまり気にしたことなかったんだけど、フィードのスキル?」
「ああ、そうだ。今は、見た相手の名前と種族、スキルにレベル、体力と魔力がわかるぞ」
「へぇ……レベル? とかよくわからないんだけど、私はどれくらいなの?」
「アルネか? え~っと、アルネはだなぁ……」
名前:アルネ
種族:アルラウネ
レベル:17
体力:1077
魔力:6011
スキル:【植物知識】
「ってとこだな」
「うん……たしかに私は体力はないと思う。でも、これが多いか少ないのか……」
「魔力はかなり多いよ。レベルも高いほうだと思う。あ、レベルっていうのは何回くらい飛躍的に成長したかの目安みたいなものかな」
「わたくしは、どのくらいなのかしらぁ?」
「セレアナは……」
名前:セレアナ
種族:セイレーン
職業:無職
レベル:9
体力:2514
魔力:971
職業特性:なし
スキル:【美声】
「あ、あれ……? 魔物なのに職業欄と職業特性欄があるな……。なんでだろ、普通魔物には表示されないのに……」
「あら? わたくしは特別ですの? さすがはワタクシ! きっと世界の歌姫という素晴らしい職業がすでに刻まれておりますのね! さぁ、フィード! 発表するがいいわぁ! わたくしの素晴らしい職業をッ!」
「え~っと……無職……」
「…………へ?」
「あ、うん。無職って書いてあるね」
「む……む……無職……このワタクシが……歌手でもスターでもなく……」
「あ、うん。よくわからないけど、人間だと冒険者ギルドで適正の検査を受ければ職業は誰でも授かれるよ……。たしか吟遊詩人とか歌手もあった気がする。ただ、セレアナは魔物だから受けられるか知らないけど……」
「そ、そうですの? わたくしが世界の歌姫になるのは人間界で検査? を受けなければならないと……? 人化していけば大丈夫なのかしら……ブツブツ……」
「ちなみにケプは……」
名前:ケプ
種族:ケルピー
レベル:11
体力:4970
魔力:589
スキル:【潜水】
「ぶるる……」
満足気に鼻を鳴らす半馬半魚のケプ。
体力が一番高いから喜んでいるんだろうか。
「で、カミラは……」
「わ、私はいいよっ!」
「でも、三日間命を預ける間柄なんだから、お互い知っておいたほうがいいと思う。実際、オレたちは、そのお陰で補い合って五人でも生き延びてこられたし」
「……チッ、しょうがねぇな……さっさと見ろよ」
「うん、ありがと」
「べ、別にお前のために見せてやってるわけじゃないからな! 私が生き延びるためだぞ!」
「わかってるよ。で、カミラは、っと……」
名前:カミラ
種族:ラミア
職業:無職
レベル:12
体力:2293
魔力:1978
職業特性:なし
スキル:【不眠】
「あれ? カミラも職業欄あるな……?」
「でも、それ以外は、なんか普通ですわね」
「うるせ~よ! セレちゃんより総合的に高いだろ!」
セレちゃん。
カミラはセレアナのことをセレちゃんと呼んで慕っている。
女子~ズの中ではガラの悪い方のカミラがボスのセレアナに素直に従ってるのは、シンプルに彼女のファンだからだ。
学校でもたまにセレアナが歌をワンフレーズ口ずさむと、瞳をうるうるさせてジッと彼女を見つめて聞き入っていた。
画一的にべた褒めするスキュラよりも、ガチなファン感が出てる。
そういう感じの「わりと重めのファン」が、このラミアのカミラだった。
一方、おとなしい感じのアルラウネはセレアナの押しの強さに押されて女子~ズに参加してる感じだ。
ケルピーのケプはよくわからない。
でも、これからケプのこともわかっていくのかもしれない。
謎生物だと思ってたローパーのパルが、実はほんわか系の寂しがり屋だと一緒に過ごして知ったように。
そのパルは、ずっと持っていた大悪魔から解放され、今は快適そうに蟻の前脚で作った槍を振りながら一行の最後尾から周囲を警戒している。
で、大悪魔はといえば──。
「キャハっ! 罠をいくら防いでも、出口見つけられなかったら、貴様らの負けっ! キャハハッ!」
オレの出した触手でぐるぐる巻きにされ、ケルピーの背中に乗せられている。
輸送されてる罪人みたいだ。
そんな大悪魔を無視して、セレアナが聞いてくる。
「で、あなたたちの能力はどれくらいなのかしらぁ?」
オレはリサ、ルゥ、パルのステータスを伝える。
「ふむ……パルは意外とやる子でしたのね……」
ふるふるふる!
