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おじさん、懲らしめるの巻
第17話 おじさん、殴り込む
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捕まえたテンから聞き出した盗賊のアジト。
町外れの倉庫。
そこに俺は、あっさりと入り込むことに成功していた。
武器屋のボルトの店で着替えた盗賊風の服装。
いい感じでボロだ。
卑屈な匂いも染み付いてる。
その音の立ちにくい薄汚れた皮靴のつま先を見ながら、俺は森の生活で学んだいくつかのことを思い出す。
まずひとつ──「気配を漂わせない」
森で自己主張する生き物はいない。
「自分がここにいますよ」と宣言することは、死に直結するからだ。
よって俺は森の木々に紛れるように盗賊たちに紛れた。
次にひとつ──「獲物の方を見ない」
生き物は視線に敏感だ。
自分を狙うものに目をつけられていないか。
それを本能で察知することが出来る。
だから俺は盗賊に紛れながらも地面を視線を下に落とし、こっそりと周囲の様子を超感覚で探る。
そしてひとつ──「殺る時は、一瞬」
ガッ──!
木剣での一撃。
背後から首を叩かれた男は泡を吹いて崩れ落ちる。
侵入成功。
さぁ、ここからは──大乱闘だ。
俺は侵入以降初めて顔を上げる。
広い。
高低差もある。
敵の数、十五。
うち二人撃破。
昼間見た地上げ屋の六人もいる。
すでにテンのことも報告済みか?
だが、こんなに早く特攻かけられるとは思ってなかっただろ?
ガガッ──!
まだ浮足立ってる連中に左右の二撃。
ドッ──。
運悪く俺のそばに立っていた男二人が崩れ落ちる。
右手に木剣。
左手に木刀。
木刀の方は少し短い。
小太刀サイズ。
だが、木の刀。
実際の刀と違って刀身を手で握ることが出来る。
つまり、長さの調節が効く。
乱戦だ。
室内だ。
長い得物なんか振り回してらんねぇ。
武器を奪われるかもしれねぇ。
刃が欠けるかもしれねぇ。
だからこそ木剣、木刀。
そもそも。
俺に殺す気はない。
盗賊ギルドのボス。
孤児院を地上げし。
セオリアに手をかけようとした奴らのボス。
冒険者ギルドに嫌がらせをし、元冒険者たちを吸収しているギルドのボス。
そいつに挨拶に来ただけだ。
ついでに──。
セオリアとベルドに謝ってもらいにな!
シュシュシュッ──!
俺の『超感覚』が感じ取る。
風切音のほとんどしない投げナイフの存在を。
(ふむ、妙技……。だが──!)
カカカッ!
ナイフはすべて俺の木剣で受け止められ、逆に俺の武器を増やす結果となった。
ザッ──。
背後に回り込んでこようとする盗賊たち。
シュッ──カカカンッ!
俺は奪ったばかりのナイフを投げて牽制する。
そして即座に距離を詰めて……。
ダダンっ──!
打ち倒す。
残り十。
うち地上げ屋が六人。
ボスとその取り巻きの計四人。
うろたえる地上げ屋連中とは対象的に、四人はすでに臨戦態勢だ。
もし、あの四人全員が俺を襲ってきたテン並みの腕だったら……さすがに苦しいかもしれんな。
「くそっ……! なんだよこいつ……! 一人で乗り込んでくるなんてイカれてやがるぜ……! 昼間は油断したが、今はもう──」
ダダダダダダンッ──!
「ぐ……は……っ」
こういう戦いで意外と効果的なのが──直進。
包囲した敵がなんの工夫もなく自分一人に迷いなく突っ込んでくる。
通常ならありえないこと。
ゆえに体が固まる。
対応が遅れる。
ゴッ!
まずは、一。
ドッ、ガッ、ドスッ──!
続けて二、三……そして、四。
地上げ屋連中を次々となぎ倒していく。
「くっ……!」
剣を抜こうとした五人目の手を、俺は足の裏でトンと押さえる。
「剣を抜く動作。それが遅いだけで人は死ぬ。数秒の遅れが生死を分ける。剣を抜く。剣を抜く。剣を抜く。ただ、それだけ。だが、その動作ひとつで人は死ぬこともある。死にたくなければ毎日繰り返すことだ。魔物は牙を、爪を常に剥き出しだぞ? そんな相手と面してからお前は剣を抜くのか? ほんとに考えているのか? 毎日毎日、自分が死なない方法を」
ガッ──。
男の懐に潜り込んで小太刀の柄で腹を突く。
ぐらり──。
崩れてくる男の体を抱えると。
「──っと!」
六人目に放り投げ──。
「お、おわっ……!」
飛んできた仲間を思わず受け止めた六人目を。
ドゥ──。
一撃で仕留めた。
さぁ、残り四人。
最奥にふんぞり返っているボス──全身ローブの人物。
そのとなりに巨体の男。若そうだ。
梁の上に細身の男が位置取る。
そして、もう一人。
俺の正面に対峙する男──。
「フゥ~………………」
ほぅ、これはこれは……。
目つきが違う。
ハンパなチンピラのものじゃない。
覚悟の決まった者の目だ。
その端正な顔立ちの褐色の青年は、まるで剣を構えるかのようにナイフを構える。
全身にピンと気が張り詰めているのがわかる。
戦いにおいての集中力が──極めて高い。
他の三人も同様。
(さぁて、ここからが正念場かね……)
十年間もの間、のほほんと森の中での暮らしてたおっさんが強者相手にどこまで通用するか……。
ジリッ──。
俺と青年との距離が、にわかに縮まった。
町外れの倉庫。
そこに俺は、あっさりと入り込むことに成功していた。
武器屋のボルトの店で着替えた盗賊風の服装。
いい感じでボロだ。
卑屈な匂いも染み付いてる。
その音の立ちにくい薄汚れた皮靴のつま先を見ながら、俺は森の生活で学んだいくつかのことを思い出す。
まずひとつ──「気配を漂わせない」
森で自己主張する生き物はいない。
「自分がここにいますよ」と宣言することは、死に直結するからだ。
よって俺は森の木々に紛れるように盗賊たちに紛れた。
次にひとつ──「獲物の方を見ない」
生き物は視線に敏感だ。
自分を狙うものに目をつけられていないか。
それを本能で察知することが出来る。
だから俺は盗賊に紛れながらも地面を視線を下に落とし、こっそりと周囲の様子を超感覚で探る。
そしてひとつ──「殺る時は、一瞬」
ガッ──!
