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第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー
ACT70
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「今日はなんと! アイドルがこのバラエティーのスタジオに来てくれたでぇ。野郎共は歓喜しぃ!! 500万年に一人の逸材――MIKAちゃんや!!」
番組MCの福福亭晩春が、ひな壇芸人たちを煽る。
色めき立つ男性陣は皆立ち上がり、拍手で迎える。
500万年に一人って、人類史上に一人って事じゃん!? そんな存在がこんな島国に存在しているはずがない(決して日本国を馬鹿にしている訳ではない。)。
「こんにちは~」
胸の高さで手を振り、軽く膝を曲げてあいさつをするアイドル。
キャピキャピしてる。
アイドルって大変だな。私はあそこまでキラキラ出来ないな。
そんなことを思っていると、
「MIKAちゃん、今日は楽しんでいってな。それと、そこにおるひな壇共が言い寄って来たら遠慮なく言うんやで。すぐに芸能界から抹殺したるから」
「そこまでしなくてもいいですけど……もしもの時はお願いしますね!」
「「待ってくださいよー」」
「「勘弁してくださいよー」」
「「LINEやったらええやろ?」」
「おっ、早速今日、引退する奴が出てもうたな」
観覧席からは笑いが起こる。
番組が始まって早々、お客さんを味方につけている。
結衣はアイドル業界にかなり疎い。それはアイドル業界だけでなく、俳優業界以外を知らない――関心がないのだ。
だから正直なところを言うと、今さっき引退宣告を受けたのが誰なのかかなり怪しかった。
ピンキーズの加藤さんだったかな? 多分合ってる……はず。
「私、シナモンの大ファンだったのに、残念です。でも半田さんなら芸人以外の道でも成功出来ますよ~」
「あれ? オレ、ホンマに引退すんのか?」
「当たり前や! 引退や、言うたやろ!」
再び笑いがスタジオを包む。
ピンキーズの加藤さんじゃなかったか。
シナモンの半田さんってあんな顔だったけ? 間違えないようにしなくちゃ。
人の名前覚えてないとか好感度に響きかねない。
既にワンクール(3ヶ月)近く共演しているので、顔と名前が一致しないのはかなりヤバい。
晩春さんとの絡み(トーク)は上手く出来るんだけど……他の芸人さんとの絡みは難しい。
まあ、晩春さんの巧みな話術で誘導してもらって、気がつけば笑いが取れているというワンパターンだ。私自身が何かしたという事はない。出来た気もしない。
バラエティーって本当に難しい。
そして、私以上に苦戦しているのが一緒にレギュラー出演している真希だ。
アイドルにみんなの視線が向くたびに、眉間に深い縦皺が刻まれている。
アイドルにも嫉妬するのか。主戦場が違うだろうに。
隣で肩を震わせているのは、嫉妬からか? それとも慣れない仕事(環境)に対してのフラストレーションからなのか? そこの真意は分からない。
「それにしても、今日は最高の日やなぁ。MIKAちゃんに、結衣ちゃんと真希ちゃん。3人の可愛い女の子を愛でる事が出来るんやから」
発言を文章に起こしてしまうと、セクハラ感がスゴイ。
しかし、当の言われている本人はイヤな気持ちにならないのだから不思議である。
すると、
「……私は三番目」
真希は自分の名前が三番目だった事が許せないらしい。
この日の収録も、危なげなく晩春さんの巧みなトークで番組は進行した。
終始真希は不機嫌そうだった。
いつもの事と言えなくもないけど。
番組の最後にお決まりの告知コーナが始まる。
「私が所属している、ラビットガールズの3rdシングル「Moon Rabbit」が発売中です。今までの愛らしい曲調は残したまま、クールな? 楽曲になってます。とにかく沢山の人に聴いて頂きたいです。よろしくお願いしま~す!!」
拍手とともに、
「「絶対に買うよー」」
ガヤ芸人たちが声を張る。
私は買わない。
そっと心の中で呟く。
「……絶対買わない」
真希の心の呟きが漏れ聞こえる。
芸人たちの歓声が収まると、
「ちょっとええか? 実は、番組からもお知らせがあるんや」
「「何や? 番組打ち切りかいな?」」
「そうなったらお前のレギュラー0本やな」
「「ホンマや!? それは困るで!!」」
相変わらず芸人たちはうるさい。
何でも騒がないと気が済まない質らしい。
「お前の仕事状況はどうでもええねん」
晩春さんは気を取り直して、
「実はな、ここだけの話……」
「「ここだけの話って、これ全国放送ですやん!!」」
芸人たちの総ツッコミ。
「番組に……」
「「無視すんなや!!」」
「新レギュラーを迎える事にしました!!」
……ん? ……――はぁッ!?
驚いたのは結衣だけではないらしく、隣では真希が眉をピクピクと動かしていた。
芸人たちは各々、思い思いの言葉を口にする。
「「結衣ちゃんに真希ちゃん、次はどんなかわい子ちゃんなんやろ」」
「「もしかして、誰かを外して新しい奴入れるんか?」」
晩春さんが場を収める(ちょっと強引に)。
「新レギュラー、発表するで! 新レギュラーは……――MIKAちゃんです!!」
……――はぁああッ!?