得意気に最後尾で揺れるパル。
その触手は金色に光り輝いている。
罠と一緒に天井の発光ゴケまでまとめて石化したため、今はパルの触手の光だけが頼りだ。
「そして人間は、やはり弱いですわねぇ……。わたくしのファンとしては別に弱くてもいいんですけど、これで頼りになりますの?」
「わ、私は……!」
ムキになって反論しようとするリサを片手で制止し、セレアナの目を見つめる。
「頼りになるよ。オレたちは暗闇の中を八時間移動し続けたんだけど、彼女たちが居なかったら、きっとここでみんなに会うこともなかったと思う。それに、ここから先は生き残るためのサバイバルだけじゃなくて、出口を探すための観察眼やひらめきも大切になってくる。この大悪魔のことだ。きっと、思いもかけない場所に出口を隠してると思うし」
「……たしかにそうですわねぇ。ゴンゴル、リサ……二人を侮辱したことをお詫びいたしますわぁ」
そう言って、セレアナは二人に頭を下げる。
「セレアナさん! そ、そんな……! 頭を上げてください!」
ルゥが、慌てた様子で両手をパタパタさせている。
「で、フィードはどうなんだ? その、ステータス? っての」
オレは、自分のステータスを伝えた。
「おいおい……人間のくせに私らの中で一番魔力高いじゃねーか……。罠も見破れるし、石化で固められるし、もう全部お前一人でいいんじゃね~の?」
「いや……魔物だった頃のルゥやリサの方が魔力は高かったよ。それに、オレだって手は二本しかないし、目は二つしかない。夜は寝ないといけないし、一人でなんでも出来るわけじゃない。だから、みんなの力が必要なんだ。もちろん、オレも出来ることは全力でやる。ここにいるみんなだけでなく、向こう側に行ったクラスのみんなのことも、オレは誰一人欠けることなく助けたいと思ってるんだ」
「そんなもんかぁ? まぁ、お前はみんなのスキル盗んだわけだし、その分しっかり働いて借りを返せよ。ってか、なんで私達のスキルは盗まなかったんだ?」
「あぁ……それは……」
前日に盗んだらオレの吸収スキルがバレるから当日盗もうかと……なんて本当のことを言ったら険悪になるよな……。
と、どう答えようか考えを巡らせていると。
「ヒヒンっ!」
ケルピーが、鳴き声で通路が行き止まりであることを示した。
石で固められた石造り風の通路。
その最奥には──。
「くだりの階段、ですわね……」
「それと……え? 出口……? ですか……?」
下の階層へと続く階段と。
『 で ぐ ち 』と書かれた、見え見えの罠の扉が存在していた。
【タイムリミット 二日二十三時間十二分】
【現在の生存人数 五十三人】
【石化】
ビキビキビキッ!
「なるほど……全部石にしちゃえばトラップも関係ないってことなのねぇ」
セレアナが感心した様子で漏らす。
「ああ、鑑定して罠を見つけて、石化で固めていく。これなら何の問題もなく進めるはずだ」
「しかし、よくそんなこと思いつくな」
下半身が蛇、上半身が人間のラミアが口をポカンと開けている。
「最初に思いついたのはルゥだよ。なっ?」
「え、あ、いえ、私なんて……あはは……。今は何も出来ないですし……」
大悪魔の家に忍び込んだ時。
煙突内のトラップを全部石化で固める、というアイデアを思いついたのはルゥだ。
「へぇ、ゴンゴル……ルゥ、さん……。人間になったってのは、本当なんですね……」
アルラウネのアルネがしずしずと確認する。
「あ、はい……フィードさんにスキルを奪ってもらったら人間になれました……」
「人間……に…………ごくり……」
ラミアのカミラの瞳が妖しく輝きを増す。
「ちょっと、あなたたち! 私の友達になにかしたら、ただじゃおかないからねっ!」
キッとカミラを睨みつけ、リサがルゥの前に立ちはだかる。
「は? 一度も学校に来たことのないバンパイア……いや、『元』バンパイア? が、なんのつもりだ? お前から先に食ってやろうか、あ?」
ピリついた空気が流れる。
いくらオレに好意的だった女子~ズだからといって、魔物であることに変わりはない。
日光と人の吐いた息さえあれば生きていけるアルラウネ。草食のケルピー。生態自体が、よくわからないローパー。
その三人とは違って、完全肉食のラミアは「人を食う」という魔物の本能を剥き出しにしてリサに迫る。
