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おじさん、探索する

第36話 おじさん、ほけ~っとする

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 ほけぇ~。

 ぽかぽか。

 はぁ~……。

 天気、いいなぁ~……。

 平地の都、カイザス。
 豊かなエメロー川に恵まれた治水に長けた衛生都市。
 そこに流れ込んでくる水路はもちろん石畳で整えられていて──。

 穴場。

 誰もいない。

 こうやってお昼時にボ~っとするのに最適。

 特にこの石畳がいいよね~。

 お日様でぽかぽかにあったまっててさ。

 横になってもさぁ~。

 野っぱらと違って虫がいないんだよぉ~。

 だから思う存分ゴロゴロできる。

 ほらぁ、こうやってぇ~!

 ゴロゴロ~ゴロゴロ~。

 はぁ……最高じゃぁ~……。

 冒険者の時はさぁ、ずっとスイッチがオンの状態だったからさぁ、こうやってボーッと気を抜く暇もなかったんだけどさぁ。

 今の俺にはこういう時間が必要。

 ほら、若い時って寝て起きたら体力満タンじゃん?

 でも、おじさんになるとこういう癒やしの時間も作らないと回復しないんだって。

 昔は町中でボーッと座って日光浴してるおっさんが理解できなかった。

 けど、今は理解できる。めっちゃ。

 世のおっさんたちはさぁ、こうやってエネルギーチャージしてたんだよなぁ。

 偉いよ、おっさんは。

 こうやってエネルギーチャージしながら健気に頑張って生きてるんだから。

 さらさら~。

 あぁ~、このさらさら流れる水の音も癒やされるぅ~。

 やっぱ水だよな、水。

 川最高。水路最高。

 森生活の時は水の確保が大変だったからなぁ。
 風呂に入る日なんか半日水くみで潰れたくらい。
 その点、カイザスでは井戸もあって水使いたい放題。
 なんだかんだ来たら来たでいいもんだなぁ……都会。
 人混みや人付き合いのわずらわしさがあるからこそ、逆にこういう一人の時間の貴重さが際立つっての?
 メリハリだよな。
 まぁ、おじさんになったらメリハリの「ハリ」よりも「メリ」に割く時間のほうが必要になってくるんだけど。
 まさにこんな風にね……。

 だらだら~。
 ごろごろ~。
 ふにゃふにゃ~。

(ふふふふ……今の俺は誰にも止められん……)

 そうやって全力で石畳の上をごろごろしていると、道の方から声をかけられた。

「ケントさん?」

 ……ハッ!(正気に戻る)

「マム、それにエリサ……! ありゃりゃ、こりゃどうも恥ずかしいところを……」

 孤児院の養母、マム。
 セオリアとハンナ、ミカの育ての親だ。
 マムは頭から地面すれすれまでの丈の長いローブを着ている。
 歳の割には背は高く、姿勢もいい。
 どことなく育ちの良さや品性が感じられる人。
 しっかりと地に足がついてる印象。
 非常に好感が持てる。
 歳は俺より二回りほど年上か。
 同年代だったらワンチャンあったかもなぁ。
 失礼にもそんなありもしないロマンスに頭を巡らせていると。

「ふふっ、ケントさんもこういう時間が必要なのですね」

 と穏やかに笑いかけられた。

「いやぁ、こりゃまた恥ずかしいところを見られちゃって……」

「いえ、あなたはこの街を守った英雄です。なにも恥じることはありませんよ。それにうちに来てた地上げ屋まで追い払っていただいて」

 ああ、そうだ。
 いたなぁ、地上げ屋。
 ちなみに地上げ屋の正体が盗賊団だったことはマムには伝えてない。
 言っても不安にさせるだけだしね。
 にしても……。
『英雄』はさすがに言いすぎでしょ~?

「もう来てませんか、地上げ屋?」

「えぇ、あれからもうすっかりと。ケントさんのおかげです」

「ああ、いいです! そんな頭下げないで!」

 その後、俺を独り占めとばかりに構ってきたエリサ(俺が街の外で助けた草笛の子)をしばらくあやした後、寄付をつのりに街中を回っているらしい二人は頭を下げて立ち去っていった。

 うん……冒険者ギルドもだいぶ復興してきたけど、孤児院もいい感じじゃないか。
 セオリアたちも揃って顔を見せたらしいし。
 あの荒れてた畑も新たな作物を植えているそうだ。
 俺の行いによって周りが幸せになっていくのは嬉しい。
 たとえ、それがたまたまでもね。

(さて、と)

 もうちょっとみんなを幸せにするため、行きますかね。

 魔物大量暴走スタンピートに関する調査。

 ついに乗り出す。

 エルくんたちといっしょに洞窟に向かう。

 俺の冒険者としてのやり直し。

 今度は守るぞ、絶対に。

 何が起きても。

 そのためにエネルギーチャージも満タン完了。

「よい……しょっと!」

 ホイッと跳んで両の足の裏を当ててパンっ!

 うん、好調。いい感じ。

 よ~し、それじゃ行くとしますか!

 宝珠オーブの発見された洞窟へ!
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