新レギュラーの発表に、私と真希は顔を見合わせていた。
番組MCの福福亭晩春が、ひな壇芸人たちを煽る。
色めき立つ男性陣は皆立ち上がり、拍手で迎える。
500万年に一人って、人類史上に一人って事じゃん!? そんな存在がこんな島国に存在しているはずがない(決して日本国を馬鹿にしている訳ではない。)。
「こんにちは~」
胸の高さで手を振り、軽く膝を曲げてあいさつをするアイドル。
キャピキャピしてる。
アイドルって大変だな。私はあそこまでキラキラ出来ないな。
そんなことを思っていると、
「MIKAちゃん、今日は楽しんでいってな。それと、そこにおるひな壇共が言い寄って来たら遠慮なく言うんやで。すぐに芸能界から抹殺したるから」
「そこまでしなくてもいいですけど……もしもの時はお願いしますね!」
「「待ってくださいよー」」
「「勘弁してくださいよー」」
「「LINEやったらええやろ?」」
「おっ、早速今日、引退する奴が出てもうたな」
観覧席からは笑いが起こる。
番組が始まって早々、お客さんを味方につけている。
結衣はアイドル業界にかなり疎い。それはアイドル業界だけでなく、俳優業界以外を知らない――関心がないのだ。
だから正直なところを言うと、今さっき引退宣告を受けたのが誰なのかかなり怪しかった。
ピンキーズの加藤さんだったかな? 多分合ってる……はず。
「私、シナモンの大ファンだったのに、残念です。でも半田さんなら芸人以外の道でも成功出来ますよ~」
「あれ? オレ、ホンマに引退すんのか?」
「当たり前や! 引退や、言うたやろ!」
再び笑いがスタジオを包む。
ピンキーズの加藤さんじゃなかったか。
シナモンの半田さんってあんな顔だったけ? 間違えないようにしなくちゃ。
人の名前覚えてないとか好感度に響きかねない。
既にワンクール(3ヶ月)近く共演しているので、顔と名前が一致しないのはかなりヤバい。
晩春さんとの絡み(トーク)は上手く出来るんだけど……他の芸人さんとの絡みは難しい。
まあ、晩春さんの巧みな話術で誘導してもらって、気がつけば笑いが取れているというワンパターンだ。私自身が何かしたという事はない。出来た気もしない。
バラエティーって本当に難しい。
そして、私以上に苦戦しているのが一緒にレギュラー出演している真希だ。
アイドルにみんなの視線が向くたびに、眉間に深い縦皺が刻まれている。
アイドルにも嫉妬するのか。主戦場が違うだろうに。
隣で肩を震わせているのは、嫉妬からか? それとも慣れない仕事(環境)に対してのフラストレーションからなのか? そこの真意は分からない。
「それにしても、今日は最高の日やなぁ。MIKAちゃんに、結衣ちゃんと真希ちゃん。3人の可愛い女の子を愛でる事が出来るんやから」
発言を文章に起こしてしまうと、セクハラ感がスゴイ。
しかし、当の言われている本人はイヤな気持ちにならないのだから不思議である。
すると、
「……私は三番目」
真希は自分の名前が三番目だった事が許せないらしい。
この日の収録も、危なげなく晩春さんの巧みなトークで番組は進行した。
終始真希は不機嫌そうだった。
いつもの事と言えなくもないけど。
番組の最後にお決まりの告知コーナが始まる。
「私が所属している、ラビットガールズの3rdシングル「Moon Rabbit」が発売中です。今までの愛らしい曲調は残したまま、クールな? 楽曲になってます。とにかく沢山の人に聴いて頂きたいです。よろしくお願いしま~す!!」
拍手とともに、
「「絶対に買うよー」」
ガヤ芸人たちが声を張る。
私は買わない。
そっと心の中で呟く。
「……絶対買わない」
真希の心の呟きが漏れ聞こえる。
芸人たちの歓声が収まると、
「ちょっとええか? 実は、番組からもお知らせがあるんや」
「「何や? 番組打ち切りかいな?」」
「そうなったらお前のレギュラー0本やな」
「「ホンマや!? それは困るで!!」」
相変わらず芸人たちはうるさい。
何でも騒がないと気が済まない質らしい。
「お前の仕事状況はどうでもええねん」
晩春さんは気を取り直して、
「実はな、ここだけの話……」
「「ここだけの話って、これ全国放送ですやん!!」」
芸人たちの総ツッコミ。
「番組に……」
「「無視すんなや!!」」
「新レギュラーを迎える事にしました!!」
……ん? ……――はぁッ!?
驚いたのは結衣だけではないらしく、隣では真希が眉をピクピクと動かしていた。
芸人たちは各々、思い思いの言葉を口にする。
「「結衣ちゃんに真希ちゃん、次はどんなかわい子ちゃんなんやろ」」
「「もしかして、誰かを外して新しい奴入れるんか?」」
晩春さんが場を収める(ちょっと強引に)。
「新レギュラー、発表するで! 新レギュラーは……――MIKAちゃんです!!」
……――はぁああッ!?
新レギュラーの発表に、私と真希は顔を見合わせていた。
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