「まぁまぁ、二人とも。今は一緒に脱出を目指す仲間なんだから。まずは出口を見つけることに専念しよう」
微かに震えるリサの肩をそっと押して、ラミアから引き離す。
「チッ! 私は、スキルで寝ずにいられるんだ。せいぜい寝る時は背後に気をつけて眠るんだなっ」
なかなか嫌な捨て台詞を吐き捨てるラミア。
女子~ズの「いつメン」でもあるローパーのパルは、どっち側につくことも出来ずオロオロと狼狽えている
一方、諍いに一切関わってこなかったセイレーンのセレアナがため息をつく。
「はぁ~、くだらないですわぁ……。人間と魔物、どちらも耳があってワタクシの歌を聴くことが出来るというのに……。どちらも等しくワタクシのファンになるべき存在にすぎませんわぁ。それが争うだなんて……本当にくだらないですわぁ」
「いや、セレアナ? お前も最初、オレにノリノリで腐った飯食わせたりしてたよな?」
「……そうだったかしらぁ? あまり覚えていませんわぁ。わたくし、過去よりも栄光ある未来にしか興味がございませんの」
「えぇ~……まさかのすっとぼけ……?」
ある意味大物だなと思ってると、アルラウネのアルネが話しかけてきた。
「あ、でも、フィード。そんなにスキルを使って魔力は大丈夫? こんなにいっぱい石化したら、消費が激しそう」
「ああ、それは管理できてるから大丈夫だよ。オレは自分の魔力量が数字で見えてるから」
「鑑定……っていうのが出来るんだっけ? 前は、あまり気にしたことなかったんだけど、フィードのスキル?」
「ああ、そうだ。今は、見た相手の名前と種族、スキルにレベル、体力と魔力がわかるぞ」
「へぇ……レベル? とかよくわからないんだけど、私はどれくらいなの?」
「アルネか? え~っと、アルネはだなぁ……」
名前:アルネ
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魔力:6011
スキル:【植物知識】
「ってとこだな」
「うん……たしかに私は体力はないと思う。でも、これが多いか少ないのか……」
「魔力はかなり多いよ。レベルも高いほうだと思う。あ、レベルっていうのは何回くらい飛躍的に成長したかの目安みたいなものかな」
「わたくしは、どのくらいなのかしらぁ?」
「セレアナは……」
名前:セレアナ
種族:セイレーン
職業:無職
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体力:2514
魔力:971
職業特性:なし
スキル:【美声】
「あ、あれ……? 魔物なのに職業欄と職業特性欄があるな……。なんでだろ、普通魔物には表示されないのに……」
「あら? わたくしは特別ですの? さすがはワタクシ! きっと世界の歌姫という素晴らしい職業がすでに刻まれておりますのね! さぁ、フィード! 発表するがいいわぁ! わたくしの素晴らしい職業をッ!」
「え~っと……無職……」
「…………へ?」
「あ、うん。無職って書いてあるね」
「む……む……無職……このワタクシが……歌手でもスターでもなく……」
「あ、うん。よくわからないけど、人間だと冒険者ギルドで適正の検査を受ければ職業は誰でも授かれるよ……。たしか吟遊詩人とか歌手もあった気がする。ただ、セレアナは魔物だから受けられるか知らないけど……」
「そ、そうですの? わたくしが世界の歌姫になるのは人間界で検査? を受けなければならないと……? 人化していけば大丈夫なのかしら……ブツブツ……」
「ちなみにケプは……」
名前:ケプ
種族:ケルピー
レベル:11
体力:4970
魔力:589
スキル:【潜水】
「ぶるる……」
満足気に鼻を鳴らす半馬半魚のケプ。
体力が一番高いから喜んでいるんだろうか。
「で、カミラは……」
「わ、私はいいよっ!」
「でも、三日間命を預ける間柄なんだから、お互い知っておいたほうがいいと思う。実際、オレたちは、そのお陰で補い合って五人でも生き延びてこられたし」
「……チッ、しょうがねぇな……さっさと見ろよ」
「うん、ありがと」
「べ、別にお前のために見せてやってるわけじゃないからな! 私が生き延びるためだぞ!」
「わかってるよ。で、カミラは、っと……」
名前:カミラ
種族:ラミア
職業:無職
レベル:12
体力:2293
魔力:1978