木剣での一撃。
背後から首を叩かれた男は泡を吹いて崩れ落ちる。
侵入成功。
さぁ、ここからは──大乱闘だ。
俺は侵入以降初めて顔を上げる。
広い。
高低差もある。
敵の数、十五。
うち二人撃破。
昼間見た地上げ屋の六人もいる。
すでにテンのことも報告済みか?
だが、こんなに早く特攻かけられるとは思ってなかっただろ?
ガガッ──!
まだ浮足立ってる連中に左右の二撃。
ドッ──。
運悪く俺のそばに立っていた男二人が崩れ落ちる。
右手に木剣。
左手に木刀。
木刀の方は少し短い。
小太刀サイズ。
だが、木の刀。
実際の刀と違って刀身を手で握ることが出来る。
つまり、長さの調節が効く。
乱戦だ。
室内だ。
長い得物なんか振り回してらんねぇ。
武器を奪われるかもしれねぇ。
刃が欠けるかもしれねぇ。
だからこそ木剣、木刀。
そもそも。
俺に殺す気はない。
盗賊ギルドのボス。
孤児院を地上げし。
セオリアに手をかけようとした奴らのボス。
冒険者ギルドに嫌がらせをし、元冒険者たちを吸収しているギルドのボス。
そいつに挨拶に来ただけだ。
ついでに──。
セオリアとベルドに謝ってもらいにな!
シュシュシュッ──!
俺の『超感覚』が感じ取る。
風切音のほとんどしない投げナイフの存在を。
(ふむ、妙技……。だが──!)
カカカッ!
ナイフはすべて俺の木剣で受け止められ、逆に俺の武器を増やす結果となった。
ザッ──。
背後に回り込んでこようとする盗賊たち。
シュッ──カカカンッ!
俺は奪ったばかりのナイフを投げて牽制する。
そして即座に距離を詰めて……。
ダダンっ──!
打ち倒す。
残り十。
うち地上げ屋が六人。
ボスとその取り巻きの計四人。
うろたえる地上げ屋連中とは対象的に、四人はすでに臨戦態勢だ。
もし、あの四人全員が俺を襲ってきたテン並みの腕だったら……さすがに苦しいかもしれんな。
「くそっ……! なんだよこいつ……! 一人で乗り込んでくるなんてイカれてやがるぜ……! 昼間は油断したが、今はもう──」
ダダダダダダンッ──!
「ぐ……は……っ」
こういう戦いで意外と効果的なのが──直進。
包囲した敵がなんの工夫もなく自分一人に迷いなく突っ込んでくる。
通常ならありえないこと。
ゆえに体が固まる。
対応が遅れる。
ゴッ!
まずは、一。
ドッ、ガッ、ドスッ──!
続けて二、三……そして、四。
地上げ屋連中を次々となぎ倒していく。
「くっ……!」
剣を抜こうとした五人目の手を、俺は足の裏でトンと押さえる。
「剣を抜く動作。それが遅いだけで人は死ぬ。数秒の遅れが生死を分ける。剣を抜く。剣を抜く。剣を抜く。ただ、それだけ。だが、その動作ひとつで人は死ぬこともある。死にたくなければ毎日繰り返すことだ。魔物は牙を、爪を常に剥き出しだぞ? そんな相手と面してからお前は剣を抜くのか? ほんとに考えているのか? 毎日毎日、自分が死なない方法を」
ガッ──。
男の懐に潜り込んで小太刀の柄で腹を突く。
ぐらり──。
崩れてくる男の体を抱えると。
「──っと!」
六人目に放り投げ──。
「お、おわっ……!」
飛んできた仲間を思わず受け止めた六人目を。
ドゥ──。
一撃で仕留めた。
さぁ、残り四人。
最奥にふんぞり返っているボス──全身ローブの人物。
そのとなりに巨体の男。若そうだ。
梁の上に細身の男が位置取る。
そして、もう一人。
俺の正面に対峙する男──。
「フゥ~………………」
ほぅ、これはこれは……。
目つきが違う。
ハンパなチンピラのものじゃない。
覚悟の決まった者の目だ。
その端正な顔立ちの褐色の青年は、まるで剣を構えるかのようにナイフを構える。
全身にピンと気が張り詰めているのがわかる。
戦いにおいての集中力が──極めて高い。
他の三人も同様。
(さぁて、ここからが正念場かね……)
十年間もの間、のほほんと森の中での暮らしてたおっさんが強者相手にどこまで通用するか……。
ジリッ──。
俺と青年との距離が、にわかに縮まった。
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