転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

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第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー

ACT89

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「……――ていう事があったのよ」

 私はここ数週間に起こった出来事を順序立てて話した。
 かれこれ一時間以上は話し込んでいる。
 電話の向こうでは、瑞樹が欠伸をかみ殺している。

「ねぇ、そろそろ電話切ってもいい?」

 私は一言「ダメ」と言って話を続ける。
 かなり我慢を強いられていたから、身内に対しては我が儘でいたい――ありたい。
 私がマシンガンのごとく喋り続ける一方で、瑞樹の相槌は一つ二つ遅れて返ってくる。

「ねぇ? 聞いてる?」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………うん」

 聞いてはいなかった。
 私はそっと電話を切った。

 何気なしにテレビを点けると綾人が映っていた。
 ん? 綾人?
 スポーツニュースで報じられていたのは、綾人がワールド陸上(世界大会)短距離において日本人初の銅メダルを獲得した。
 100・200メートルともに銅メダルを獲得するという快挙を達成。
 私はあまりスポーツ詳しくないからよく分からないけど。
 スゴイことなのだという事は、漠然とではあるが理解できた。
 しかし、快挙と言う割に世間はさほど騒いでいないようだ。
 実はそんなにすごいことじゃなかった?
 でもおめでたいことに変わりはないよね? 

 私はスマホを手に取り、綾人にメッセージを送った。

  結衣:おめでとう!!!
 
 …………
 ……
 …

 既読はされている。
 でも返信がない。
 ありがとうって返信すればいいだけでしょ!? 何で返信来ないの!!??
 などと心をかき乱されていると、

  綾人:この前のワールド陸上の話?

 何故クエスチョンマークがくっ付いてるんだ?
 …………あっ、私は気が付いた。
 テレビで特集されている綾人のニュース。
 そのニュースをじっくりと観てみると、答えがあった。

 綾人がメダルを獲得したワールド陸上が開催されたのが、約ひと月前の話。
 ひと月前と言えば、ちょうど『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~』の視聴率が落ち始めた頃だ。
 ニュースでは、国民が熱狂した瞬間などと、でかでかテロップが流れている。
 国民の熱狂度が視聴率にも表れていた。
 平均視聴率28パーセント。瞬間最高視聴率は51.2パーセントという化け物じみた数字を叩き出したのだった。
 その時間帯にかち合ってしまったのが『お笑い革命~至高の笑い発信基地局~』だった。
 どうりで視聴率が伸びなかったわけだ。
 つまり、視聴率が下がったのは私の不出来の所為ではなかったという事だ。
 あんなに悩んだのに……バカみたい。

 51.2パーセントというオバケ視聴率を叩き出したのは綾人だった。
 視聴率男と言っても過言ではない。
 て言うか、私が苦しんでいた元凶って綾人じゃない? 

 私はスマホを操作する。

  結衣:謝ってよ!
  綾人:なんか怒ってる? 何で?
  結衣:誤って!!!
  綾人:ごめん
  結衣:ゆるさない
  綾人:どうしたらいいんだよ~(´^`;)

 私と綾人の口論(?)は平行線をたどった。


 綾人には償いとしてデートに連れて行ってもらった。
 仕方がないのでデートですべての事を水に流してあげることにした。
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