職業特性:なし
スキル:【不眠】
「あれ? カミラも職業欄あるな……?」
「でも、それ以外は、なんか普通ですわね」
「うるせ~よ! セレちゃんより総合的に高いだろ!」
セレちゃん。
カミラはセレアナのことをセレちゃんと呼んで慕っている。
女子~ズの中ではガラの悪い方のカミラがボスのセレアナに素直に従ってるのは、シンプルに彼女のファンだからだ。
学校でもたまにセレアナが歌をワンフレーズ口ずさむと、瞳をうるうるさせてジッと彼女を見つめて聞き入っていた。
画一的にべた褒めするスキュラよりも、ガチなファン感が出てる。
そういう感じの「わりと重めのファン」が、このラミアのカミラだった。
一方、おとなしい感じのアルラウネはセレアナの押しの強さに押されて女子~ズに参加してる感じだ。
ケルピーのケプはよくわからない。
でも、これからケプのこともわかっていくのかもしれない。
謎生物だと思ってたローパーのパルが、実はほんわか系の寂しがり屋だと一緒に過ごして知ったように。
そのパルは、ずっと持っていた大悪魔から解放され、今は快適そうに蟻の前脚で作った槍を振りながら一行の最後尾から周囲を警戒している。
で、大悪魔はといえば──。
「キャハっ! 罠をいくら防いでも、出口見つけられなかったら、貴様らの負けっ! キャハハッ!」
オレの出した触手でぐるぐる巻きにされ、ケルピーの背中に乗せられている。
輸送されてる罪人みたいだ。
そんな大悪魔を無視して、セレアナが聞いてくる。
「で、あなたたちの能力はどれくらいなのかしらぁ?」
オレはリサ、ルゥ、パルのステータスを伝える。
「ふむ……パルは意外とやる子でしたのね……」
ふるふるふる!
得意気に最後尾で揺れるパル。
その触手は金色に光り輝いている。
罠と一緒に天井の発光ゴケまでまとめて石化したため、今はパルの触手の光だけが頼りだ。
「そして人間は、やはり弱いですわねぇ……。わたくしのファンとしては別に弱くてもいいんですけど、これで頼りになりますの?」
「わ、私は……!」
ムキになって反論しようとするリサを片手で制止し、セレアナの目を見つめる。
「頼りになるよ。オレたちは暗闇の中を八時間移動し続けたんだけど、彼女たちが居なかったら、きっとここでみんなに会うこともなかったと思う。それに、ここから先は生き残るためのサバイバルだけじゃなくて、出口を探すための観察眼やひらめきも大切になってくる。この大悪魔のことだ。きっと、思いもかけない場所に出口を隠してると思うし」
「……たしかにそうですわねぇ。ゴンゴル、リサ……二人を侮辱したことをお詫びいたしますわぁ」
そう言って、セレアナは二人に頭を下げる。
「セレアナさん! そ、そんな……! 頭を上げてください!」
ルゥが、慌てた様子で両手をパタパタさせている。
「で、フィードはどうなんだ? その、ステータス? っての」
オレは、自分のステータスを伝えた。
「おいおい……人間のくせに私らの中で一番魔力高いじゃねーか……。罠も見破れるし、石化で固められるし、もう全部お前一人でいいんじゃね~の?」
「いや……魔物だった頃のルゥやリサの方が魔力は高かったよ。それに、オレだって手は二本しかないし、目は二つしかない。夜は寝ないといけないし、一人でなんでも出来るわけじゃない。だから、みんなの力が必要なんだ。もちろん、オレも出来ることは全力でやる。ここにいるみんなだけでなく、向こう側に行ったクラスのみんなのことも、オレは誰一人欠けることなく助けたいと思ってるんだ」
「そんなもんかぁ? まぁ、お前はみんなのスキル盗んだわけだし、その分しっかり働いて借りを返せよ。ってか、なんで私達のスキルは盗まなかったんだ?」
「あぁ……それは……」
前日に盗んだらオレの吸収スキルがバレるから当日盗もうかと……なんて本当のことを言ったら険悪になるよな……。
と、どう答えようか考えを巡らせていると。
「ヒヒンっ!」
ケルピーが、鳴き声で通路が行き止まりであることを示した。
石で固められた石造り風の通路。
その最奥には──。
「くだりの階段、ですわね……」
「それと……え? 出口……? ですか……?」
下の階層へと続く階段と。
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