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第四幕 VS大手レコード会社
ACT109
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MIKAが動画を投稿して一週間。
その反響は大きく、日本国内に留まらず世界中の人々がMIKAの歌を、ヤスヒロの曲を、聴いていた。
再生回数が一億を突破した頃、ヤスヒロから――正確にはお母さんから会いたいと連絡をもらった。
話の内容はもちろん作曲について。
私とMIKAがヤスヒロの家を訪れていた。
なんか私とMIKAって最近コンビ活動多くない!?
ま、コンビなんて組んだ覚えないけどね。
真希とHIKARUの二人は二人でいろいろと活動(?)しているらしい。
それぞれ頑張っている……よね?
最近、自分が何もしていないような気がしてならないけれど、考えないようにしよう。気にしちゃダメな気がする。
私たちはヤスヒロ宅を訪ね、彼の部屋の前にいた。
「結衣さんとMIKAさんが来られたわよ」
お母さんの声かけに部屋のドアが薄く開かれた。
「……どうぞ」
一枚板の扉を隔てて、ヤスヒロと久々の再会を果たす。
本当に私たちに会いたいと言ったのだろうか?
扉一枚しかないが、それ以上の心の距離を感じる。
「入って」
それだけ言うと、ヤスヒロの足音が薄ぐらい部屋の中に吸い込まれていく。
遠ざかる足音を追うようにして部屋へと踏み入った。
中に入るとカーテンを閉めきった暗い室内。
その中で、電源の入ったデスクトップ型のパソコンだけが光を発していた。
暗い部屋の中ブルーライトを見続けていれば目が悪くなること請け合いである。
そのせいかは不明だが、ヤスヒロは眼鏡をかけている。
パソコンの明かりが眼鏡のレンズに反射していた。
レンズで隠されたその表情を汲み取ることはできないが、寝不足であろうことだけはわかった。
頻りに頭を振っては欠伸を噛み殺している。
ヤスヒロは動画投稿サイトで動画を見ていたようだ。
しかし今、画面に映し出されているのは真っ黒な画面。
さらに付け加えるなら動画の下、コメント欄にスクロールされていた。
見ていた動画はヤスヒロ自身の動画。
相変わらず閲覧者は少ない。
それでもMIKAの投稿動画の効果だろうか、多少はヤスヒロの投稿動画の方も再生回数が伸びていた。
ボソボソと口ごもりながら、ヤスヒロが「……ありがとう」と感謝の言葉を述べる。
続いて作曲の件についても引き受けてくれると言う。
えっ? ほんとに!?
一人興奮している私の隣でMIKAは「あ、そう」と冷ややかな態度。
そこまで関心がないのか、別段驚いた様子もない。
「それじゃあ、よろしく」
一言だけ残してMIKAは部屋を後にする。
えっ!?
待ってよ! もう帰るの!?
二人きりにされても気まずいだけなので、私も急いでMIKAの後を追う。
部屋を出るときに「ありがとね」と声をかけると、ヤスヒロが小さく会釈するのが見えた。
初めて会った時より、ほんの少しかもしれないけれど距離感が縮まった気がして、温かい気持ちになった。
…………
……
…
MIKAの事務所の用意した車に乗せてもらい、帰路につく。
車中、だんまりした空気に耐え兼ねた私は、MIKAに聞いてみた。
「なんでヤスヒロくん作曲引き受けてくれたんだろうね?」
何を言っているんだ? みたいな視線を向けられた。
あれ? なんかまずいこと言っちゃった?
少し不安になったが、そうではなかったらしい。
ほんとに分からないんですか? とMIKA。
分からないんだから仕方がない。素直に首を縦に振る。
「ハァ……。仕方ないですね」
思い切りため息つかれた。
私の方が先輩なのに!?
それでも説明してくれるMIKAは優しい(?)と思いたい……
「要は父親からのメッセージが欲しかったんですよ。今回の動画投稿で見る人が増えて、ようやく父親の目に動画――曲って言った方がいいですかね? まあ、どの曲を聴いてもらって返事をもらえたから満足したって事なんでしょう」
そういえば、ヤスヒロの部屋で見たパソコン画面は、動画ではなくコメント欄を見ていたように思える。
そうか、願いが叶ったんだね。
ちょっとした感動物語である。
そんな私の感動に水を差すようにMIKAが言う。
「まあ、父親のコメントは私がそれっぽく書いただけなんですけどね」
まさかの一言。
恐ろしい娘ッ!?
白目を向きたくなるほどの驚き――衝撃が私を襲う。
「私の動画に書き込みして、そこからあの子の動画を見に行ったっていうストーリーもきちんと作りましたし。ばれることはないとおもいます」
止めの一言。
芸能界怖い……
人間不信になっちゃいそう。
そんな私の思いを振り払うように車はスピードを上げる。
……制限速度は守ってるよね?
