上 下
32 / 45
閑話(おじさん周りの方々)

第32話 ジャンヌ、気づく

しおりを挟む
 元気が一番!
 元気があれば何でも出来る!

 がモットーな私なんですが……。

 はぁ……。

 とうとうやってしまいました……。

 私……。

 なんと……。

 ワイバーンを王都に連れ帰っちゃったんですぅぅぅぅぅ!

 あぁぁぁぁぁぁ……。
 やってしまいました。
 やってしまいましたよ、これは。
 運よく通りがかりの師範さんが退治してくれたからよかったものの。
 一步間違えば王都壊滅の大戦犯ですよ。 
 まったく、はぁ……。

 本当に運が良かったです。
 運。
 そう、私。
 運がいいんです。
 だって私の持ってるスキル──。

幸運ラック

 ですから。

 スキルってあんまり持ってる人いないんですよね?
 私もこれまで見かけたことほぼないですし。
 だから私もなんというか。

 自分がスキルを持ってるってことをこれまで誰にも明かさずに来ちゃいました。

 いやいや、だってそんな人に言うようなスキルじゃないですからね?
 だって、カッコいいスキルならともかく……。

「私のスキル、『幸運ラック』なんです!」

 なんて言ったところで、せいぜい「へ~」って返されて終わりじゃないですか?
 
 それに私、馬鹿なので。
 なんか騙されてスキルを悪用とかされそうじゃないですか?
 しかもなんか命がけの二択を延々選ばされ続ける感じのタイプのに。
 え、やだ、なにそれこわっ、ぶる……。

 とにかく。
 私はこの『幸運ラック』のおかげで家を放逐ほうちくされ……いえいえ、ちょっとした留学で騎士団へと入団したにも関わらず、無事『清らかな白鳩プラミチア女騎士団』の副団長という分不相応すぎる地位へといてしまったのです。

 まぁそのせいで魔物大量暴走スタンピートとやらの調査に駆り出されて、ワイバーンを連れてきちゃったわけですけど……。

 でも、まぁ、よしです!
 あの師範!
 ケント先生のおかげで万事オッケーですから!
 というか!
 ケント先生がたまたまに居合わせたこと自体が私の『幸運ラック』のおかげだと思いませんか!?
 しかも!
 しかもぉ~!?

 かっこいい!

 んっ! ですっ!
 ケント先生!
 あんなスゴいことをやってのけたのに自慢しないし!
 私だったら日に百回は自慢してますよ!
 あぁ~、ケント先生~!
 かっこよすぎます~!
 あのザンバラのロン毛も色気があっていいですよね~。
 常に一步引いた感じもアンニュイで渋くてたまらんっ! ですっ!
 
 あ~……でも。

 うちの団長。
 セオリアさんが完全にぞっこんなんですよね、先生に……。
 なんていうか、もう威嚇? してきますもん。
 先生は私のもの! とばかりに。
 いや、女同士にしかわからないアレですけどね。
 ってことで、私は先生と結ばれるのは諦めて。

「先生ぇ~~~~~!」

 と、先生と生徒の関係で甘えまくることにします!

「ぬわぁ~! またジャンヌ! なんでこんなによく出くわすんだ!?」

 ふふふ……先生、それは私が『幸運ラック』の持ち主だからですよ……。
 っと、そんなことを思ってるうちにまた先生に逃げられてしまいました。
 まったく照れ屋さんなんですからぁ~。
 でも、そういうところも可愛い!
 はい、またどうせすぐ会えますし、ふふふ……。
 だって私は……。

幸運ラック』を持っているのですから~!

 ってことで、今日も元気に副団長の仕事(そもそもお飾りの女騎士団に仕事なんてほぼないに等しいですけど)に励むぞ~。
 ……ん?
 誰でしょう?
 あそこでケント様の去っていった方を見つめている不審人物は。
 うむむ……怪しいですね……。
 お飾りの騎士団ですが、一応私達には王都の治安を守るという立派な建前たてまえがあります。
 なので、建前たてまえ分くらいはお仕事するとしましょう!

「もしも~し?」

 声を掛けると、不審人物はギョッとした顔で振り向きました。
 むむ……なんですか、その反応は。
 怪しい、とても怪しいです。

「どうかされましたか?」

「……俺の存在に気付けるのか?」

「あはは~! 何言ってるんですか! 気づくに決まってるじゃないですか!」

 あらら。
 この不審人物さん。
 なかなかの……。

 ジロジロ。

 イケメンさんじゃないですか~!

 真っ白な髪の毛。
 澄んだ青い瞳。
 真一文字の細眉。
 針のように細い鼻筋。
 それでいてたくましい首筋。

 あらあら。
 まぁまぁ。
 どこのどなた? この美青年様は?
 というか。
 なぜ今までこんな目立つ美青年の存在に気づかなかったのでしょう?
 こんな人が居たなら、絶対に団で話題になってるはずなのに。

「……スキル持ちか?」

 イケメンさんが私に向かって手のひらを向けます。


 回避レジスト


 あ、なにか回避レジストしたような気配。
 私、『幸運ラック』持ちだから状態異常系の魔法だったりに強いんですよね。
 このイケメンさん、私になにか魔法をかけようとしました?
 いけませんね~、王都を守る正義の騎士団様に魔法を行使するとは。
 これは取調室でたっぷりと話を聞く必要がありますね……ぐふふ……このジャンヌさんがじっくりと取り調べてあげますよ~……って。


 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト
 回避レジスト


 ちょ……あっ……あぁ……ダメです……ダメですってば……! いくら『幸運ラック』持ちの私とはいえ、そんなに連続で魔法をかけられたら……対処する速度がぁ……あわわわわぁ……。



 ……はて?
 私は今、なにをしてたんでしたっけ?
 ああ、そうです!
 先生に弟子として甘えようとして逃げられたところでした!
 まったくもう、次こそは逃がしませんよ~。
 今度こそは絶対に取調室でたっぷりと話を聞く必要が……って、あれ?

 取調室?
 なんで?
 ん? ん?
 ん~~~~~~……?

 ……うん!
 まぁ、いいです!
 考えたところでお腹が空くだけですし!
 ということで、今日も元気にそのへんをぶらついて仕事したふりをして兵舎に帰宅です!
 あ~、今日の晩ごはんなにかな~!
 ご飯食べた後はお風呂入って~。
 ストレッチしてぐっすり寝るんだ~。
 夜はイケメンの夢でも見たいな~!
 白髪碧眼の首の太いイケメンとかだといいな~!

 ……?

 頭に浮かんだ例が妙に具体的ですね……?

 ……うん!
 まぁ、いいです!

 元気が一番!
 元気があれば何でも出来る!

 それが私のモットーなんですから!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

処理中です...