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第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー
ACT69
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毎週テレビ局に訪れるというのは、未だに不思議な感覚だ。
ドラマや映画の撮影は毎日現場入りするし、今まで出演した番組(テレビ)は、そのほとんどが一回限りのゲスト出演だった。
あくまでドラマや映画の宣伝としての出演が多く、レギュラーという形で出演したことはなかった。
女優という職業は案外、生活リズムが不規則になりがちだ。
撮影が始まると早朝から深夜まで働きづめなんて事も珍しくない。
そして、撮影が終わると暇を持て余し、自堕落な生活を送る。
もちろん私は、自分磨きに余念がないので、自堕落に陥ったりしない……。
そんな女優にとって、毎週決められた曜日・時間に撮影するというのはとても新鮮に思えた。規則正しい生活が送れるというのは悪いことではない。
とは言っても、正午からのスタジオ収録なので10時に起きれば余裕で間に合うので、そこまで規則正しい生活とは言えない気もするのだが、芸能界の中では規則正しい部類だと言えるだろう。
すでに5回のスタジオ収録を終え、レギュラー番組を持つ生活にも順応し始めた私は、目覚ましがなくとも目を覚ます。
目覚ましが鳴るよりも早く起きて支度を整える。学校生活を経験したおかげか、早起きは問題なく出来るようだ。
目覚まし時計の針が、11時を指しているのは故障に違いない。
だってアラーム音聞こえなかったし。
「結衣~っ」
あ、高野さんの声が聞こえる。
どうしよう。まだ、パジャマのままなんだけど……
結局私は、寝巻姿のまま拉致られるように車に押し込まれて、テレビ局へと向かった。
メイク時間が足りない!?
衣装合わせに時間を裂いてしまったのが原因だ。
たとえ時間がなくとも、妥協はしたくないのだ。
その結果、不完全メイクでカメラの前に出る……無理だからッ!
不完全なメイクなんて、スッピンと同義じゃない!?
スッピン晒すなんて、世の女の子だって拒否するわよ。別にスッピンに自信がない訳じゃないのよ。学校に通っていた時はスッピンだったし、綾人も「化粧なんかしなくても可愛いのに」って言ってくれるもん!
でも、出来ることなら綺麗に、美しく映りたいじゃない。それが女優心――乙女心ってものでしょ?
だから……――
「お願いコウちゃん! なんとかしてぇ~!!」
私はコウちゃんこと担当メイクの光一に縋り付く。
「分かったから、くっつかないでよ! 動けないじゃない!!」
も~、と苛立ちながらもコウちゃんは、メイク道具をすでに手にしていた。
「時間ないから、いつもみたいなお喋りは無しね」
瞬く間に結衣の顔をキャンバスに、コウちゃんは美を表現する。
30分もしないうちに、女優新田結衣が完成する。
完璧な出来である。
「ありがとう。コウちゃん!!」
感激しつつお礼をすると、
「気にしなくて大丈夫。それよりも早く行かないと」
早くスタジオに行くように言われる。
「ありがとね」
もう一度お礼の言葉を口にして、スタジオに向かった。
そこで結衣は顔面にパイをぶつけられる事になる。
そんなことなど知る由もない結衣は、上機嫌でスタジオに入っていったのだった。
ドラマや映画の撮影は毎日現場入りするし、今まで出演した番組(テレビ)は、そのほとんどが一回限りのゲスト出演だった。
あくまでドラマや映画の宣伝としての出演が多く、レギュラーという形で出演したことはなかった。
女優という職業は案外、生活リズムが不規則になりがちだ。
撮影が始まると早朝から深夜まで働きづめなんて事も珍しくない。
そして、撮影が終わると暇を持て余し、自堕落な生活を送る。
もちろん私は、自分磨きに余念がないので、自堕落に陥ったりしない……。
そんな女優にとって、毎週決められた曜日・時間に撮影するというのはとても新鮮に思えた。規則正しい生活が送れるというのは悪いことではない。
とは言っても、正午からのスタジオ収録なので10時に起きれば余裕で間に合うので、そこまで規則正しい生活とは言えない気もするのだが、芸能界の中では規則正しい部類だと言えるだろう。
すでに5回のスタジオ収録を終え、レギュラー番組を持つ生活にも順応し始めた私は、目覚ましがなくとも目を覚ます。
目覚ましが鳴るよりも早く起きて支度を整える。学校生活を経験したおかげか、早起きは問題なく出来るようだ。
目覚まし時計の針が、11時を指しているのは故障に違いない。
だってアラーム音聞こえなかったし。
「結衣~っ」
あ、高野さんの声が聞こえる。
どうしよう。まだ、パジャマのままなんだけど……
結局私は、寝巻姿のまま拉致られるように車に押し込まれて、テレビ局へと向かった。
メイク時間が足りない!?
衣装合わせに時間を裂いてしまったのが原因だ。
たとえ時間がなくとも、妥協はしたくないのだ。
その結果、不完全メイクでカメラの前に出る……無理だからッ!
不完全なメイクなんて、スッピンと同義じゃない!?
スッピン晒すなんて、世の女の子だって拒否するわよ。別にスッピンに自信がない訳じゃないのよ。学校に通っていた時はスッピンだったし、綾人も「化粧なんかしなくても可愛いのに」って言ってくれるもん!
でも、出来ることなら綺麗に、美しく映りたいじゃない。それが女優心――乙女心ってものでしょ?
だから……――
「お願いコウちゃん! なんとかしてぇ~!!」
私はコウちゃんこと担当メイクの光一に縋り付く。
「分かったから、くっつかないでよ! 動けないじゃない!!」
も~、と苛立ちながらもコウちゃんは、メイク道具をすでに手にしていた。
「時間ないから、いつもみたいなお喋りは無しね」
瞬く間に結衣の顔をキャンバスに、コウちゃんは美を表現する。
30分もしないうちに、女優新田結衣が完成する。
完璧な出来である。
「ありがとう。コウちゃん!!」
感激しつつお礼をすると、
「気にしなくて大丈夫。それよりも早く行かないと」
早くスタジオに行くように言われる。
「ありがとね」
もう一度お礼の言葉を口にして、スタジオに向かった。
そこで結衣は顔面にパイをぶつけられる事になる。
そんなことなど知る由もない結衣は、上機嫌でスタジオに入っていったのだった。
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