転校生は朝ドラ女優!?

小暮悠斗

文字の大きさ
上 下
70 / 111
第三幕 新たな戦場――苦戦続きのバラエティー

ACT69

しおりを挟む
 毎週テレビ局に訪れるというのは、未だに不思議な感覚だ。
 ドラマや映画の撮影は毎日現場入りするし、今まで出演した番組(テレビ)は、そのほとんどが一回限りのゲスト出演だった。
 あくまでドラマや映画の宣伝としての出演が多く、レギュラーという形で出演したことはなかった。

 女優という職業は案外、生活リズムが不規則になりがちだ。
 撮影が始まると早朝から深夜まで働きづめなんて事も珍しくない。
 そして、撮影が終わると暇を持て余し、自堕落な生活を送る。
 もちろん私は、自分磨きに余念がないので、自堕落に陥ったりしない……。

 そんな女優にとって、毎週決められた曜日・時間に撮影するというのはとても新鮮に思えた。規則正しい生活が送れるというのは悪いことではない。
 とは言っても、正午からのスタジオ収録なので10時に起きれば余裕で間に合うので、そこまで規則正しい生活とは言えない気もするのだが、芸能界の中では規則正しい部類だと言えるだろう。

 すでに5回のスタジオ収録を終え、レギュラー番組を持つ生活にも順応し始めた私は、目覚ましがなくとも目を覚ます。
 目覚ましが鳴るよりも早く起きて支度を整える。学校生活を経験したおかげか、早起きは問題なく出来るようだ。

 目覚まし時計の針が、11時を指しているのは故障に違いない。
 だってアラーム音聞こえなかったし。

「結衣~っ」

 あ、高野さんの声が聞こえる。
 どうしよう。まだ、パジャマのままなんだけど……
 結局私は、寝巻姿のまま拉致られるように車に押し込まれて、テレビ局へと向かった。


 メイク時間が足りない!?
 衣装合わせに時間を裂いてしまったのが原因だ。
 たとえ時間がなくとも、妥協はしたくないのだ。
 その結果、不完全メイクでカメラの前に出る……無理だからッ! 
 不完全なメイクなんて、スッピンと同義じゃない!?
 スッピン晒すなんて、世の女の子だって拒否するわよ。別にスッピンに自信がない訳じゃないのよ。学校に通っていた時はスッピンだったし、綾人も「化粧なんかしなくても可愛いのに」って言ってくれるもん!

 でも、出来ることなら綺麗に、美しく映りたいじゃない。それが女優心――乙女心ってものでしょ?
 だから……――

「お願いコウちゃん! なんとかしてぇ~!!」

 私はコウちゃんこと担当メイクの光一に縋り付く。

「分かったから、くっつかないでよ! 動けないじゃない!!」

 も~、と苛立ちながらもコウちゃんは、メイク道具をすでに手にしていた。

「時間ないから、いつもみたいなお喋りは無しね」

 瞬く間に結衣の顔をキャンバスに、コウちゃんは美を表現する。
 30分もしないうちに、女優新田結衣が完成する。
 完璧な出来である。

「ありがとう。コウちゃん!!」

 感激しつつお礼をすると、

「気にしなくて大丈夫。それよりも早く行かないと」

 早くスタジオに行くように言われる。

「ありがとね」

 もう一度お礼の言葉を口にして、スタジオに向かった。
 そこで結衣は顔面にパイをぶつけられる事になる。
 そんなことなど知る由もない結衣は、上機嫌でスタジオに入っていったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?

わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。 ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。 しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。 他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。 本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。 贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。 そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。 家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。

一条春都の料理帖

藤里 侑
ライト文芸
一条春都の楽しみは、日々の食事である。自分の食べたいものを作り食べることが、彼にとっての幸せであった。時にはありあわせのもので済ませたり、誰かのために料理を作ってみたり。 今日も理想の食事を追い求め、彼の腹は鳴るのだった。 **** いつも読んでいただいてありがとうございます。 とても励みになっています。これからもよろしくお願いします。

【完結】双子の入れ替わりなんて本当に出来るのかしら、と思ったら予想外の出来事となりました。

まりぃべる
恋愛
シェスティン=オールストレームは、双子の妹。 フレドリカは双子の姉で気が強く、何かあれば妹に自分の嫌な事を上手いこと言って押し付けていた。 家は伯爵家でそれなりに資産はあるのだが、フレドリカの急な発言によりシェスティンは学校に通えなかった。シェスティンは優秀だから、という理由だ。 卒業間近の頃、フレドリカは苦手な授業を自分の代わりに出席して欲しいとシェスティンへと言い出した。 代わりに授業に出るなんてバレたりしないのか不安ではあったが、貴族の友人がいなかったシェスティンにとって楽しい時間となっていく。 そんなシェスティンのお話。 ☆全29話です。書き上げてありますので、随時更新していきます。時間はばらばらかもしれません。 ☆現実世界にも似たような名前、地域、名称などがありますが全く関係がありません。 ☆まりぃべるの独特な世界観です。それでも、楽しんでいただけると嬉しいです。 ☆現実世界では馴染みの無い言葉を、何となくのニュアンスで作ってある場合もありますが、まりぃべるの世界観として読んでいただけると幸いです。