交通違反で捕まるとかマジ勘弁。
週刊誌に好き勝手かかれるのも癪だしね。
流れる景色の中、白バイのお兄さん(?)と目が合った
……
赤いランプが点滅。
サイレンが鳴らされる。
…………
……
…
翌週、私が違反を侵したわけでもないのに週刊誌に載っていた。
この業界に休まる時はない……――そして何より理不尽に満ちている。
その反響は大きく、日本国内に留まらず世界中の人々がMIKAの歌を、ヤスヒロの曲を、聴いていた。
再生回数が一億を突破した頃、ヤスヒロから――正確にはお母さんから会いたいと連絡をもらった。
話の内容はもちろん作曲について。
私とMIKAがヤスヒロの家を訪れていた。
なんか私とMIKAって最近コンビ活動多くない!?
ま、コンビなんて組んだ覚えないけどね。
真希とHIKARUの二人は二人でいろいろと活動(?)しているらしい。
それぞれ頑張っている……よね?
最近、自分が何もしていないような気がしてならないけれど、考えないようにしよう。気にしちゃダメな気がする。
私たちはヤスヒロ宅を訪ね、彼の部屋の前にいた。
「結衣さんとMIKAさんが来られたわよ」
お母さんの声かけに部屋のドアが薄く開かれた。
「……どうぞ」
一枚板の扉を隔てて、ヤスヒロと久々の再会を果たす。
本当に私たちに会いたいと言ったのだろうか?
扉一枚しかないが、それ以上の心の距離を感じる。
「入って」
それだけ言うと、ヤスヒロの足音が薄ぐらい部屋の中に吸い込まれていく。
遠ざかる足音を追うようにして部屋へと踏み入った。
中に入るとカーテンを閉めきった暗い室内。
その中で、電源の入ったデスクトップ型のパソコンだけが光を発していた。
暗い部屋の中ブルーライトを見続けていれば目が悪くなること請け合いである。
そのせいかは不明だが、ヤスヒロは眼鏡をかけている。
パソコンの明かりが眼鏡のレンズに反射していた。
レンズで隠されたその表情を汲み取ることはできないが、寝不足であろうことだけはわかった。
頻りに頭を振っては欠伸を噛み殺している。
ヤスヒロは動画投稿サイトで動画を見ていたようだ。
しかし今、画面に映し出されているのは真っ黒な画面。
さらに付け加えるなら動画の下、コメント欄にスクロールされていた。
見ていた動画はヤスヒロ自身の動画。
相変わらず閲覧者は少ない。
それでもMIKAの投稿動画の効果だろうか、多少はヤスヒロの投稿動画の方も再生回数が伸びていた。
ボソボソと口ごもりながら、ヤスヒロが「……ありがとう」と感謝の言葉を述べる。
続いて作曲の件についても引き受けてくれると言う。
えっ? ほんとに!?
一人興奮している私の隣でMIKAは「あ、そう」と冷ややかな態度。
そこまで関心がないのか、別段驚いた様子もない。
「それじゃあ、よろしく」
一言だけ残してMIKAは部屋を後にする。
えっ!?
待ってよ! もう帰るの!?
二人きりにされても気まずいだけなので、私も急いでMIKAの後を追う。
部屋を出るときに「ありがとね」と声をかけると、ヤスヒロが小さく会釈するのが見えた。
初めて会った時より、ほんの少しかもしれないけれど距離感が縮まった気がして、温かい気持ちになった。
…………
……
…
MIKAの事務所の用意した車に乗せてもらい、帰路につく。
車中、だんまりした空気に耐え兼ねた私は、MIKAに聞いてみた。
「なんでヤスヒロくん作曲引き受けてくれたんだろうね?」
何を言っているんだ? みたいな視線を向けられた。
あれ? なんかまずいこと言っちゃった?
少し不安になったが、そうではなかったらしい。
ほんとに分からないんですか? とMIKA。
分からないんだから仕方がない。素直に首を縦に振る。
「ハァ……。仕方ないですね」
思い切りため息つかれた。
私の方が先輩なのに!?
それでも説明してくれるMIKAは優しい(?)と思いたい……
「要は父親からのメッセージが欲しかったんですよ。今回の動画投稿で見る人が増えて、ようやく父親の目に動画――曲って言った方がいいですかね? まあ、どの曲を聴いてもらって返事をもらえたから満足したって事なんでしょう」
そういえば、ヤスヒロの部屋で見たパソコン画面は、動画ではなくコメント欄を見ていたように思える。
そうか、願いが叶ったんだね。
ちょっとした感動物語である。
そんな私の感動に水を差すようにMIKAが言う。
「まあ、父親のコメントは私がそれっぽく書いただけなんですけどね」
まさかの一言。
恐ろしい娘ッ!?
白目を向きたくなるほどの驚き――衝撃が私を襲う。
「私の動画に書き込みして、そこからあの子の動画を見に行ったっていうストーリーもきちんと作りましたし。ばれることはないとおもいます」
止めの一言。
芸能界怖い……
人間不信になっちゃいそう。
そんな私の思いを振り払うように車はスピードを上げる。
……制限速度は守ってるよね?
交通違反で捕まるとかマジ勘弁。
週刊誌に好き勝手かかれるのも癪だしね。
流れる景色の中、白バイのお兄さん(?)と目が合った
……
赤いランプが点滅。
サイレンが鳴らされる。
…………
……
…
翌週、私が違反を侵したわけでもないのに週刊誌に載っていた。
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