あやかし甘味堂で婚活を

一文字鈴
キャラ文芸
調理の専門学校を卒業した桃瀬菜々美は、料理しか取り柄のない、平凡で地味な21歳。 生まれる前に父を亡くし、保育士をしながらシングルで子育てをしてきた母と、東京でモデルをしている美しい妹がいる。 『甘味処夕さり』の面接を受けた菜々美は、和菓子の腕を美麗な店長の咲人に認められ、無事に採用になったのだが――。 結界に包まれた『甘味処夕さり』は、人界で暮らすあやかしたちの憩いの甘味堂で、和菓子を食べにくるあやかしたちの婚活サービスも引き受けているという。 戸惑いながらも菜々美は、『甘味処夕さり』に集まるあやかしたちと共に、前向きに彼らの恋愛相談と向き合っていくが……?

まだ、言えない

怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL XXXXXXXXX あらすじ 高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。 “TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。 吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。 「まだ、言えない」気持ちが交差する。 “全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか” 注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m 注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)

かの子でなくば Nobody's report

梅室しば
キャラ文芸
現役大学生作家を輩出した潟杜大学温泉同好会。同大学に通う旧家の令嬢・平梓葉がそれを知って「ある旅館の滞在記を書いてほしい」と依頼する。梓葉の招待で県北部の温泉郷・樺鉢温泉村を訪れた佐倉川利玖は、村の歴史を知る中で、自分達を招いた旅館側の真の意図に気づく。旅館の屋上に聳えるこの世ならざる大木の根元で行われる儀式に招かれられた利玖は「オカバ様」と呼ばれる老神と出会うが、樺鉢の地にもたらされる恵みを奪取しようと狙う者もまた儀式の場に侵入していた──。 ※本作は「pixiv」「カクヨム」「小説家になろう」「エブリスタ」にも掲載しています。

ほたる祭りと2人の怪奇

飴之ゆう
キャラ文芸
竜木野螢と雨瀬信乃は辰野の「ほたる祭り」に参加するため電車で向かっていた。しかし、着いたそこは夕暮れの町、『幽明ヶ原』だった。そこは行き場を失くしたモノ達の"最期の場所"で──。2人は無事、夕暮れの町から脱出することが出来るのか!? この物語はフィクションです。実在するものを舞台として執筆していますが、実在の人物・団体・組織などとは関係ありません。 合作です。 作    まほら 絵、校正 飴之ゆう(めゆ) 数年前に作成した冊子を再編集したものです。 誤字脱字などありましたら報告いただけると嬉しいです。 その他何かございましたら投稿者(飴之ゆう)まで。 全話編集済み。予約投稿で投稿していきます。 2022年1月9日 完結いたしました。

VTuberなんだけど百合営業することになった。

kattern
キャラ文芸
【あらすじ】  VTuber『川崎ばにら』は人気絶頂の配信者。  そんな彼女は金盾配信(登録者数100万人記念)で、まさかの凸待ち事故を起こしてしまう。  15分以上誰もやって来ないお通夜配信。  頼りになる先輩は炎上やらかして謹慎中。  同期は企業案件で駆けつけられない。  後悔と共に配信を閉じようとしていたばにら。  しかし、その時ついにDiscordに着信が入る。  はたして彼女のピンチに駆けつけたのは――。 「こんバニこんバニ~♪ DStars三期生の、『川崎ばにら』バニ~♪」 「ちょっ、人の挨拶パクらんでもろて!」 「でゅははは! どうも、DStars特待生でばにらちゃんの先輩の『青葉ずんだ』だよ!」  基本コラボNG&VTuber屈指の『圧』の使い手。  事務所で一番怖い先輩VTuber――『青葉ずんだ』だった。  配信事故からの奇跡のコラボが話題を呼び、同接は伸びまくりの、再生数は回りまくりの、スパチャは舞いまくり。  気が付けば大成功のうちに『川崎ばにら』は金盾配信を終えた。  はずだったのだが――。 「青葉ずんだ、川崎ばにら。君たちにはこれからしばらくふたりで活動してもらう。つまり――『百合営業』をして欲しい」  翌日、社長室に呼ばれた二人は急遽百合営業を命じられるのだった。  はたしてちぐはぐな二人の「百合営業」はうまくいくのか? 【登場人物】 川崎ばにら : 主人公。三期生。トップVTuber。ゲーム配信が得意。コミュ障気味。 青葉ずんだ : ヒロイン。特待生。和ロリほんわか娘のガワで中身は「氷の女王」。 網走ゆき  : 零期生。主人公&ヒロイン共通の友人。よく炎上する。 生駒すず  : 一期生。現役JKの実力派VTuber。 羽曳野あひる: 二期生。行動力の化身。ツッコミが得意。 秋田ぽめら : 特待生。グループのママ。既婚者。 津軽りんご : 特待生。ヒロインの親友。現在長期休業中。 八丈島うみ : 三期生。コミュ力お化けなセンシティブお姉たん。 出雲うさぎ : 三期生。現役女子大生の妹系キャラ。 石清水しのぎ: 三期生。あまあまふわふわお姉さん。どんとこい太郎。 五十鈴えるふ: 三期生。真面目で三期生の調整役。癒し枠。

処理中です...